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ラーメン鉢で逢いましょう

わたし水分スイは、その日ライブに出演した。

おもしろい人たちが集まり、マイクの前でおもしろいお話をしたり、おもしろい小道具を使っておもしろいお芝居をしたりする様子を、そんなにおもしろくない人たちに見てもらうライブだ。
(※見る側の人でおもしろい人もいます。出る側でおもしろくない人もいるけど。)

ライブが終わり、さて今から浜崎あゆみの今後についてじっくり考えようかと思っているところに同期のサルバトーレ 塁がやって来た。

「俺、サルバトーレの塁。その前はネコシエーターの塁で、その前はお試しーズの塁。へへっ」

塁は頬を赤らめながら自己紹介をする。

初対面ではない。昨年は一緒にユニバにも行った。なぜ自己紹介をするのか、またなぜ過去に “お試しーズ” などという壊滅的なコンビ名を付けたのかを訊くと「まあまあw」とはぐらかされたので、髪の毛を2束だけむしらせてもらった。

「この後どうするん?」

塁の問いかけを無視して、わたしはライブ会場を後にした────。

ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ

数十分後、突如カバンの中でスマホが震えた。

もしかしたらサンタクロースから季節外れの電話が来たのでは!?と期待に胸を膨らませ、スマホの画面を確認する。


LINEオーディオ
>スライドで応答

うわぁ塁だ、とドン引きしながら電話に出る。
(よく考えたらサンタクロースから電話が来るなんて話は聞いたことがない)

「もしもし」

「あ、もしもし?俺、サルバトーレの塁。その前はネコシエーターの塁で、その前はお試しーズの塁。へへっ」

プツッ。

電話を切ったのはわたしである。
だって、だって、怖かったんだもの。

しかしものの数秒後に再入電。めげない男だ。

「ごめんごめん。今どこ?もしメシ食うなら一緒に食いたいなーと思って!」

なるほどメシか。
まさかメシを一緒に食べたいという電話だとは夢にも思わなかった。そんなの予想できるわけない。

丁度その時、同じライブに出演したス○パ○フラ○デ○の○○とラーメンを食べるべく店に向かっている途中だった為、仕方なく塁との合流を受け入れ店の前で待ち合わせをすることにした。

おけもうつく

急いでいる感じを演出しているのだろうか。
店の場所を教えて数分後、必要最低限の言葉のみが綴られたLINEが届いた。

しかしその「おけもうつく」というLINEから30分、1時間、3時間経っても塁は一向に到着しない。

暇だったので店先に置いてあった
「ご自由にお入りください」という貼り紙が貼られた巨大ラーメン鉢の中に入って遊んでいると、塁が大粒の涙をこぼしながら走って来た。

「ごめん、ほんとごめん、俺、サルバトーレの塁。その前はネコシエーターの塁で、その前はお試しーズの塁。へへっ…ほんとごめん…!」

反省しているのかいないのかよく分からなかったが、来る途中で今までの元相方達にぼんじりを投げつけられるトラブルに巻き込まれたということだったので許すことにした。

「ラーメン鉢に入って待ってたんだ。塁も入る?」

そう誘うと、塁は涙を拭いて微笑み、ラーメン鉢の中に入ってきた。

「うん、とっても良い感じ。俺、ここに住もうかな。」

塁の新居が無事に決まったところでようやく店内に入り、美味しいラーメンをお腹いっぱい食べた。



そしてやはり塁はいつ見ても、
「こいつこんな顔だったっけ?」
という顔をしているのであった。

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