■どうしても手放せない筆がある
皆さんは お気に入りの筆をお持ちでしょうか?
例えば、とても重宝している筆や
気が付いたらそればかり使っている筆です。
僕には これだけは絶対に手放せない筆があります。
その筆とは、下の写真のような日本画の筆です。
ご覧のとおり、穂先が極端に尖っていて、
毛の根元が太くなっている筆です。
穂先の尖りは 細い線描きや細部表現を容易にしてくれ、
太い根本は水含みが良く、広い面積・長時間の
彩色を可能にさせてくれる、ありがたい筆です。
簡単に言うと面も線も上手に描ける万能の筆です。
この筆の名称は「削用筆」といい、代表的な日本画用の筆です。
最大の特徴は2種類の毛で出来ていることです。
先端にはイタチ・などを用い、腰が強く毛先が割れることがありません。
根本には山羊・などを用い、和らかく水含みが良好です。
さりげなく、手の込んだ作りには感激します。
削用筆で試し描きをしてみましたのでご覧ください。
線の太さを自由に変えたり、抑揚をつけて描くことができます。
不定形なものも自在に塗ることができます。
いかがでしょう。
細い線も細部も描けて、ウォッシュやぼかし、かすれも出来る筆は
そうそうありません。これだけの作業をするには、普通は数本の筆を
用意しなくてはなりませんが、削用筆があればその必要がありません。
使う筆をいちいち変える必要がないので、それだけ制作が
早くできるということです。
下の絵は、ほぼ削用筆で描いた作品です。
広い面積の塗り以外は全て削用筆で描いています。
完成作品は後日インスタグラムにアップしますのでご覧ください。
ところで、「削用筆」の意味について簡単にお話ししたいと思います。
削用筆は日本画家 橋本雅邦(1835~1908)が筆の側面や先端の毛を
削って先を尖らせ、使いやすくしていたことが始まりとされた筆です。
削用とは正に毛を削る作業から名づけられました。
ここで、おすすめしたい削用筆をご紹介しておきます。
僕が水彩画を描く時に最も使う削用筆です⇩
細い線、細かい箇所は勿論、広い塗りやぼかしも難なくこなしてくれるので、これ1本で1枚の水彩画が描けてしまうくらい重宝します。
価格も水彩専用の筆よりも安価で、是非おすすめしたい筆です。
シャープな線が描けます。この削用筆もおすすめです。⇩
穂先がとても細くシャープです。先端に腰の強い鼬毛を用いているせいでしょうかか、毛先が割れることがなく、いつまでもシャープな線を描くことができます。また線の強弱の変化も自在に表現できます。
弾力のある毛先をお望みならこの筆です⇩
腰が強い筆です。見た目は白く、山羊か馬の毛を使用していると思い
ますが、毛の内側には弾力のあるイタチの毛が多く使われている
のでしょう。そのせいか、とても弾力があり、手を素早く動かしても、
毛先がそれについてくる感じがします。
筆運びに関しては群を抜いていると思います。
線描を長時間したい方におすすめです⇩
見た目(細い三角形)とは違い、水含みがとても良い筆です。
しかし毛先が鋭利なせいか液だれすることがなく、心地よい水加減を
楽しむことできます。また一度パレットの色を含ませたら、長時間描く
ことができます。
極上の削用筆をお望みなら⇩
この筆はまだ使ったことがありませんが、商品説明を読むと「イタチ、
羊毛(ヤギ)、鹿毛、兎毛、多種類の毛を使用」「運筆良し、きれ味の
良しさが特長」と書いてあり、正に極上の削用筆であることが伺えます。
最後に、ちょっと珍しい筆をご紹介します。
それは、削用筆ではなく「写経用の筆」です。
こんな形をしています⇩
古くからさ写経をするために作られた筆です。
形は削用筆と似ていますが、毛足がやや短いのが特徴です。
写経は、連続して文字を書きつづけなければなりません。
そのため墨液を多く含ませる必要があり、毛の根本が太くなっています。
更に毛足をやや短くして、小さな文字を上手く書けるように工夫
されているのでしょう。
実は写経用の筆も水彩画を描くにはとても重宝すると思います。
細部を繊細に描いたり、数センチ四方の塗りなら難なくこなせます。
僕が愛用している写経筆です⇩
安価なので、試しに購入してみましたが、さすが写経筆!と思うほど、
細かい作業が上手くできて気持ちが良いです。
使用後に毛を洗うなどして大事に使えば、毛先の割れもせず長持ちする
と思います。
また写経筆には『雀頭筆』という形のものが多くあります。
先端が尖り、根本は急激に膨れ、それが雀の頭の形に似ていることから、
そのように呼ばれています。
細かい作業がお好きな方にが是非おすすめです。⇩
昨年購入しましたが、使ってこの筆の良さが分かりました。
毛先が短いせいか、手を動かしやすいと実感しています。
そのため細い線は勿論、繊細な細部表現も可能にしてくれる筆です。
以上、数々の削用筆をご紹介してきましたが、削用筆の素晴らしさが
お分りいただけたかと思います。
細い線や細部を描くのが苦手、また極めたいという方は、
1~2本あっても良いのではと思います。
お話はここまでです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。