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#60.黄金の夢のように/Earth, Wind & Fire - September & December

□9月は再発見の月

9月というと、わたしは夏休み明けの新学期の始まるイメージがあります。わたしの記憶や思い出をたどると、夏休み明けの慌ただしさ(たとえば夏休みの宿題や課題の提出や、友達と再会して夏休みの出来事を語る)みたいなものが9月の始まりに集中しています。

たとえば小学校や中学校だと、夏休み中にやった宿題や工作、作文や習字を抱えて学校に行き、友達と再会して夏休みの出来事を語り合う。それに加えて、転校生までやって来るときがありますね。新しい同級生に興味津々で、いろんな話を聞きたがります。

そんなふうに高揚した日々が2、3日続くと、今度はすぐに運動会の練習も始まって夏休みの余韻はすぐにどこかに消えてしまう。それに中学校だと定期テストの勉強も始まる上に、どうかすると文化祭や合唱コンクール的な練習や準備も考えなきゃいけなくなる。

そう考えると、9月ってあっという間に過ぎ去る時期のようにも思えます。けっこうぎゅうぎゅうにいろんなイベントを詰め込んでいる一ヶ月でもありますね。敬老の日や秋分の日もあるから、よけいに短く感じるのかもしれない。

わたしの子どもの頃とは違って、今では8月末から再開する学校や地域もあるし、運動会だって春に開催するところもあるけれど、それでも多くの人にとって、9月というのは夏休み明けの再会やリスタートといった感覚があるんじゃないかなあ。たぶん。

そんな9月にクラスの同級生たちと再会し、運動会や文化祭の準備を通じて、同級生たちの新しい一面を再発見するのもこの時期かもしれない。意外と足が早かったりだとか、工作が得意な面を見たりだとか、転校生への面倒見が良かったりだとか。

だから9月というのは、再発見の月と言えるかもしれない。

□12月だとなおさら

Earth, Wind & Fireの有名曲"September"は、別れた恋人のことを12月に思い出しながら、9月の日々を覚えているかい? と、ここにはいない恋人に対して呼びかけています。

・Earth, Wind & Fire - September (Official HD Video)

12月は街が華やぐクリスマスの季節。街も人々もどこか高揚しています。9月の初めの頃の夏休みの終わった直後の高揚とはまた別の種類の高揚ですね。一日ごとにクリスマスが近づくし、年末だから慌ただしいし、それに寒さが街ゆく人々を急ぎ足にさせます。

きっと、この曲の主人公はクリスマスの華やかさに浮かれる気分でもないので、急ぎ足で街をゆくのかもしれない。周囲はクリスマスを心待ちにしている人ばかりのように見えるし。

そんな時期にふと、別れた恋人のことを思い出す。本当の愛を分かち合ったと思った恋人のことを。

まあ、気持ちとしてはわからなくはない。いつの季節だって別れた恋人のことをふと思い出す瞬間というのはやってくるんだけど、12月だとなおさら、その恋人がここにいないことが身に染みる感覚がより深く、そして強く感じられます。

今では家族や友人と過ごすクリスマスというのもずいぶんと一般的になったけど、ちょっと前までのある時期において、クリスマスは恋人と過ごすものという雰囲気が満ちていました。

どちらにしても、12月には家族や友人、あるいは恋人とともに過ごしたいと思うのもよくわかります。寒いから暖かさを分かち合いたい気分になるのかな。これが夏だと、一緒にいるだけでうっとうしいなあとか、暑苦しいなあと思う人もいるとかいないとか。

□寒い時期だからこそ

ところで、Earth, Wind & Fireには"December"というタイトルの曲があります。これは"September"と同じメロディで、歌詞がほんの少しだけ違うバージョン。セルフパロディみたいなものですね。

・Earth, Wind & Fire - December (Official Video)

"September"にしても"December"にしても、歌詞の中で「あの頃の愛を忘れないで」(意訳)と恋人に呼びかけます。「黄金の夢は輝いた日々だった」と。

もしこの曲が「しっとりしたバラード」だったら、歌詞の内容もさすがにちょっと重く感じてしまうような気もします。たとえば、演歌やある種の歌謡曲のようにいつまでも別れた恋人のことを重く引きずっている、みたいな雰囲気が漂ってしまうかもしれない。

けど、このディスコ調の曲であるこれらの曲には、そんな重い雰囲気はないですね。この2曲が華やかで楽しいディスコ調の曲ということに救われているようにも思えます。あと腐れなくスッキリ綺麗に別れた、みたいな雰囲気も感じるし。

寒い時期だからこそ、明るく華やかに去っていった恋人のことを思い出すくらいがちょうどいいのかもしれないね。イルミネーションにも似た黄金の夢のように。


□Good Morning! Music とは

ひつじのはなし|Good Morning! Musicは、水月羊(the Maverick Black Sheep)が大胆不敵にも音楽(主に洋楽)エッセイを書こうという目論見と試みです。

音楽(主に洋楽)を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。ここでは歌詞全体の原文の掲載や和訳はしませんが、気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。


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