【SUISEI WORKS🪐】 令和4年度 高知県宿泊施設魅力向上支援事業

2022年8月〜2023年3月にかけて、高知県が実施する令和4年度宿泊施設魅力向上支援事業にアドバイザーとして参加しました。
本プロジェクトは、高知県の企業を中心にコンサルティングサービスを提供している特定非営利活動法人こうち企業支援センター様（以下、KIC様）のパートナー企業としてご依頼いただきました。

高知県は四国地方の南部に位置し、東西に長い形が特徴的です。坂本龍馬や中岡慎太郎をはじめとする幕末の志士たちや、2023年4月にスタートする朝の連続テレビ小説「らんまん」のモデルである植物学者の牧野富太郎を輩出した県としても有名です。観光名所として、高知市内に位置する高知城やはりまや橋があり、北部には日本一水質が良いとされる仁淀川が流れています。土佐カツオを中心とした豊富な海の幸など、グルメの宝庫でもあります。
そんな魅力的な観光資源を数多く有する高知県ですが、訪日外国人宿泊者数は全国第47位（2021年）、日本人宿泊者数44位（2022年）と芳しくありません。そこで、高知県の宿泊事業者の方々に、発信力や企画力を身につけていただき、高知県の魅力を全国にアピールしていただくために、合計18施設のアドバイザリーを行いました。

プロジェクト全体の流れは、以下の通りです。
施設募集：募集説明会兼セミナー
本プロジェクトに参加いただく高知県の宿泊事業者を募集するために、水星CEOの龍崎が登壇し「地域の魅力を再解釈し宿に取り込む」をテーマに講演を行いました。

支援１：アドバイザー派遣業務

• 現地でのヒアリングをもとにした課題の抽出

• 課題の整理と共有

• 課題解決のためのプロジェクト組成

18施設それぞれに対し、こちらの3点を現地訪問1回、面談2回の合計3回のミーティングで実施しました。課題は宿泊事業者によって様々で、財務面での経営課題や施設のハードの改修、コンセプトの確立やマーケティング戦略など多岐に渡ります。課題の種類に合わせて、KICと水星で担当を振り分けて支援を実施しました。

支援２：実施支援業務

• 実施支援先の選定

• 組成したプロジェクトのマネジメント

• 成果報告会の実施

支援１を実施した宿泊事業者の中から、実現可能性や独自性を踏まえ10施設を選定し、プロジェクトの遂行をサポートしました。また、最後にプロジェクトの成果報告会を実施しました。そこでは、10施設からさらに3施設を選定し、プロジェクトを通した学びや成果をプレゼンしていただきました。加えて、成果報告会に参加いただいた宿泊施設のご担当者様とワークショップを行い、魅力発信についての意識を高めていただきました。

見えてきた宿泊事業者が抱える課題

プロジェクトを進めていく中で、宿泊事業者が抱える様々な課題が見えてきました。特に以下の3点については、ほとんどの事業者から声が挙がっていました。
「自分たちの強みを何となく認識しているものの、明確に言語化されたコンセプトがない。」
「来ていただいたゲストには満足してもらえるが、来ていただく為の魅力発信ができていない。」
「宿を象徴するような商品やサービスを開発したい。」
私たちは、このような抽象度の高い課題感に対し解決に向けて具体的なアクションを取るための考え方がわからない点が、高知県の宿泊事業者が抱える本質的な課題であると考えました。
そこで私たちは、一方的にこちらがプロジェクトを進めるのではなく、支援先を巻き込んで一緒に手を動かしていただきながらノウハウを移譲していくような取り組みを行いました。

🏨各施設の支援プロジェクトについて

ネストウェストガーデン土佐

四万十・黒潮町の絶景に囲まれたホテル｜ネスト・ウエストガーデン土佐

プロジェクト概要

支援内容
施設を象徴するプロダクトの開発と、それを用いたプランの企画
目的
体験したゲストが思わず人に伝えたくなるような企画を作る。
企画内容
黒潮町の自然に没入するお散歩プランと、お散歩に持っていくサコッシュ、飲み物、MAPの開発
どのように進めたか
1.カスタマージャーニーの作成
自分たちの強みを整理するために、miroを使用しカスタマージャーニーを作成しました。ゲストの行動を分析し、どの段階でどのような価値を提供しているのかを言語化したことで、ネストウェストガーデン土佐を取り巻く環境やそれがゲストにもたらす価値を理解し、改めて自然を切り口にコンテンツを考えていくことにしました。

2.コンテンツの企画
自然を切り口に、コンテンツのアイデアをブレストしました。たくさんのアイデアの中から、ネストウェストガーデン土佐だから提案できる、都会の喧騒を離れたお散歩プランを作成することに決めました。プランの作成にあたり、大きく2つの内容を進めていく必要があります。

a.散歩コースの決定
一つ目が、散歩コースの決定です。まず、現地に訪問し周辺環境を視察しました。白い砂浜や遠浅の海岸、松林や砂浜美術館など魅力的な自然環境がありました。また、黒潮町は小説家の上林暁ゆかりの地であり、有名建築家の團紀彦が手がける「上林暁文学館」があります。自然、アート、文学、建築ととても幅広い魅力があることがわかりました。それらは、ゆっくりと歩いてまわるのにちょうどいい距離に位置しているので、素敵な散歩コースができました。

b.プロダクトの開発
二つ目が、プロダクトの開発です。
今回は、お散歩に持っていくサコッシュとそれに入れる飲み物と軽食、MAPを開発します。それぞれデザインが重要になってくるので、まずは表現したい世界観を示すコンセプトワードを考えました。考え方は、以下の通りです。

• ネストウェストガーデン土佐が提唱するお散歩の定義を決める。
  ネストウェストガーデン土佐では、何のためにお散歩をするのか、どのような価値があるのかを定義するための議論を行いました。

• 自然、アート、文学、建築がお散歩にどのような影響を与えるのか
  定義した提供価値に対して、散歩コースがどのような役割を果たすのかを整理しました。

• コンセプトのコピーライティング
  整理した情報をもとに、キーワードを抽出し、2つのコピー候補をライティングしました。

「無添加な世界を歩く」「くろしお Slow Down Easy」
最終的に、「無添加な世界を歩く」がコンセプトワードとして採用されました。

続いて、そのコンセプトワードをデザインに落とし込み、実際に使う制作物を作っていきます。ここからは、支援施設様がPMになってスケジュール管理やパートナーとのやり取りのフロントに立っていただきました。ディレクションのフローをマネジメントできるようになっていただきたいことが理由です。様々なステークホルダーを巻き込んでプロジェクトを進行するにあたり、Notionでの企画書の作成、Spreadsheetでのスケジュール管理など、これまで明文化したことがなかったPMの工程を資料に落とし込み、進めていただきました。結果、デザイナーにも意図が伝わり、印刷会社とのスケジュール調整もスムーズに進めていただくことができました。出来上がったプロダクトがこちらです。

プロジェクトの気づき

強みを整理して、コンセプトを決めて、制作物を作るまでの一連の流れを一緒に行うことで、企画の考え方や進め方を当事者意識を持って体験していただくことができました。
プロジェクトが始まった当初我々が感じていた、抽象度の高い課題感に対し解決に向けて具体的なアクションを取るための考え方がわからない点については、微力ながらお力添えできたのではと思います。報告会が終わった後、支援施設様からこのようなメッセージをいただきました。

我々も、ネストウエストガーデン土佐さんとお仕事を進めていく中で、高知県や黒潮町の魅力にどっぷりハマりました。移住するなら黒潮町がいいなと心から思います。
今後は、このお散歩プランをSNSでリリースし、モニターを募集する想定です。ぜひ、このプランを体験していただく方が増えればいいなと応援しています。

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城西館

高知のホテル・旅館をお探しなら「城西館」へ【公式サイト】

支援内容
集客やブランディングにおけるInstagram活用の初動サポートと、
今後の満足度向上や単価アップに寄与するような、食事会場リニューアルにおける指針を提示

目的
歴史のある城西館のブランドを魅力的に発信できるようにすること

▼ 食事満足度向上施策

城西館さんのこだわりの詰まった食事。
ゲストからの満足度向上のため、食事〜食事会場で何を改善すべきかをご提案しました。
会場のリニューアルなどハード面での提案内容は、中長期的なプロジェクトとなるため、提案までを行い、実践支援の際に現地での試食、会場の視察を通してソフト面「盛り付けとお皿」に課題感を感じ、具体的な皿の提案やイメージボードを作成しました。

メニュー表やディスプレイ、器などを小さいところからでも、コンセプトをもって統一感を出し、見せ方を変えることでゲストが受ける印象に大きな違いがでるため、質感やトンマナをイメージボードを持ってすり合わせることができました。

▼ Instagram戦略策定

①SNSセミナーの実施
既存アカウントのリニューアルとして行うのではなく、なぜSNSでブランディングを行うのか、なぜInstagramを活用するのかなどの大前提からをお話しさせていただきました。
その上で現状のアカウントの課題を洗い出し、Instagramアカウントの中で重要である「城西館アカウントのコンセプト」について提案を行いました。

②Instagramの戦略策定
深い歴史のある宿だということのみならず、その中でもお客様とのコミュニケーションや、縁を大切にするキャラクターの城西館さん。
そんな格式と温かみを感じられるようなInstagramアカウントを目指し、コンセプトを「伝統と縁」とさせていただきました。

広報としてInstagramを活用していく際、営業時間やイベントなどゲストが必要とする情報を乗せていくことは大切ですが、プラットフォームの特性を生かして、写真やその並べ方にこだわることで、よりブランドのキャラクターをもって情報を伝えることができます。
すでに新しく策定した内容で、投稿を始めてくださっています。
より、宿の雰囲気やキャラクターが伝わるアカウントになっていますので、ぜひフォローしていただけると幸いです。

Login • Instagram

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白滝の里

自然王国　白滝の里
支援内容
ここでしかできない閑散期のプランづくりと発信

目的
冬のコンテンツづくり

企画内容
「わが子と一緒に体験する冬の自然体験」

どのように進めたか
1.ターゲットの設定とコンセプトメイク
SWOT分析（強みと機会のみにフォーカス）、成功体験の振り返り、白滝の里に関係するキーワードなどを踏まえた上で、ファミリーの方々に来て欲しいことを再認識。「わが子と一緒に体験する冬の自然体験」をコンセプトに設定しました。

2.コンテンツの企画
まずは白滝の里や大川村でできる体験をピックアップした後、今あるリソースを活用して何か新しいことができないかを検討。その中から、コンセプトとずれないかどうかを判断して、「あたたかいところでもできるわかさぎ釣り」、「幻の黒牛と地鶏のBBQ」、「薪割りと焚き火Bar」、「校内テントキャンプ」の4つを組み込んだプランを作成することに決めました。ここから、このプランが本当にファミリーに喜んでもらえるのかと、宿泊者の人に伝えるためのコンテンツづくりをしていきます。

コンテンツA.モニターツアー

今回は季節も合致しており、絶好の機会ということで都市圏や四国の都市部に住んだ経験のあるファミリーにモニターツアーを体験してもらいました。
ワカサギ釣り体験では、釣れたてピチピチのワカサギをその場で天ぷらにしてほおばることができ、都会では絶対に味わえない大川村ならではの体験を提供しました。体験後、以下のような顧客の声をいただきました。

◯良かった点
・釣りだけでなく道中のボートに子供が喜ぶ
・ダム湖に住んでいるアヒルに子供が喜ぶ
・釣ること以上にその場で揚げた天ぷらへが大好評だった
△改善点
・長時間だと子供が飽きる
続いて、地鶏BBQ＋焚き火を囲んだBar体験を提供しました。2月にも関わらず少し暖かい日でしたので、屋外でBBQをすることができました。

◯良かった点
・はちきん地鶏は大人にも子供にも大好評
・宿の方が教える「鶏の焼き方教室」に大人は夢中になっていた
・その場にある地元産椎茸を収穫し焼くと絶品だった
△改善点
・Barならではのカウンターがあれば雰囲気がより良くなった（簡単なカウンダーでOK）
・子供のソフトドリンクも充実させる必要がある
次は、校内でのテント体験です。当施設は夏場に大人気な屋外キャンプ場がありますが、校内でのテント体験の提供は初めての試みでした。

◯良かった点
・想像以上に子供たちが喜んでくれた
・室内なので寒さを感じずにアウトドア体験が可能
・少人数の利用であると、教室の客室が大きくて寂しい印象だが、テントを張ると部屋おｎ空間が良いサイズ感になり、居心地が良くなった
△改善点
・キャンプチェアをストーブの周りに設置できると大人も喜びそう
最後は薪割り体験。この薪割り体験は、想像以上に子供受けがよく大人気でした。

◯良かった点
・子供が薪割りを上手にできると、大きな達成感を得られるようで、良い成功体験の場になった
・薪割りだけでなく、火おこしにも夢中になってくれた
・薪ストーブで飲むコーヒーも味わい深いと好評だった
△改善点
・薪割りがやや危険。保険等のリスク管理は念頭に置いておくべき

コンテンツB.note記事作成

カメラマンとライターの方にモニタープランに同行していただき、プランを伝えるための記事を作成しました。メディアプラットフォーム「note」にアップすることで、施設訪問前のお客様に、よりリアルに白滝の里での体験を思い描いてもらうことが可能となります。

プロジェクトの気づき
白滝の里のご担当者から以下のようなメッセージをいただきました。
・既存のコンテンツでも整理すれば魅力なものになる
・お客様やアドバイザーの皆さまを含めて、第三者の視点から得た気付きがたくさんあった
・小さな村だからこそ、村外からお客様を呼ぶことで、地域波及効果も生まれ、村民や村の他の業者さんも皆がhappyになる

白滝の里がある大川村は、離島を除き日本で2番目に人口の少ない村です。人が少ないからこそ村民同士のつながりや一体感が強いことや、自然体ながらめいっぱいのおもてなしをしてくれたことが印象的でした。その後、担当者とのディスカッションでは、今後「365日夏休み」を掲げたプランづくりをすることも決まりました。心おどるプランの数々が白滝の里からリリースされそうで、これからも目が離せません！

さいごに

地方には、まだまだ魅力的な場所や宿泊施設がたくさんあります。でも、それがうまく世の中に知られていないことも多いです。事業者の方は、ご自身の脳内で色々考えながら試行錯誤して経営を行なっていらっしゃいます。それでも、ほんの少し別の角度の考え方だったり、進め方のフォーマットがあれば、もっとうまく魅力を広めることができるのではないか。今回の支援を通じて、選択肢の大切さを一層理解することができました。