書けそうで書けない編曲「赤とんぼ」 9 翠 2024年5月21日 23:11 ピアノ1台で描いたトスカの世界も4台ピアノで作りだした「新世界より」も今までに世に送り出してきた藤川さんの編曲作品はそのどれもが素晴らしいと思うけれど私は密かにこの「赤とんぼ」の編曲が抜群に上手いと思っている時に歌の伴奏は黒子となりがちで黒子であることが悪いことだとも思わないけれどこの編曲は私の中にあった「伴奏」に対する固定観念を一笑にふすように悠々と軽々と超えていった前奏からしてもう上手い聴き手の手を取りこれから始まる物語の世界へと誘うこの短い前奏で赤とんぼの世界への入場から着席までやってのけてしまうこれから歌うメロディーをそのままなぞったメロディーではないから前奏に続いて始まる歌い手のメロディーが二番煎じにならず新鮮な音として耳に届く歌が始まってもやっぱり上手いもともと楽譜の隙間、音の隙間を埋めていく才に長けている人ではあるが歌い手の音を消すような音は乗せない隙間隙間を突き歌い手の声の輪郭を際立たせていくそこにソプラノ歌手がいるかのようにバリトン歌手がいるかのように音楽が進むと共に赤とんぼの世界を膨張させていく音の世界を広げようと思えばたくさんの音を書きたくなるのが人情で得意とする音形や印象的な高音を入れたくなるのが人情のところをそこをグッと堪えてこれ以上は削れないところまで音を、和音を削ったことだろう水墨画を描くように余白に呼吸をさせ音のないところに命を吹き込むミクロの単位でメスを操りほんの僅かの手元のズレも許されない脳外科手術を見たようだと言えばそれは少し言い過ぎでしょうか いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #音楽 #動画 #ピアノ #ジャズ #編曲 #赤とんぼ #テノール #日本歌曲 #藤川有樹 #三木露風 #山田耕作 #高島健一郎 9