【重要】Psychological debriefing for preventing post traumatic stress disorder (PTSD)
Abstract
過去15年の間、トラウマに対する早期の介入として心理学的デブリーフィングが用いられてきた。幅広く用いられているがエビデンスにかけているため、シングルセッション・デブリーフィングのPTSD予防効果を検証した。
RCTの選定は、次の内容を含む15のシングルセッション・デブリーフィングを対象とするRCTとした ( on persons recently exposed to a traumatic event. The intervention consisted of a single session only, and involved some form of emotional processing/ventilation, by encouraging recollection/reworking of the traumatic event, accompanied by normalisation of emotional reaction to the event)。ただし、多くの研究は質が低く、6つの研究はメタ分析から除外された。
メタ分析の結果は、シングルセッションの個人デブリーフィングはPTSDの発症予防効果がなく、心理学的な苦痛も減少させないことが明らかになった。
それどころか、1年後の結果では、PTSDの発症率を上昇させ (OR=2.51[95%CI=1.24-5.09]), 症状の強さは1-4か月後 (SMD=0.11[-0.10-0.32])、6-13か月後(SMD=0.26[0.01-0.50)]と続き、3年後に無症状となった(SMD=0.17[-0.34-0.67)]。
また、心理教育的介入と比較して、シングルセッションの個人デブリーフィングが心理学的な苦痛、抑うつ、不安を減ずる効果は認められなかった。
概要
問題と目的
PTSDに対するデブリーフィングは、戦争におけるトラウマ反応の予防に端を発し、のちに市民へと適用された
代表的なCritical Incident Stress Management (CISM; Mitchell, 1977) は包括的な惨事事前事後ケアとして開発された
CISMコンポーネントの第4番目に含まれるデブリーフィングは、クライシス後1-10日後に実施され、急性症状の緩和、フォローアップ対象者のアセスメント、できればトラウマイベント後の心の問題の終結を提供することを目的とする
Mitchell (1983) モデルのデブリーフィングは以下上段の手順で行われ、それよりも下段のCurtis (1995) のほうが明確な手順を示している
Introduction
The facts
Thoughts and impressions
Emotional Reactions
Normalisation
Planning for the futer
Disengagement
Identification
Labeling
Articuation
Expression
Externalisation
Ventiliation
Validation
Acceptance
デブリーフィングを適用する目的は、トラウマイベント後の①心理学的な苦痛の減少及び②PTSD発症予防だが、いずれもエビデンスは定かではない
本研究の目的はメタ分析により上記二点の効果を明らかにするものである
方法
メタ分析対象
RCT/quasi randomised trials
16歳以上で介入4週間以内にトラウマイベントを経験したもの
シングルセッションでreworking/reliving/recollection of the trauma and subsequent emotional reactionsを目的とするすべての心理学的介入を含む (例えば、psychological debriefing, critical incident stress debriefing, crisis intervention,psychiatric stress debriefing, multiple stressor debriefing, traumatic event debriefingなどの名称で記載される
除外対象
精神科患者及び家族への危機介入
心理学部の生徒を対象とするもの
周産期の支援やグリーフケア
PTSDの治療そのもの
N=1およびcross overデザイン
子どもを対象とするもの
測定内容
PTSD発症率 (IESで評価)
General psychological morbidity (例えば、HADS、BSIなど)
Depression (HAD-D, BDI)
Anxiety (HAD-A, STAIなど)
General psychiatric morbidity
Dropout from treatment
General functioning
検索方法
データベースサーチ
kei individuals contacts
Handserch for Journal of Traumatic Stress, Journal of the Emergency Medical Services, Journal of Human Stress, Mass Emergencies and Disasters
データ収集と分析
Cochrane Handbookの評価、CCDANのアセスメント、Kenardy(1996) の方法でクオリティーを評価
Review Managerを使用
ods ratioはPeto法で算出
同一の連続変数はWeighted Mean Difference (WMD)、異なる連続変数はStandardised Mean Difference (SMD) を算出
連続変数のメインアウトカムはIES
異質性はchisquared statistic及びI squared statisticで算出
結果
分析対象
15の研究、うち1件はquasi-randomised
病院・クリニック等でのリクルート
7つの研究はUK、ひとつはアイルランド、一つはNetherlands、5つはAustralia、一つはUSA
サンプルサイズは30-1,745
実施時期はトラウマ発生の翌日から1ヶ以内
そのうち6つの研究は比較を行えないか十分なデータが欠如していた
PTSD発症、重症度その他精神疾患発症率 (詳細は掲載できない)
PTSD発症は、介入から3か月、3-6か月、6-12か月、12か月以降のいずれも抑制効果はなく、むしろ3年後には発症促進効果が認められた
PTSD症状は、6-13か月後に増加したが、それ以外は抑制効果がなかった
うつ病、不安障害などその他精神医学的疾患の発症リスクの抑制効果はない
抑うつ症状は6-13か月後に上昇し、そのほかに抑制効果はない
ドロップアウト率は高い
したがってPTSD予防及び症状緩和を目的とする個人デブリーフィングは推奨されない
注意点
現在のところ、デブリーフィングを重要なコンポーネントとするCISM (Critical Incident Stress Management; Mitchellモデル) は結論が混在しているが、有害であるとする見解が多い
いくつかのEAPサービスではCISMをサービスとして販売しているが、根拠に乏しいばかりか危害を与えている (PTSD発症のodds ratioを上昇させに行っている)と考えたほうがいい
また当該論文においてPsychologifal First Aid Modelが考察において引用されているが、原文を入手できない
CronicalなPTSDを抑制するための予防的介入として、惨事後はPFAに基づき、次いでリカバリスキル教育アプローチとのちのグリーフケア等カウンセリングフォローアップが効果的という結論が導かれるかもしれない
引用
Curtis, J. M. (1995). Elements of critical incident debriefing. Psychological Reports, 77, 91-6.
Kenardy ,J., Carr, V. (1996). Imbalance in the debriefing debate: what we don't know far outweights what we do. Bulletin of the
Australian Psychological Society,17, 4-6.Mitchell, J.T., Everly, G. S. (1997). The scientific evidence for critical incident stress management. Journal of emergency Medical Service, 22, 86-93.
Rose, S. C., Bisson, J., Churchill, R., Wessely, S. (2002). Psychological debriefing for preventing post traumatic stress disorder (PTSD).
Cochrane Database of Systematic Reviews, 2, CD000560.
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