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異世界の島 第1章(第9話 川の近くで)

美味しくイチナムの実を飲み終えた私たちは、その辺り一体を探査することにした。
そこでの会話…
烈「川の近くに家を作らないか?」風花「賛成賛成!」水穂「でもどうやって?」烈「…」風花「烈、調べてよ。あんたのその本にはどうせ載ってるんでしょ?」烈「あ、ああ。」パラパラ… 烈「木で作るんだってさ。この辺りの木は良さそうだけど。後洞窟もありなんだって。」水穂「この辺り岩がないのが問題だよね。」風花「その本も意外と役立たずね。」烈「おいおい…」

「あっ、あんなところに人が!」突然烈が静かに叫んだ。
振り向くと、1人の人が切り株の上に座っていた。向こうも気づいていたようで、何かを話している。ただ遠すぎて聞こえづらい。

私たちは用心しながら近づいた。烈が私たちを守るように先を歩く。
「すみません!あなたは日本人ですか?あなたは誰ですか?」烈が誰何する。
「私は日本人だ。君たちこそ、誰だ?見た目は日本人だが…」
「俺…僕たちは日本人、そして遭難者です。気づいたらここに流されていました。僕の名は夏井 烈です。でこっちが風花…じゃなくて春野 風花、でこの人が秋月 水穂さんです。」
「こんにちは」「こんにちは。」


相手は背が高く、髪の毛が短い。見た感じでは完全に大人だ。彼も服は乾いているようだった。背中に少し赤黒い木刀を背負っていて、いかにも強いオーラが出ている。よく見ると擦り傷や切り傷が沢山ある。
「君たち、そんなに名前を気安く人に教えない方がいいよ。ああ、私も遭難者だ。おっと、まだ名乗っていなかったな。私の名前は冬山 大地。タイチって呼んでくれ。いつもダイチって言う人がいるんだよな…」
「同じ遭難者なんですか。ならここは協力しましょう!他に誰もいなさそうですしね。よろしくお願いします」
「あ、ああ、よろしくね。実は私はこの島の上に行ってきたんだ。つまり、あの山のことだ。これが何を指すかわかるかい?」
「ええっと、登れたんですか?あまり登るのは難しくなさそうですけど。もしかして地形とかわかっていたりして。」口を挟んだのは風花。私はただ黙ってみているしかない。
「そう、その通りだよ。これをみてご覧。」苦笑しながらそう言ってその人は胸ポケットから手帳を取り出した。


「僕はこの川に沿って山の上まで登ってみたんだ。実は意識を取り戻した時あそこの(そう言って彼は河口の方の桜が一本生えている島を指した、)島に居てね。川はあるしこの辺りには魚が沢山いて食料には困らなかったから。途中で滝がいくつかあったけれど大丈夫だった。僕の感覚では3時間ぐらいで上に着いたよ。途中で動物にあってこの木刀で倒さなきゃ行けなかったけどね。(そして彼は背中の木刀を指した)そしたら…本当に広かった。反対側には2つ島があったしね。でもここが島で、人が暮らしていなさそうなのはハッキリしているんだ。少なくとも僕たちみたいな文明を持った人はね。あと、海の向こうの向こうに黒い何かがチラと見えたような気もするのだが…あっ、すまない。1番上に行ったわけじゃないんだ。上の方が崖になっていて、危なかった。周りを一周して、こんな地図を作ってみたよ。」ポケットからガサゴソと地図を出す大地。


「うわ、すごいわこりゃ」普段の調子を忘れたようにいう烈。私も見てみたのだが、この島の全景が事細かに描かれていてびっくりした。
「タイチさん、こんなの描けたらどんな状況でも生き残れると思いますよ…」冷や汗をかきながら言う風花も目が地図に釘付けだ。
「そういえば、君たちは川の下から来たよね?どの辺りにいたの?」
「多分ここですね」烈が崖があるところを指す。「この辺りで水穂さんと会ったんです。」
「ということは、君たちも途中で会ったのか。この無人島には一応他の人がいる可能性を考えとかなきゃだな。その時はもう無人島ではないけれど」