見出し画像

天使の羽おつまみ

なんばパークスという、なんばにある商業施設。
の、上の方にある庭園。ここがすごく良い。

陽が落ちて夜空に星が輝き出した頃、
「こんな夜は仲間と酒を酌み交わしたいなぁ。な、そうだろ?」
と空の高い位置にある満月に問いかけると、
「俺もそう思う!」
と元ぴんどめ蟹のとなりの声が満月から聞こえてきた。

となりは元ぴんどめ蟹のツッコミで、まともそうな顔をしておきながら全然まともな会話ができないという、とってもステキな芸人である。
一人で月旅行に行っていたようで、今からなんばパークスに来てくれないかと交渉したらすぐに駆けつけてくれた。

「なんかこう、チーズっつーのはさ…」

安いハイボールを啜りながら、となりが語り出す。
となりは酒が入るといつもこうだ。チーズの話ばかりしたがる。
チーズの美味しさ、チーズのいいところ、チーズとの思い出話、すべらないチーズな話…
延々と続くチーズの話に飽き飽きして、なんばの夜空に浮かぶ満月に目をやる。

ああ、綺麗だな。あの月みたいに、私も黄色くなりたいな。どうやったら黄色くなれるかな。チェダーチーズをたくさん食べたら黄色くなるのかな。

そんなことを考えていると、となりに「聞いてる?」と顔を覗き込まれ、びっくりしてビンタしてしまった。

「あ、そういえばおつまみ買うの忘れてた」

テイクアウトしてきた飯を食べ終え、2本目の缶チューハイを開けようとしたタイミングで私はおつまみがないことに気づく。
ちょうど近くに小石がたくさんあったので、小石にケチャップをつけて食べようとしたが止められた。

「よし、これをおつまみにしようや!」

名案だと言わんばかりのニヤケ顔でとなりが声のトーンを上げて言い、急に上の服を脱ぎ出した。

「よいしょ…。ほら、これ!これ食べようや!」

上裸になったとなりが自分の背中を指差す。
そこには、真っ白な天使の羽があった。

「えー!!いやでも天使の羽を食べるのは悪いよ。高級食材だし」

遠慮して私が断っていると、いいからいいから、と羽をむしって差し出してくれた。

せっかくむしってくれたなら、と一口食べてみる。

口の中に一気に広がる、まろやかな甘み。とろける食感の中に、どこか優しい卵の風味を感じる。苦味のあるカラメルのおかげで、甘いだけの食べ物になっておらず見事なハーモニーだ。

すみませんこれプリンの食レポでした!

羽の味はまあまあだった。ランキングで言うと春雨と同じくらいだ。

となりの天使の羽をおつまみに、酒が進む進む。
久しぶりに同期としっぽり飲みながら、いろんな話をした。(もちろんチーズの話はやめてもらった)

あれからずっと上裸で酒を飲んでいるとなりの背中を見ると、もがれた羽はすっかり元通りになっていた。どうやらすぐに修復されるらしい。
となりの目は満月に負けないくらい輝いている。



なんだ。まだまだ空、翔べんじゃん。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?