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Encounter in the sky
ヴァルター・ベンヤミンは『複製技術時代の芸術作品』において、時間と空間とが織り成した独特で一回性の現象が纏う雰囲気や存在感を〈アウラ〉と表現している。
それは仮に何かが模倣され今ここにあったとしても、実はオリジナルの本質を備えてはいないのだと解釈できるが、これは単に本物にはアウラが在るが複製には無いということではなく、複製が当たり前になっている・ありふれている世の中にあってはアウラという概念その
学生運動終末期に大学生だった父親のことを想う
私の父親は、都内の大学構内で”学生運動”が展開されていたのを経験した最後の世代だ。
本人曰く、勉強するために大学に入ったのにガタガタドンパチやっていたのでとにかく頭に来た、とのことだった。
機械の構造や内燃機関などに興味があったので理工学部に進学して、できれば自動車メーカーにでも入社したかったのだろうが、姉が三人で男が自分一人という家族構成だったこともあり両親から家督相続の必要性を説かれ、不満
異物が宝石へと変わる場所に
エリザベス女王国葬のとき、キャサリン皇太子妃が身に着けた四連真珠のネックレスが話題になった。あれはかつて天皇家の御用達ブランドだったことでも名高いミキモト製とのこと。
私は長らく、ぱちんこ業界団体がどうの組合の申し合わせがどうのと話題にしてきたが。ミキモト創業者である御木本幸吉は1932年(昭和7年)日本養殖真珠水産組合を設立し、初代組合長に就任している。
当時は財閥をはじめ横浜・横須賀などの
できれば地下のジャズ喫茶で
高校時代の私の愛読書は、上下二巻のハードカバー仕立てになっていてクリスマスカラーが印象的な、あの『ノルウェイの森』だった。
同じ陸上部の田中君から薦められて読んだのだが、大学に入ってからも折に触れページをめくり、ちょうど主人公の〈ワタナベ〉が自分は多読ではなく気に入った本を何度も読み返すタイプで『グレート・ギャツビー』を最高の小説だと言っていたように、気付いたら印象的なフレーズをちょっと長めのも
フレンチブルドッグは歩けない
私は内縁の相方と、ブリンドルのフレンチブルドッグと一緒に暮らしていた。
ブリンドルという世間的にはいまひとつ聞き慣れないワードは同犬種のオーソドックスな毛色である「黒地に別の差し色が入った毛色」のことを指しており、彼女の場合はビロードのような光沢がある黒に落ち着いた茶色が少しだけ混じっていた。ブリンドルには遺伝子的に身体が丈夫な個体が多いのが特徴で、優性色という位置付けがされているとのことだった
冒険ニーチャンは海へ
今回は、私が昔多かれ少なかれ関わって、記憶の中の何丁目何番地かの一角をいまだに陣取っていてなかなか出て行ってくれない一人の男のことを書いてみようかと思う。
その男は、まあ本名など知らないので当時の勤務ホール内での渾名なのだが、“冒険ニーチャン”と呼ばれていた男の話である。
どの業種店舗でも、外見や仕草などにちょっとしたクセがある常連客には渾名が付くわけだが、パチ屋は社会における印象を良くするこ