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彗星ブランド宣言

彗星ブッククラブを運営する合同会社彗星通商は、今年5月、彗星ブランド(現在は彗星ブッククラブ・彗星読書倶楽部YouTubeチャンネル・彗星読書倶楽部クラブメンバーシップで構成される)のブランドアイデンティティ21項目を制定しました。

彗星ブランド宣言

1
ネットが海であるならば、そこには港が必要だ。

2
この世界そのものを何かに喩えるなら、何に喩えるのがふさわしいだろう?
少なくとも、世界よりは小さく、私たちの近くにあるもので喩えなければならない。
では、もう少し想像を限定しよう——
書物の世界を何かに喩えるなら、何がふさわしいだろう?
本を読むことは、航海と同じだ。世界の中で日々を生活することが、航海と同じであるように。
つまり、途方もない可能性が広がってはいるが、自分が生涯に知りうるのは、可能性の全貌の一部でしかない。

3
自分が生涯のうちに、この世界の全貌の一部しか知り得ないことを、誰もが惜しく思い、いつも未練を感じている。
この気持ちは、好奇心と呼ばれている。
未練と好奇心は、真逆なもののように見えるが、同じものだ。

4
人は、自分が遠方で見たものを語りたがる。見た場所が遠くであればあるほど、語りたい欲は強くなる。
そして人は、誰かにそれを説明するとき初めて、その旅に何の意味があったのかを知る。

5
世界は海に似ていて、インターネットの世界も、書物の世界もまた、海に喩えられる。
世界で生きることは航海に似ていて、読書もまた、航海に喩えられる。
そして人は、自分だけの航海日誌を書いている。
航海日誌には、1冊の書物と出会った体験が書かれている。
その航海日誌は、他人に語って聞かせる価値がある。

6
彗星ブランドは、ネットの海の港としてある。
その港は、この世界そのものの港でもあり、文学の海の港でもある。
私たちは、日々、無数の文書を読んでいる。
ネットのニュース記事、SNS、新聞、書籍、電車の中の広告、取扱説明書、料金表、原材料名……
そうして、テクストの海で、自分が乗る小さな舟を、なんとか転覆しないように漕いでいる。
舟とは何か? 自分自身でもある。自分の意識とも言える。
それが心もとない小舟であっても、大型の帆船であっても、すべての船舶には、港が必要だ。
彗星ブランドは、ネットの海の港としてある。
その港は、この世界そのものの港でもあり、文学の海の港でもある。

7
文学の海の港は何をするのか?
港であるからには、海で収穫したものを荷揚げし、遠くの人々へ運ぶ。
別の港から運ばれてきた荷物を流通させる。
船と船員を休ませる。
船出の準備を支援する。
治安の警戒にあたる。
造船をする。
商店街を作る。
文化を創出する。
クラブを作る。

海で収穫したものを荷揚げし、遠くの人々へ運ぶ:
日々刊行される無数の書物の中から、良質な本を精選して販売する。

別の港から運ばれてきた荷物を流通させる:
本の来歴や内容を解説し、理解と発展を促す。

船と船員を休ませる:
情報を整理する。

船出の準備を支援する:
毎日の武器となる知恵を提供する。

治安の警戒にあたる:
読書コミュニティにルールを設ける。

造船をする:
文章と書物を作る支援を行う。

商店街を作る:
書籍や動画などの各種商品を提供する。誰でも読書会グループを設立できるオンライン読書会プラットフォームを運営する。

文化を創出する:
コンテンツを企画・制作し、時に別の業態と協力する。

クラブを作る:
利用者の間で交流が生まれ、新しい文化が生まれる。

8
現実世界もネット世界も場である。
場である以上、1人の人間にとって場が持つ意味——見え方、感じられ方、価値は、変動を続ける。
この変動や、変動によって流れ動き、時に洪水を起こす情報を、水路付け、秩序を与えるものが、港と言える。

9
彗星ブランドは、文学世界の港だ。
彗星通商は、港を管理する商人だ。

10
優れた文化は、文化自身を治癒するための自己回復機能を持つ。

11
優れた文化はまた、人に、その人自身を治癒するための自己回復機能を授ける。

12
文化は、文化を受け取る人間を含めて文化と呼ばれる。

13
彗星通商は、文化構想企業だ。
本を読むこと、本を書くこと、本を語ることを通して、強力な創造性と自己回復機能を持つ、自律した文化をこの世界に生み出してゆくことが、文化構想企業の使命だ。

14
これからの世界に必要なのは、体験を言語化し、蓄積し、部分的に共有することだ。

15
彗星通商は、日本における読書会は「未だ発掘されざる資源」と捉える。

16
人が集まって本を読み合うことは、新しい行動ではない。
むしろ書物の歴史においては、それは常に行われてきた。
本を中心に人が集まることが珍しいと感じるならば、そう感じること自体が歴史上珍しい事なのだと考えた方がいい。

17
彗星ブランドのグランドヴィジョンは2つある。
ひとつは、7世代先でも有効な読者発の文化を作り続けることだ。
彗星ブランドでは、1世代という単位を30年と捉え、200年という時間を「現在の文化と精神が通用しなくなるまでにかかるであろう時間」と捉えている。
もうひとつは、世界で最も信頼される読書コミュニティを作り続けることだ。
読前・読中・読後に渡る読書行為における信頼を構成するのは、発見と、未来に希望を作ろうとする意思だ。

18
いつ・どのように、誰の役に立つかわからないことに、どれだけ資金と時間を費やせるか、これが人類にとっての豊かさであり、人類の資産だ。

19
人は、コントロールの効かない環境で規則性(パターン)を作り出す、見出す。
技と術は、規則性を作り出す。
技と術は、未知の事物をも作り出す。

20
文芸の言葉、それは、世界の萌芽となり、世界を構築するものだ。

21
価値観は解体と再生を繰り返す。
重要なことは2つ、この繰り返しから逃れられるものはないという事実を忘れないこと、そして、いつでも解体と再生に取り掛かれる体勢にしておくことだ。
だがそれ以上に重要なのは、真の意味での維持とは、必ず、再生の維持であることだ。
「伝統とは火を守ることであり、灰を崇拝することではない」(グスタフ・マーラー)。


単行本『Suisei Book Club 彗星ブランド宣言』では、上記21項目に加え、「彗星ブランド」を作るために書かれた文章3篇を収録しています。
本書は彗星読書倶楽部オンラインストアにて販売中です。


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