ZOOMで遠隔撮影会をやってみた
自粛で、学校行事もなくなり、スタジオも閉まってしまって、すっかり撮影機会がなくなってしまいました。
大好きな相棒のカメラも、出番がないまま。
そんなとき、「Zoom越しで子どもの誕生日の記念写真撮影してくれる方いませんか?」という募集を見つけました。
募集されていたのは、その名も「bosyu」というサービスを提供されているの代表のかた。
この募集をされる前に登録して利用していたのですが、「サービスのオンライン化」を一緒に考えませんか、との募集もされていて、そのときにお話させていただいていました。
思い立ったらすぐ行動、ということで、すぐに応募。
「試行錯誤になると思いますがぜひ」とのお返事をいただき、先日撮影をさせていただきました。
このnoteは、そのときの試行錯誤の記録です。
Zoom越しの撮影、とは
Zoom越しの撮影とは、要するにWeb会議システムのZoomを使って撮影をする、ということです。
撮影してもらいたい側と撮影する側が、双方でZoomを立ち上げ、同じ会議室に入って、映し出される映像をスクリーンキャプチャすることで撮影します。
撮影前に考えたこと
撮影とはいえ、一眼レフを構えて撮るのとはまったく違う撮影になることは間違いなく。
どうやってベストな写真を撮るのか?
ふだんの撮影であれば、現場で撮影場所やポージングの提案をし、自分で画角を決めてがんがんシャッターを切っていきますが、Zoom越しではそうはいきません。
こちらから言葉で画角や立ち位置、顔の向きなど、さまざまな指示を被写体のかたに出す必要があります。
お子さんとのコミュニケーションも、いつものようにいくか分かりません。
写真の要素にはいろんなものがありますが、家族写真のスナップでは、
・ロケーション(公園や自宅などの場所+木の下、ベンチなど)
・ポーズ
・光源(太陽やライトがどこにあるか)
・タイミング(シャッターチャンス)
などを考えながら、適切な場所にご家族を案内して撮影していきます。
これらは、現場でご家族と向き合って撮影する場合は、すべてコントロールできる要素です。
しかしZoom越しでは、シャッターチャンス以外は通常の撮影と同じにはいかないということになります。
その部分をどうするか、撮影を実施する前にすごく考えました。
撮影場所をどう把握するか
まずは場所。公園でとのご希望だったので、場所はそこに決まりました。
公園での撮影では、通常は遊具で遊んだり、ベンチに座ったりしている様子を撮ることが多いのですが、今回は現地に行けない、外出自粛で事前のロケハンもできないので、そこがネックになります。
解決策としては、当日、Zoomでぐるっと周囲を写していただいて把握することを考えました。
あとは、今思いついたことですが、行き先の公園が分かっていれば、Googleストリートビューでも、ある程度、公園の様子が掴めるかもしれません。
画角や構図をどうするか
スマートフォンをどこかに置いていただいて、その前に立っていただく、というのが、Zoom撮影の基本になると考えたので、スマートフォンを立てられるようなスタンドやリングをお持ちでないか、事前のやりとりでうかがいました。
スマホリングのようなものなら取り付けられる、とのことでしたので、それでいけるかな、と考えました。
構図については、これはもう、言葉で伝えるしかありません。
ふだんの撮影でも、少し右に、とか、もう少し左を向いて、とか、お伝えしながら撮影することも多いので、ここはクリアです。
光源の位置
これに関しても、おそらく口頭で伝えれば大丈夫だろうと思いました。
日陰ならそれほど気にしなくても大丈夫。
日の当たる場所で撮る場合は、太陽のほうを向いてもらえばいいので、それを伝えるのは画角やそのほかのことを伝えるより簡単だと考えました。
小物が使えない
撮影の時、私は、造花やブーケ、やちいさなぬいぐるみなど、小物を用意していくこともあります。
わざとらしくならない程度にちいさなお花などお子さんに持っていただいたり、また、ふだん気に入っているおもちゃなどで遊んでもらったりして、できるだけふだんの様子を撮影するのが私のスタイルなのですが、これもできません。
なので、事前に、お気に入りのおもちゃなどあったらご用意ください、とのお願いをしておきました。
そのほかの事前準備
撮影は画面キャプチャになるので、いつも執筆作業で使っている画面キャプチャソフトを使うことにしました。
ショートカットキーを設定して、ワンアクションで撮影できるようにします。
また、ふだんはキャプチャした画像はそのまま原稿作成のWordやPowerPointに貼り付けて管理しているのですが、今回はキャプチャ画像が指定したフォルダにどんどん保存されるよう設定しました。
カーソルキーなどが一緒に映ってしまうと困るので、その設定は外します。
また、ふだんはキャプチャ時の音を出していないのですが、キャプチャのタイミングがはっきり分かるように、キャプチャ時にシャッター音が鳴る設定にしました。
また、Zoomの会議室を予約しました。
これについては詳しくは後述します。
当日の撮影について
今回の撮影の内容をまとめておくと、以下になります。
・4歳のお子さん(女の子)の誕生日の記念写真
・ご家族3人
・近所の公園
私からは、いったん公園で撮影したあと、よろしければご自宅でも、とのご提案をしています。
この前提で、当日の撮影の流れを振り返ります。
まずは待ち合わせ
11時にZoomの会議室で待ち合わせだったのですが、最初、私がうまく入れずお待たせしてしまうことになってしまいました。
これは、11時から撮影なので会議室を11時に予約してしまった、というのもあるのですが、Zoomの仕様で、私がふつうにZoomにログインしてしまったため、会議室を立ち上げているオーナーであるにもかかわらず、オーナーの会議室オープン待ちになってしまったことが原因です。
こちらの準備不足でした。
また、会議室は11時ではなく、せめて15分くらい前にはオープンできるように予約しておくべきだったなと思いました。
撮影の主役がお子さん(4歳)なので、時間ぴったりでなくても始められるようにしておいたほうが、飽きる前に撮影が終われるからです。
ここも反省点です。
実際の撮影
まずはスタンダードな家族写真を撮影するべく、並んで立っていただいての写真を試みました。
スマートフォンで公園を見せていただき、スマホが置けそうな場所、撮影の背景にできそうな場所を探します。
スマホが自立しない、とのことだったので、適当なベンチに立てかけてもらい、少し左、右、もう少し前へ、など、伝えながら立ち位置を調整して家族写真を撮りました。
このとき、音声は、撮影を依頼してくださったかたがイヤホンで聴いておられたのですが、私の指示をママとお子さんに伝えてくださったので、とても助かりました。
いい感じの画角に入ったところで、どんどん撮っていきます。
キャプチャのショートカットを押すとシャッター音が鳴るのは、ちゃんとキャプチャできている、という安心感もありましたが、シャッターを切っている気持ちにもなれました。
撮影していることが、お子さんに伝わりにくい
ここで難しいなと感じたのは、お子さんに私が撮影しているのが伝わりにくいことです。
画面の向こうから写真を撮っている、と言われても、やっぱり小さいお子さんには、目の前にカメラマンがいるわけではないので、実感がないのはもうしかたのないこと。
せっかく公園に来たら、遊びたいですよね…笑
走っていってしまうのを、パパママが呼び戻したり、引き留めて連れ戻してくることになりました。
でも、そこがまた元気でかわいく。
フレームの外に行ってしまったお子さんを撮影したくてたまりませんでしたが、こちらは動けないスマホの中にいる状態なので、残念でした。
イヤホンをお子さんにも装着
最後の写真を撮っているあたりで、お子さんもイヤホンつけたい、ということで、パパのイヤホンを片方、お子さんにつけてくださいました。
これで私の声が聞こえます。
呼びかけると、画面いっぱいに笑顔が接近!
PCのキーを押しまくりました。
こんな画面いっぱいに笑顔が写っている状態でシャッターを切ること、ふだんの撮影ではあり得ません。
画角のバリエーション
ここまでで撮影開始から15分程度。
と、ここで、お子さんが「お家帰る-」と。
撮影したのは130枚程度。
ただし、こちらも初めてのことなので、多めに撮っていること、カメラ位置があまり動かせないので同じシーンが多いことから、セレクトしたらうんと少なくなってしまいます。
ふだんの家族撮影の撮影時間は、30分から40分くらい。
これくらいの時間で、いろいろな角度やシチュエーションを織り交ぜて、150枚から200枚撮影して、そこからセレクトして50枚から60枚という感じです。
ですが、なにしろこちらはスマホの中(!)で、動けないため、画角のバリエーションを出すにはお客様に協力いただかなくてはならないので、動き回るお子さんの写真はなかなか難易度が高いと感じました。
それでも、シチュエーションが変わればまた違う写真になるし、私の中にイメージもあったので、いったん撮影を終了し、ご自宅であらためて追加の殺意をご提案しました。
が今回は、お子さんがおなかが空いたとのことで、ここで大丈夫です、と依頼者のかたから連絡をいただき、その日の撮影は終了となりました。
できればもう少し撮影していろいろな写真を、と思いましたが、そこはお客様のご都合最優先と考えています。
解像度の低さとピント
撮影が終わったので、キャプチャしたデータを確認して、レタッチ作業を行います。
あくまで画面キャプチャなので、ウィンドウのよけいな部分や、自分が写っている部分などをカットし、明るさやシャープネス、ホワイトバランスなどを調整していきます。
これはふだんの撮影と同じ作業ですが、データがjpegなので、rawデータ(撮影時の生データ。jpegより情報量が多く、レタッチしやすい)でないので、作業的には同じでも、データは変わってきます。
予想はしていたことですが、やはりカメラの解像度に比べると、PCのディスプレイは解像度が低いので、画像の粗さは否めません。
そしてピント。
そもそものカメラがZoomなのもありますが、どうしても動く被写体を追うのは厳しいです。
それでもレタッチでできることはたくさんあります。
画像の粗さもピントの甘さも、それが写真の味になるようなレタッチをすることで、ふだんと違った写真に仕上げることもできます。
今後の課題
一度撮影させていただいて、いくつかの課題が見えましたが、解決可能なものもあるので、まとめです。
・スマートフォンを固定するためのスタンドがあるほうがよい
お客様に準備いただければよいですが、難しいこともあるので、あらかじめ使い捨てできるものを作成して送付させていただくことで、解決できると思いました。
ネットを検索すると、段ボールで作るものなどもあったので、次回はこちらで作成し、お送りして、使用後は廃棄していただくことを考えています。
角度を変えられるようなものを作ることを考えています。
・室内ならスピーカー使用で
今回は外での撮影だったこともあり、ご家族のうちパパがイヤホンでこちらの指示を聞いて、ほかの家族のかたに伝えてくださいましたが、室内であれば、スピーカーから音を出していただくほうが、全員がこちらの声が聴けるのでよいかなと思いました。
・カメラに対する立ち位をより分かりやすく伝える
これも、少し右、左、という伝え方でも十分かもしれませんが、前述のスマホスタンドに工夫することで、立ち位置や画角を伝えやすくなるのではないかと思いました。
なので、合わせて工夫したものを作ってみます。
こちらはまたできたら公開します。
・動き回るお子さんは難易度が高いが、赤ちゃんや大人はそうでもない
元気いっぱいのお子さんはやっぱりやや難しいです。
が、まだねんねの赤ちゃんや大人は、スムーズに撮影できる実感を得られました。
ウェディングの前撮りや、カップル撮影、年を重ねたご夫婦の記念日撮影など、可能性を感じます。
画質はスマホを越えられない
課題のうち、解像度とピントを含む画質ですが、これはもう、こちら側でキャプチャしている以上、スマホカメラの画質を越えられません。
これはもうどうしようもない。
そんな状況で、どう付加価値をつけていくかが課題になります。
逆に言えば、自撮りではなく、フォトグラファーがシャッターを切るからこそ撮れる写真を提供する、そのためにはどうすればいいかを、あらためて考える必要があると思いました。
それでも、Zoomならでは、の写真がある
撮影にうかがえないいま、遠隔で撮影できれば、と思ってチャレンジしてみたZoom撮影ですが、解像度やピント、画角など、課題がまだたくさんあるなと思う反面、この撮影だから撮れるものもあるなと思いました。
一例を挙げると、今回撮影できた写真の中に、お子さんのアップの写真があります。
好奇心いっぱいに、スマホに見えている私の顔をのぞきこんだ笑顔を見ながら、その瞬間、やっぱりカメラを握ったときと同じように、夢中でキーを押してシャッターを切っていました。
カメラマンと相対すると緊張してしまう、というお子さんもいるでしょう。
ふだんはそうならないように、緊張感を和らげるようにお話ししたり、一緒に遊んだりしながら撮影するのが私の撮影ですが、そこを画面1枚隔てることで、パパとママと一緒の、ふだんの笑顔を見せてもらうことができたかなと思います。
※写真は許可をいただいて掲載しています。
また撮りたい
撮影を終えて、いまあらためて撮影したデータを見て思うのは、この方法でもまた撮りたい、ということです。
スマートフォンを通した向こう側にいる人がカメラマンであるというのは、自撮りとは違う、不思議な撮影体験になると思いました。
撮影する側からも、離れているけれど同じ時間を共有して、そこにカメラとして存在できる不思議な経験でした。
離れてた場所からシャッターを切るというのは、もどかしさもありましたが、それでもとても楽しかったです。
自分は写真が好きなんだ、とあらためて感じた瞬間でもありました。
そしてまた、この事態が収束に向かって落ち着いたら、今回撮影したのと同じ場所で、あらためて、いつもの一眼レフでご家族撮影をさせていただきたいと思っています。
これから
このnote、ものすごく長くなってしまいましたが、今後の展開として、「Zoomと一眼レフ、セットでの撮影提案」をしていきたいと思います。
いまできる撮影として、フォトグラファーが撮るZoom撮影を。
そして、落ち着いたころにあらためて、一眼レフでの撮影を。
写真はただのデータではなく、その日、その時の思い出をかたちにしたもの。
かけがえのない日々を、Zoomを通して、少しでも残していけたらと思います。
こちらで募集しています。
興味をお持ちいただいたかたいらっしゃいましたら、気軽にご相談ください。