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【石読み日記】 石に縋るな

すがるな


石読み中に、この言葉を以て石から突き放された人がいた。

『藁にもすがる』の『縋る』
もともとは『溺れるものは藁をもつかむ』だっけ?
『神仏にすがる』という使い方もあるなぁ。あまり良いイメージは持てないけど。

ちょっと考えてから、クライアントご本人にそのまま伝えた。

すがるな、って石に言われてますよ」

クライアントさんは少し間を置いて
「あぁ、分かります~」
と答えた。身に覚えがあるらしい。


落ち込んだ時、苦しい時、不安な時、人の判断力は鈍る。平常時なら「そんなもの役に立たないでしょ」と思うのに、苦しい時が続くと「もしかしたら、これが助けてくれるかも」「これがあれば、運気が変わって良い事があるかも」なんて期待してしまう。

パワーストーンと呼ばれるものは、「○○○の力がある」とか「運が良くなる」というセールストークやキャッチコピー的な言葉と共に販売されていることが多い。

このクライアントさんは、そういうのが好きな人だ。神仏への信心も強いが、同じ位に依存心も強い。

私は常々、依存心の危うさを言い続けていたのだが、とうとう石の方から突き放されてしまった。

「縋るな」の厳しいメッセージ。
2種類の石を欲しがっていたクライアントさん、意外なことに言葉を素直に受け取った。

自分が石に縋りたがっていると理解したクライアントさんは、石を買うのを思い止まった。まぁ、そもそも私には売る気がないんだけれど。

「石はまた今度。すでに色々持ってますしね。」

そういう結論に至った。

帰り際、クライアントさんがぼそぼそ話しだした。

「実はYouTubeで気になっていたものがあったんです。いえ、石じゃなくて…
○万円で龍神を付けてくれるっていうもので…」

はぁ? 思わず、そう言ってしてしまった。

「そういうものに惹かれる状態って、すがろうとしてる証拠ですよね」

その通り。なるほど、相当な心当たりがあった訳ね、だから厳しい言葉もすんなり受け入れられたのか…

私は、笑いながら言った。

「○万円で付けられる龍神って、一体どんな龍神なんでしょうね?」

クライアントさんは、笑ってる私を見てハッとした。
そしてクライアントさんも、その日一番の大きな声で笑った。

「本当に!どんな龍神なんでしょうね!」

最後に二人で大笑いして、クライアントさんは帰っていった。

笑い=祓い 
クライアントさんは自分で何かを祓っていった。
何かに縋るよりも、怪しげな龍神よりも、笑う方がずっと良い。


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翠恵
新しい目標は、他店で購入されたブレスレットのメンテナンスもできる店になること。商売的には難しいことですが、それがちょっとでも「山を守る」ことになれば…