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見た目でなく効果をデザインする

Webサイトやアプリなどのデザインを依頼する側は、見た目に対しての希望をデザイナーに伝えますが、実は見た目よりも結果を重視しています。

これは当たり前のことですが、ついついデザイナーが忘れがちな点でもあります。

そして求められている結果とは、以下のような行動や感情の変化を指します。

・商品を売りたい
・問い合わせを増やしたい
・面白いと感じてもらいたい
・好きになってもらいたい

期待されている効果を確認する

例えば社内のコールセンタースタッフに対する評価システムをデザインすることになったとします。

評価項目は予め決まっているため、「これらの項目をグラフを使ってキレイに見せて欲しい」なんて依頼が来るかと思います。

依頼主の言葉をそのまま受け止めると「わかりやすくキレイにする」のが目的のように思えますが、デザイナーはその先にある期待されている効果を確認する必要があります。

わかりやすくキレイに見せたい理由が「仕事に対するモチベーションを向上させたい」なのであれば、前者は単なる手段でしかありません。

ですが、誰もがデザイナーには見た目を依頼するものだと思い込んでいるため、「コールセンタースタッフのモチベーションを上げて欲しい」とは依頼して来ません。

デザイナーは自らその先にある期待されている効果を確認する必要があり、それは依頼主にヒアリングするのが最もかんたんです。

依頼主の提案を鵜呑みにしない

依頼主は画面に表示する内容をデザイナーに伝える際、箇条書きのテキストを渡す場合もありますが、その大半がExcelやPowerPointなどで作成したレイアウトを含んだ素案であることが多いと思います。

依頼主が作りたいものが視覚化されて理解しやすくなるのはありがたいのですが、デザイナーは「これが作りたいもの」そのものだと先入観を植え付けられないように気をつけなければなりません。

その理由は依頼主がUIデザインの専門家ではないのもありますが、そもそも「モチベーションが向上する画面」ではなく、デザイナーに依頼したのと同じ「分かりやすくキレイな画面」を自分なりに作成しているからです。

さらにその「分かりやすさ」はコールセンタースタッフではなく、依頼主側の立場から見た「分かりやすさ」だというのも陥りやすい致命的なミスです。

ユーザーが見てどう感じるか

依頼主はコールセンタースタッフの成績をあげたいと考えている管理者側の立場にいる人間です。

そんな依頼主が作成した素案を見ると、評価の項目が並んでおり、平均や目標を下回る点数の評価項目が赤く目立つようにされている事がよくあります。

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依頼主の立場を考えると、改善して欲しい項目に気付いて欲しいのは当然ですが、この時点で完全に本来の目的を見失っていることに気づかなければなりません。

実際にコールセンタースタッフがこの画面を見てモチベーションが向上するでしょうか。むしろ下がるとは思いませんか?

悪い評価が目立つよう赤く塗りつぶされているため、執拗に罵られているような印象すら受けます。

なお、これらが「意識すればすぐに改善できる項目」であれば、この見せ方がもっとも効果的で効率が良い可能性ももちろんあります。

ですがスキルや解約阻止率のように短期間で改善が難しい項目の場合は、長期間に渡ってその赤色を見続ける事になります。

長期間見続けると人は慣れてしまいます。

そして「私はここが苦手な人間なんだ」と受け入れてしまい、そこを改善する努力を怠るようになる可能性があります。

これをラベリング効果と呼びますが、こうした現象は既に私たちの日常でも実感している人が多いはずです。

例えばA型の人は「しっかりもののA型」といったように、自分自身の血液型診断でよく見られる傾向の行動を選択しがちではありませんか?

「あなたはこういう人です」と示されるとそれに見合う行動を取るようになるのは人間が持つ行動特性の一つです。

そのため例えば社内成績をランキングで発表したいのであれば上位3名のみ発表するなど、悪い成績の人が「自分は成績が悪い人間」だと受け入れてしまわないよう配慮する必要があります。

どのように改善すべきか

では実際にどのように改善すべきか。それはデザイナーである私たちがユーザーの立場に立ってデザインする事です。

例えば先ほどの素案をいただいた場合は、逆に良いところを褒めるデザインを提案するのはどうでしょうか。

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良いところを褒められれば仕事に対する意欲が湧くのはもちろん、すべてを緑にしたいという欲求が生まれたり、一度緑になった項目はその色を維持したいと考えたくなるものです。

モチベーションの向上はその人の気持ちのあり方に大きく影響するため、デザインで感情を動かす必要があります。

デザインで感情を動かす

これを読んでいる方の中に、Apple Watchを購入してから歩く量が劇的に増えた人はいませんか?

単なるエフェクトとテキストではありますが、自身の行動をきっかけに発生したその画面は、感情を動かし習慣を変えるのに十分な効果を発揮します。

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参照:Apple

そのほかUber Eatsでは、お客様から頂いた良い評価をバッジとして配達員に配布しています。

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参照:Uber Eats

このように自分の努力で何かを生み出したことに価値を感じるイケア効果を取り入れるのも、今回の評価システムでのデザインに活用できそうです。

なお自身の悪い評価項目については指摘されなくても誰もが気になります。

赤色に塗りつぶすようなことをしなくても、見てくれるとコールセンタースタッフを信じてあげてください。

そしてもし自分の成績すらまともに見ないと考えるのであれば、なおさら「見てみよう」と思えるポジティブな画面にすべきです。

悪い評価項目の見せ方

では悪い評価項目は、コールセンタースタッフを信じてまったくそれとわかる表現は不要でしょうか。

管理者側の立場を考えると、「評価が悪い項目に対して何もアプローチしない」という決断は難しい選択です。

悪い評価に対して何も表現しないデザインを通すのは、なかなか難しいと思います。

また人は自身の行動を評価してもらうことで、行動を見直すきっかけとなり、行動が改善されるフィードバックループという行動特性があります。

モチベーション向上の先にある目的が、成績向上であることを考えると、悪い評価についても気づきは与えてあげた方が良さそうです。

そしてそれは数字の右上に小さな赤いバッジをつける程度で十分です。

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小さな赤いバッジがどれほど気になり消したくなるのは、スマホの画面でいつも体験しているので説明するまでもないですよね。

まとめ

開発現場ではユーザーの立場になって発言できるのはUIデザイナーだけという事が往々にしてあります。

依頼者側の要求を理解しつつ、その画面をみるユーザーの立場になってデザインしてあげましょう。

そしてどのような表現にするべきか悩んだ時は、そのデザインを見た時にユーザーの感情がどのように動くかに着目してください。

きっと依頼主が「これは期待していた以上だ」と思うような提案ができるはずです。

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