【SUISEI WORKS🪐】令和5年度高知県宿泊施設魅力向上支援事業

2024年3月28日 18:15

2023年8月〜2024年3月にかけて、高知県が実施する令和5年度宿泊施設魅力向上支援事業にアドバイザーとして参加しました。
本プロジェクトは、高知県の企業を中心にコンサルティングサービスを提供している特定非営利活動法人こうち企業支援センター様（以下、KIC様）のパートナー企業としてご依頼いただきました。

今年度は昨年度に続き、2回目の支援をさせていただきました。
昨年のレポートはこちら

プロジェクトの内容は昨年同様、以下の通りで進行しました。

施設募集：募集説明会兼セミナー
本プロジェクトに参加いただく高知県の宿泊事業者を募集するため、それぞれ鹿児島県阿久根市、愛知県岡崎市、愛媛県大洲市で宿泊事業の枠を超えてテーマとして設定した「地域を翻訳する（こうち）宿」を体現されているお三方をお願いしオンラインでの講演を行って頂きました。開業前夜のご苦労や起動直後のコロナ災禍、俄に過剰気味になりつつある観光動向、ご経験に基づいた含蓄のあるお話で、ご参加の皆様も大いに刺激を受けられたようですし、我々にとっても大変学びの大きい時間となりました。

支援１：アドバイザー派遣業務

現地でのヒアリングをもとにした課題の抽出
課題の整理と共有
課題解決のためのプロジェクト組成

各施設に対し、こちらの3点を現地訪問1回、面談2回の合計3回のミーティングで実施しました。課題は宿泊事業者によって様々で、財務面での経営課題や施設のハードの改修、コンセプトの確立やマーケティング戦略など多岐に渡ります。課題の種類に合わせて、KICと水星で担当を振り分け支援を実施。

支援２：実施支援業務

実施支援先の選定
組成したプロジェクトのマネジメント
成果報告会の実施

支援１を実施した宿泊事業者の中から、実現可能性や独自性を踏まえ施設を選定し、プロジェクトの遂行をサポートしました。また、最後には事業者にプロジェクトを通した学びや成果のプレゼンをしていただく、成果報告会を実施しました。加えて、成果報告会に参加いただいた宿泊施設のご担当者様には、黒潮町のモニターツアーにもご参加いただきました。

見えてきた宿泊事業者らが抱える課題感

長いコロナ禍を経ていよいよ観光、旅の機運が高まり続ける世情、マーケット環境の中、”らんまん効果”も相まった２０２３年、過去最高の入込客数を達成した高知県においても、宿泊、観光に関わられる事業者は実に様々な課題と向き合われておられることを今回の事業を通じ強く再認しました。
「この波に乗りこれまで考え、温めていた様々な施策を打ち出していきたいが進め方が解らない」、「やるべきことは見え始めているが実行していけるリソースが圧倒的に不足している」、更には「すぐに動き出したいしそのための策、人は備えれたが、コロナを耐え忍ぶのが精一杯で実行予算の捻出に限りがある…」といったレイヤーの事案もあれば、「何をどう考え始めていけばいいのか」といったように”課題の定位もまだ”といった課題におられる事業者もおられました。
この様に多岐多層に渡る課題感をお持ちの複数の事業者と、大きく一つの立て付けとして取リ組んでいくのはなかなかに小さくない難しさがありましたが、県やKIC、そして何より本事業に参画された事業者のみなさまの尽力に支えて頂きながら、答えを探すのではなく、一緒に正解にしていくといった歩みを進めて行けたのではないかと思っております。

以下、実際に支援させて頂いた事例を幾つかご紹介させて頂きます。

case.01【城西館】

高知のホテル・旅館をお探しなら「城西館」へ【公式サイト】

支援内容
着地型観光webサイトのリブランディング

目的
着地型観光商品の申し込み件数の増加

どのように進めたか
1.着地型観光webサイトの分類
他社が展開する着地型観光webサイトを下記3つに分類し、城西館の着地型観光サイトをどのポジションで展開すべきかを検討しました。

a. 全国を訪れる幅広い方々をターゲットとし、網羅的に容易に検索予約ができる
例）アソビュー、じゃらん、ACTIVITY JAPAN

b. 地域特化型で、該当地域の商品数が多く、検索・情報把握・予約ができる
例）こうち旅ネット、高知家、瀬戸内コンシェルジュ

c. ホテルサイト併設型で、ホテルが人格を持ち施設内外のアクティビティの予約ができる
例）星野リゾート(リゾナーレ/OMO)、長良川清流ホテル、GOOD NATURE STATION

検討の結果、c.ホテルサイト併設型を提案しました。
a,bのように競合を意識することなく、宿泊客ターゲットにとってわかりやすく、刺さる体験コンテンツを設計すれば良いことから、城西館のブランディング・価値向上に寄与しやすいことが大きなメリットです。

2.コンセプトの策定
着地型観光webサイトのコンセプトを定めました。
「150年続く老舗旅館である城西館」が提供する体験コンテンツ=「伝統と縁」とし、五感で体験する=「浸る」というワードを導きました。

3.体験の軸を定める
上記で定めたコンセプトを基に、高知県で体験できるコンテンツを下記の通り大きく3つに分類しました。

体験の軸：風光明媚な高知の自然資源、歴史に紐づく人情深い郷土文化を味わう。
①「食」「農」の体験系：郷土の味を楽しむ
例）カツオのわら焼き、城西館特別皿鉢料理、収穫体験
②「自然」の体験系：壮大な自然と遊ぶ
例）カヤック、漁業体験、ジップライン、ハイキング
③「歴史」「文化」の体験系：歴史や文化に触れる
例）街歩き、酒蔵見学、写経体験、べく杯

これをそのままサイトに掲載する体験の軸として定め、サイト訪問者が体験したいコンテンツを見つけやすいUIへと昇華させます。

4.ワイヤーフレーム・イメージボードの作成
ベンチマークを定め、ワイヤーフレームとイメージボードを作成しました。(コンテンツ内容、画像は仮です)
今後はこれらをベースに、webサイトへの実装を行っていきます。

プロジェクトの気づき
現在の着地型観光webサイトをただリニューアルするだけではなく、そもそもどのポジションで戦うべきかや、いかに施設のブランディングに寄与するか、という視点を交えながら議論させていただきました。その結果、今回のご提案に繋がりました。現在は体験コンテンツの精査や運用の方法等を策定しながら、城西館側で実装に向けて進めております。

case.02【Life Style Hotel ichi】

支援内容
施設のコンセプト作成とミッションマップの作成

目的
コンセプトの言語化と商店街と連携した仕掛けの土台づくり

主な実施内容
・コンセプト決め
・具体的なアイデア検討

支援の進めたか

1.コンセプトメイク（コンセプト・ピラミッドの作成）

宿泊施設に来て欲しいお客様も踏まえながら、インサイト、競合、自分たちのベネフィット、社会的使命、コンセプト、目指すべき理想の未来について、双方でディスカッションを複数回実施。最終的にミッション・コンセプト・ビジョンの3つを策定しました。

ディスカッションで出てきた主な内容
・無意識、自然＝知らぬ間に館内の備品に触れている状態。無人販売の良心市をモチーフに。
・ローカル高知：商店街、良心市、作家さん
・高知の作品に触れたら、高知を感じる？そうとも限らない。旅先での一つの出会いにすぎない。
・何と繋がって欲しい？どんな体験をして欲しい？
・高知全体に / 愛宕商店街に /　高知の人の温かさに

・館内で過ごした時間をどう伝えるか
・おせっかいな県民性（飲食店の常連さんとか）
→ひろめ市場よりも商店街に合いそう
・商店街を歩く→市内を歩くのとは違う、探検も味わってほしい

宿泊施設の全体コンセプト
無意識、自然と繋がるローカル高知の文化

2.具体的なアイデア検討
　協力的していただく店舗をピックアップ&交渉してミッションを作成。宿泊客の皆様に配布するためのMAPをデザイナーの方を交えながら、上記で考えたコンセプトをベースに作成した。」

商店街にある協力していただく予定の店舗

ミッション案と土台となるMAP作成

1.商店街の朝を満喫。
　「Monamona朝食プラン」

2.愛宕といえば天むす。
　「お酒と一緒に天むすプラン」

3.あなただけの愛宕商店街を。
　「チェキで記憶を記録にプラン」

プロジェクトの気づき
支援終了後には、ご担当者から以下のようなメッセージをいただきました。
・宿だけでなく、商店街の魅力も再発見できた。
・1人で考えるのではなく、みんなで考え動くことが重要。
・アイデアを実現するだけでなく、それをどうやってお客さんに伝えていくかも今後は考えていかないといけない。

その中でも「やはり1施設ではやれる事が限られているので、連携、面での取り組みが必要」という点は今回の事業で我々も最も思ったポイントでした。支援終了後には、商店街の理事長にも今回の取り組みを話してくださったそうで、より連携したプランを検討しているとのことです。今後も愛宕商店街と連携したプランリリースが楽しみです！

case.03【黒潮町_土佐西南大規模公園】

支援内容
土佐西南大規模公園のリブランディング

目的
観光での公園利用者の増加

どのように進めたか

1.現状認識、調査
まずは公園の利用状況、周辺環境等の調査を実施しました。
野球場やサッカー場、体育館等のスポーツ施設が充実していることから、スポーツ大会や学生大会の公式戦等での利用が多い中、観光や娯楽の目的での来園が少ないことが課題として挙げられました。
公園の周辺には宿泊施設や飲食店、観光施設が複数立地していることから、公園と周辺施設の連携がエリア活性化に繋がることを見据え、コンテンツを設計していく事になります。

2.戦略の策定
公園の強み、弱み、機会、脅威を整理し、クロスSWOT分析を実施しました。4つの戦略を軸に公園のでの体験を設計していくことになります。

3.コンセプトの策定
公園には太平洋を望むビーチ「入野海岸」があります。当公園はスポーツ施設が多い≒健康意識が強いことに置き換え、アメリカのマッスルビーチを参考にしながらコンセプトを設計していく事になりました。
コンセプトは" BEYOND THE WELLNESS"
筋トレやランニングなどの運動や、健康を意識した食事など、ウェルネスを主軸としたコンテンツを検討していきます。

4.コンテンツ・モデルツアーの企画
コンセプトに基づき、ランニングツアーや高たんぱく質食事の開発、極めつけには「ボディビルのポージング写真撮影体験」など遊び心満載のコンテンツをチーム一同で考案しました。
これらのコンテンツを組み合わせ、モニターツアーを設計していきます。

5.モニターツアーの開催（本事業の公的な成果報告会と同一日の実施）
本事業での各事業者の取り組み、成果を広く知って頂き、県内外で宿泊事業を営まれる方々へ何かしらのエールとなることも企図された、県としての成果報告会がまさにこのプロジェクトの舞台でもあった黒潮町、砂浜美術館を擁す西南大規模公園のビーチで開催されたその事実だけでも関与者ながら驚きなのですが、報告会の終了後間髪入れずに実施された、公園のリブランドに向けて練っていたプログラムのモニターツアーとして実施したコンテンツの多様さ密度に、主催側にいながらにして二度驚嘆させられたのでした。

同日に”Day of beyond the wellness”として開催したモニターツアーの案内

プロジェクトの気づき
水星ではこれまでも、今回の高知県による本事業に近いかたちで、地方自治体や観光庁などの事業において、所謂”有識者”や”スペシャリスト”、”アドバイザー”という呼称を拝命し、全国各地の観光、宿泊事業様の取り組みを一緒に推進して行く機会を数多く持たせて頂いてきました。そんな中感じ続けてきたことの一つに、こういった取り組みでは主体者や関与者が課題を課題のための課題として扱ってしまい、予定調和的な実施案が立てられ、そしてそれらを淀みなく実行することに終始、事業終了後はそれらしき完了報告や実績的なプロダクトは出来上がるものの、結局何をしようとしてたんだっけみたいな事態に陥ることが実体験としても少なくありませんでした。数回のタッチポイントでの読み込みではなかなか本質を捉えることが叶わなかったり、その後の実支援のプロセスで遠慮のない健全な議論の出来る関係値の構築までは届かずに、ある物足りなさを覚える中での年度事業の終了といったケースになりがちでした。　今回の黒潮町でのプロジェクトにおいては、偏に携わられた事業者、町の方、伴走頂いたKICの方々の主体性と寛容性の賜物で、実にユニークな内容、結果となったと思っております。優等生的発話こそ寧ろそれってイマイチではという雰囲気すら漂う、ありきたりでない議論というかおしゃべりの末にこの成果に辿り付いた根っこには、事業推進の核を担って頂いた砂浜美術館の、【私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です。】に込められた、『町の“ありのままの風景”そのものを美術館と考え、そこにある豊かな自然と、そこに暮らす人びとの営みを、訪れた人びとが自分自身で、見方をかえたり、想像力を働かせたりしながら、一つひとつ大切な「作品」として楽しむ』というその思想があったのだと気付かされました。ここで描かれたビジョンが少しづつでも実装されることを願って止みませんし、何かお力になれないか考えアクションし続けたいなと思っております。

さいごに

まず、２０２２年度に続いて本年度もこの事業に関わることが出来たことを関係各位に心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
公の機関による主催ということで少なくない制約がある中で、支援者としてのKICや我々水星、主体者としての参画事業者が、より進めやすいように弾力的に対応し続けて頂いた県のや各自治体のご担当の方々への敬意止みません。
昨年度から水星メンバーのプロジェクト担当者の交代や、高知県の参画事業者の方々の変更など当然にありながらも、やはりプロジェクトというのは継続して取り組んでいくことで強く大きくなるものだなといった手応えを得ることが出来ました。
各事業者とご一緒したプロジェクトのプロセスがこれからのお取り組みへ向けて有意義なものと成り得ているか？そのために個々の特性を引き出せていたのか、うまく掛け合わせておれたのか？そしてともあれ手応えを実感して貰える内容に昇華出来ていたのか？思い返せば不足への反省や不甲斐なさの方が大きい気もしておりますが、報告会やその後のモニターツアーの写真からも多少なり感じて頂けるかなと思うのですが、支援者側の立場として関わらせて頂いた経験の中でこんなにも楽しい時間を多く共有出来た事業はありませんでした。
高知県、ほんとうに素晴らしいところです！ぜひ皆様高知へお越しくださいませ！！

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【SUISEI WORKS🪐】 令和5年度 高知県宿泊施設魅力向上支援事業