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昔のこと

すごく昔でも、さりげない瞬間に強い衝撃を受けたことというのは、いつまで経っても心にかかっている。

ロンドンにいた頃、演劇青年で文学も詳しいので相性が良かった英語の先生がいて、ご自宅に招いていただくまでに親しくなったことがある。彼のパートナーはスペイン人かつ南の方のご出身だった女性で、ある時ふと「わたしだって祖先には黒人がいるかも」って言ったことがあった。その瞬間、先生の笑顔が消えて「そんなこと言うもんじゃない」と答えたのが、私にとってはものすごく衝撃で。
人種差別的な対応をせず、英語が拙くても知性を認めてくれる先生ですら、やっぱり忌避感はあるんだな…って思ったのを今でも覚えている。
肌の色が違っても、人として優劣はないけれど、やっぱり混ざりたくない気持ち、みたいなもの。
それって誰にでもある感情だろうか?
どういう前知識に基づいているだろうか?

直接的に感じた差別ではなく、ぼんやりとした越えられない境界線の記憶。

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