偏愛、龍崎が今年こそ泊まりに行きたい宿(北海道編)
みなさん、こんにちは。龍崎です。職業柄、いつも気になる宿があるたびぽちぽちとgoogle mapにピンを立てているのですが、先日、尊敬しているGENIC編集長の藤井さんにぜひ公開してほしいとリクエストをいただいたのを気に、今年は、世界中のわたしが気になっているホテルと、その理由を少しずつご紹介していくことにしました。
2020年はあまり自由に旅行ができたわけではなかった上、応援消費を・・・と思いつつもいかんいかんそもそも自分たちも応援を必要としている状況やんと思いとどまってしまったりと、wish listだけがどんどん膨らんで膨大な数になってきたので、今年こそは少しずつ泊まりに行ってリストを消化して行きたいと思っています。
第1回は、私がホテル経営の歩みを始めた地でもある北海道。憧れの有名ホテルから知る人ぞ知る街角の小さな宿まで、バラエティー豊かな20のホテル・旅館をご紹介します。ひとりの消費者として行ってみたい、というものもあれば、経営者的に興味がある、というものもあり行きたい動機は様々ですが、それら含めて合わせてお楽しみいただけたら嬉しいです。
心象風景の北海道を訪ねて
『北海道』という地名の響きが私たち旅情を掻き立てるとき、脳内に思い浮かんでいる光景(果てしなく続く草原とか、牛や馬が草を食むのどかな牧場、一面銀世界の雪原...)は、間違いなく北海道のどこかにはあるのだけれども、少なくとも人が集住して観光動線上にある街にはない、というジレンマがあると思います。
それは例えば高速道路上の車窓から見えたりとか、映画や雑誌の世界で登場する誰かの生活の風景であって、旅行客が訪れたときに目にできる光景とは少なからずギャップがあると思うのです。
北海道と関わり始めてから6年、私自身がそういう思いをずっと抱えていたので、人々の心の中にある心象風景の『北海道』の風景や生活がある世界に招き入れてくれる宿にどうしようもなく心惹かれるのです。
そんな私が一刻も早く訪れたいと思っている宿のひとつがこの『青い星通信社』。
村上春樹の代表作『羊をめぐる冒険』のモデルとも言われる、北海道美深町の草原の中に佇む、半世紀以上忘れ去られていた石積みの小屋。たった3室のゲストルーム。窓の外の朝霧と、うっすらと浮かび上がる羊の群れ。ディナーに供される素朴なビーフシチュー。
美深町の情景、土地で育まれた風土、歴史とともに重ねられた文化的な奥行き、元編集者であるという主人の人格や嗜好そして哲学、それらが美しく溶け合い、調和している空間が生まれているように感じています。
自分が北海道に住んでいても得ることのできないような、心象風景としての北海道での暮らしがそこにはある。それは、ある意味美化された北海道像と言えるのかもしれないのですが、だからこそ実際にその中で暮らしを営んでいる主人の日常生活の中に招き入れてもらえる体験が果てしなく尊く感じられるのです。
(余談ですが、私が富良野でペンションの経営を始めたとき、外から見ればあたかも意気揚々と起業したように見えるとは思うのですが、実際は孤独と不安の中で母とふたり北海道に向かったのでした。そのとき、大学の先輩が訪ねてくださったときにお土産に携えていたのが、北海道のホテルが舞台の『羊をめぐる冒険』だったのです。6月の富良野は暇で、私自身プライベートなトラブルを抱えて発狂寸前だった中で、毒を以って毒を制す、ではないですがこの物語の狂気性が私の心を繋ぎ止めてくれたように感じていて、その舞台の地という意味でもぜひ訪れてみたいと思っています)
青い星通信社が草原の北海道なら、『チャシバクINN』は湖畔の北海道の生活を旅人に見せてくれる宿だと思います。洞爺湖の湖畔にある、夫婦2人でコツコツとDIYを重ねて手作りしている小さな宿。1階には奥様が経営されているドーナツ屋さんもあります。
北海道出身のL&G COOの大籠さんに、ビーチより湖畔が好き、と言われたときに、海水浴場の方が馴染みがある私は「なぜ?」と素朴に思ったことを覚えているのですが、ああ、こういう空気の中でくつろぐことの心地よさが湖畔の魅力なんだな、とこの宿に出会ったときにピンときたのです。
窓の外に広がる洞爺湖の風景の中で、穏やかな波の音を聞いて、ドーナツをかじりながらコーヒーを飲んで、暖かい日射しとひんやりとした風を感じて、ただぼうっとしたり、思い出したように仕事をしたり。そんなプールサイドのような心地よさに、人工物ではなく自然の産物という形で浸れるのだろうなと。
実際に泊まりに行った友達が1階のドーナツ屋でドーナツを選んでいるときに、おそらくオーナーさんのご知人がカヌーに乗って湖からやってきてドーナツを買って帰ったのを目撃した、という話を聞いて、より一層行きたい思いが募りました。
(余談ですが、チャシバクINNのオーナーさんはtwitterもされていて、湖畔の生活を覗き見できて楽しいです。)
もうひとつ、湖畔で気になっているのが
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