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異世界の島 第1章(第6話 狂う方位磁針)

「それで、ノートとシャーペンと消しゴムはリュックの中にいつも入れているはずなんだが、、、」
そう言って烈はノートと筆箱を取り出した。

「でもこれは大切に使わないとだな。どのくらいここで過ごすかわからないのだから。」
烈はノートの1ページ目を丁寧に破り、そこに綺麗な線を描いた。

「烈くんは線を描くのが得意なんだね!」
そう感心した私が言うと、烈は少しだけ顔を赤くさせ、

「あ、いや塾で図形を綺麗に描く練習をさせられていつのまにか上手く描けるようになっただけだよ、、、」
とボソボソと言った。
そんな烈を風花は少し怒ったように睨んでいた。
烈はそれに気付かずに、『冒険セット』を取り出し、方位を確認した、、、、

「おい、どういうことだ。ずっと方位磁石が回っているぞ!?」
混乱した顔で烈が言う。
「え!そんなことはあり得ないと思うけど…」
そう言った風花と、私は方位磁石を覗いて絶句した。

「なにこれ!?!?」
なんと、方位磁石は一定のリズムで周ることを繰り返していたのだ。

「おかしい!なぜだ?鉄はちかくにないし、おかしいぞ!、、、いや、冷静になろう。多分壊れただけだろう。でも、方位磁針が壊れたのなら、太陽がいつ沈んで、いつ上ってくるかぐらいしか測れないな、、、ここはどのあたりかもわからないからな、、、」
烈は混乱しながらもなるべく冷静に判断した。私はそんな烈に感心した。が。

「…あ、あの、とにかくなんでもいいからご飯を作ろうよ」
ちょうどその時に私のお腹がなったので恥ずかしさを隠すようにそんな発言をしてしまった。だが私だって考えていることがあったので、すぐに手を2人の前でパタパタ振るという自分なりの否定をして、

「昨夜に嵐に巻き込まれたのなら、今は多分5月2日だよね?」
とご飯と全く関係なかった考えを言ってみた。
言った途端ににやにやしていた2人は、なるほどと言う顔になった。

「それは確かに!なんで日付のことを考えなかったんだろう?と、とりあえずどこかに書いておこう。このノートの端っこに書くか。…そういえばどうしてこんなヤバそうな所で平気に全然知らなかった人と仲良く話せるんだろうな?」

私はそれも確かになんでだろうなと思ったけれど、このように話しているとそろそろ収拾がつかなくなりそうな上に、お腹が空きすぎて痛くなりそうなので、まずはいったんご飯を作ることにやんわりと同意してもらうことにした。