はだかんぼファーストフード

今日みたいな、子犬を大事に育てますおばさんを見かけた日は機嫌がいい。
子犬を大事に育てますおばさんが駅前で、

「私は！子犬を！！大事に育てます！！！」

と拡声器を使わずに大声で叫び、周りの市民に拍手喝采を浴びているところを見ると、心がほっこりするのだ。

そうだな、こんな日には繊細な味の食事を摂ろう。
一汁三菜。なんて素敵な四字熟語。必要な栄養素をバランスよく、美味しくいただこうじゃないか。

遅めのお昼ご飯を食べる店を探していた私は、ここだ！とマクドナルドへと入店した。

＊

「いらっしゃっしゃっしゃっしゃっせ〜！」

最近のマクドナルドは威勢がいいなぁ。
そんなことを思いながら、席が空いているか確認するために店内の奥へと進むと、見知った顔があった。

同期のやたかJRと、42期の全力コテコテツッコミマシーンでお馴染み・りょうたろうだ。

「うんうん、だよね〜」

丁度空いていた二人の隣の席をすぐさま陣取り、何の話をしているかは分からなかったが同調してみた。
"とりあえず同調する"という日本人らしい行動に、一汁三菜のような繊細さを感じて少し切なくなった。

急に話に入ってきた私に驚き、りょうたろうが目を丸くして大声を出す。

「おお、水分やんけ！何してんの！？なんでここおんねん！なにがやねん！なんでやねんな！ええ加減にせえ！もうええわ！どうも、ありがとうございましたー」

漫才に飢えすぎているりょうたろうを蝕むツッコミ病は、思ったより進行しているらしい。
漫才の終わりのようなセリフをこれでもかと食らってしまい、耐えきれず少し吐いてしまった。

「とりあえず注文してくるわ！」

私はやたかJRとりょうたろうに荷物番を頼み、一汁三菜を意識しててりやきマックバーガーセットを注文しに行った。

「ハイらっしゃーせー！ご注文なんにしましょ！？ハイッ！てりやきマックバーガーセット一丁！！！お待たせしました、どうぞー！！！」

活気のいい店員さんに注文をすると、注文をし終えた瞬間にセットが出てきた。さすがはファーストフード店、提供のスピードはピカイチだ。

席に戻ると、あることに気がついた。

りょうたろう、服を着ていない。

ツッコミの多さに気を取られていたが、確かにさっきもやけに肌色が多かった気がする。

「りょうたろう、服は？なんで裸なの？」

素直な質問を投げかけると、暑いやろ！？とシンプルな答えが返ってきた。

「あー、たしかにね。」

暑いなら納得である。私はアウターを着ているが、りょうたろうは暑いのだ。暑いなら、はだかんぼになっていてもおかしくはない。

暑いという事実を、通常の60倍くらいの文字数を使ってやたかJRに熱弁するりょうたろう。とても早口だ。ファーストフードのファーストって、提供スピードだけでなくてりょうたろうの早口さともかかってるのかしら。

彼は暑い男でもあり、熱い男でもあるということが分かった。
りょうたろうの熱気が店内に充満し、マクドナルドの店員達も自然と活気付いている。

なるほどなぁ、よく出来ているもんだなと感心したところで、駅前で自分の意見を主張していた子犬を大事に育てますおばさんがマクドナルドに入店してきた。

「はあ〜、疲れた。何食べようかしら。…クサッ！！！」

汗とてりやきマックバーガーとポテトのにおいが入り混じった店内は、子犬を大事に育てますおばさんには臭かったらしい。

おばさん、ごめんなぁ。
てりやきマックバーガーとポテト食べてて、ごめんなぁ。

申し訳なさで、泣きながらバーガーを貪った。

りょうたろうは相変わらず早口で喋りながら、私や店内の人や目についたもの全てにツッコミを入れている。

うーん。
栄養、ちゃんと摂ろうかな。