オタクと化粧(推しを熟成させる)
お出かけをして、お気に入りのものを見つけて、
買って帰ったとき、すぐにあけない方がいい。
ちょっと大きめのお出かけをした時、
家に帰ったら座るまでに片づけを済ませてしまわないと、
その後一生片づけられなくなる呪いにかかっている。
ご存じだろうか。
「自宅で座る」=「尻と椅子がくっつく」ということを。
立ち上がるには強い意志力を要する(MP10ぐらい使う)
ちなみに座った状態から寝転ぶのにはそんなに意志力は必要ない。
寝転ぶ、トイレ、水分補給、は上位行動、
それ以外は下位行動になるのだ。
大量に片づけるものがあった。
普段の自分より「贅沢」をした。
しかし、昨日の私は一味違う。
なんと、新しい顔面パックを買い、絶対に試したい試供品のシャンプーと入浴剤があった。
つまり、入浴する必要がある。
お察しのいい方はもうお気づきだと思う。
そう、「入浴」は「座る」の下位行動だ。
つまり、座るまでに済ませてしまわなければ、立ち上がって入浴するのに意思の力を使ってしまう(MP20ぐらい使う)
私は帰ってすぐにリュックを開け、どんどん片づけていく。
いつもの洗顔料はここ、もらったチラシや名刺はここ、
本はここ、コップはここ、財布はここ、ペンケースはここ、スケジュール帳はここ、ハンドクリームはここ。
バスタブを洗って、お湯をためなければ。
私が座って一息ついてしまう危険性がある。
帰ってから数分間は戦いである。気を抜いてはならない。
全てが終わったら尻と椅子がひっついて、
動かなくていいぐうたらパラダイスが待っているのだ。
その足でバスタブを洗いに行って、お湯をはりはじめる。
ハンカチと靴下を洗濯機に放り込んで、
買ってきたコップを洗って、リュックを押し入れに放り込む。
LINEがくる。LINEに返信する。返事がくる。
LINEに夢中になって一人で「アッハッハ」と笑う。
LINEがひと段落して、ハッと気づく。
お風呂のお湯のはり具合はどんなだろうか。
もういい具合にお湯がたまっている!! 理想値!!
入浴剤を理想的な濃度にするため、肩までつかって肩こりをとりたいため、
ちょうどいい温度で入りたいため、これ以上放置してはならない。
そう、私は戦いの途中だった。
急いで入浴の準備にとりかかった。
入浴、それも女にとって洗浄という名目の戦場である。
(うまいこと言うことに命かけてる)
お風呂を上がると、パックをして、髪を梳いて、髪にトリートメントを塗りたくって、ドライヤーで乾かして、全身に乾燥肌用クリームを塗る。
ピンポイントリフトアップ美容液なんかも塗る(眉間のシワがコンプレックス)
私は普段は片づけが全て終わってから入浴する。
ただ、この日はLINEに夢中になっていたため片づけ途中だった。
私は座ってしまった。
まだ片づけが終わっていないというのに。
幸運にも、残されたものは
「新しく買ったピアス、かわいいメイクブラシ」だった。
帰ってきた時、紙袋のまま机の上に置いていた。
「うわ、開けてない…」
気づいた時にはもう時すでに遅し。
尻は椅子に呪われてひっついてしまった。
その紙袋が視界に入った時「うわ…」と思った。
ただ、それは私が私のためにプレゼントで買ってくれたものだ。
おしゃれなショッピングバッグに入って、まだシールで手提げ部分が止められたままだ。
中身は知っているけれど、だんだん開けるのをもったいなく感じてきた。
明日あけよう、楽しみだな…
ハッとした。
今、その瞬間まで、
「帰ったら全部片づける呪い」にかかっていた。
「座ってしまうと何もできなくなる」と。
ホメオスタシスで「いつも通りにしようとする」と。
そしてその習性から抜け出した理由は、
皮肉にも怠惰だった。
(ちなみに次の日開けました。
プレゼントもらう気持ちを味わいました)
わくわくして、買ったもの、
帰ってすぐに開けず、熟成させるのも、とてもいい。
(短歌?)