「日本をAI先進国にする」仕組みづくり(ダブルハーベスト)
マッキンゼー、Google、楽天…13職を経て、気鋭のIT批評家として知られる尾原さんの著書である「ダブルハーベスト」が良い内容だったので、私のコメントも入れながら、内容紹介します。
(新著プロセスエコノミーの記事がある中、今更感はありますが笑)
日本企業をAI先進国にするために、AIをどのように企業の戦略の中に組み込んでいくか、AIを自社の持続的な競争優位性につなげ、日本企業に勝ち続ける仕組みを築きたいという想いがこの本の伝えたいことになります。
つまり、テクノロジードリブンな事業成長を増やそうとしている本になります。
日本の産業が生まれ変わるために必要なエッセンスが詰まっているので、ご一読いただき、感想きかせてください!
まとめ
・データが勝手にたまり続け、AIが進化し続ける勝ち続ける仕組みをハーベストループという
・AIが人間を完全に代替することはないので、AIが人間の仕事をアシストする、人間とAIのコラボレーションによるオペレーションを作ることが重要
・AIをオペレーションに組み込む際に、マッチングなどに目が生きがちだが、ヒトがやっているオペレーションをChatbot化するなどボトルネック部分に使えないか検討することが重要
・勝つ仕組みを作るために、自社のUnique Value Propoistion (UVP)を作ることが大事
・どういうデータが必要か逆算して、最初からループありきで考えてオペレーションを作る
Amazonのハーベストループ
・ハーベストループを理解するには、アマゾンの例がわかりやすい
・ユーザーが喜ぶ体験を提供することで、さらに顧客が集まってトラフィックが増えてくる、こうなると売り手は、アマゾンに出品せざるをえなくなり、結果、商品セレクションは充実し、ユーザーがさらにハッピーになる
・売り手・買い手双方のデータ、それをつなぐ取引データが勝手にたまる構造。その構造を用いると、様々な最適化を実現できる。このデータを取り続ける、勝ち続ける仕組みを「ハーベストループ」と呼ぶ。
つまり、できるだけ手を抜いて、勝手に稼ぐ仕組み
イスラエルのベンチャーに1兆7千億円の値がついた
・イスラエルのモービルアイという、車載カメラによる車両検知や事故防止のシステムを提供する企業は、2017年に1兆7千億円で買収された
・当社は、走行試験を重ねて、路面状況の画像データを大量に蓄積していき、クラウド上に高精細なロードマップを描くことができる。それによって事故を防げるのがバリューである。路上画像が蓄積され続け、画像処理AIが強化され、事故予測AIの精度があがり続ける
・AIが賢くなり続けるハーベストループをもっているベンチャー例
日本におけるDXの必要性
・日本人はもともとオフライン環境では非常に丁寧で、質の高いオペレーションを得意としているので、一度オンライン化してデータを取る仕組みつくれば、そのデータをAIに与えて、勝ち続ける戦略デザインの構築することは他の国に劣らないはず
・だからこそ、躊躇なく、DXを進める必要性がある。このままいくと、GAFAMの下請けにならざるをえなくなる。儲かり続けることは悪ではないので、その仕組を作ることが必要
AIをオペレーションの仕組みに取り入れる
・AIが人間をアシストし、人間がAIの学習を強化する仕組みを作るHuman in the loopという
・AIは人間の仕事を奪うのではく、むしろ人間の仕事をアシストする存在
・適切な教師データを与えて、AIを強化するのは人間の仕事なので、人間とAIのコラボレーションによるオペレーションの仕組みであるHuman in the loopを作っていく
・たとえば、ソフトウェアを使うことで、入力作業から開放された担当者がセールス業務に注力したことで、売上アップにつながった事例がある
つまり、データ入力はセールス担当者にとって余計な仕事、免除されれば本来彼らにしかできない仕事に専念できるようになる
AIの学習にユーザーを取り込む User in the loop
・AIと人間のコラボは、社内人材やエキスパートだけでなく、ユーザーに参加してもらう例がある。その典型は、グーグル翻訳の右下についている翻訳結果のコピーボタン
・Google 翻訳では、コピーボタンによってその訳が使える正しいと判断されたかを測っている。コピーされたということは訳が正しいという判定をユーザーがしていることになる。それによって、AIが学習するための教師データがどんどんたまっていく
他にも、テスラの例がある。ユーザーはテスラに乗っているとき、意識しなくて運転しているだけで、テスラには自然とAIの学習データがたまっていく。
テスラは、私もアメリカで乗ったことがあるが、道幅の調整、車線変更を勝手にしてくれる。目の前の車との距離も計算して、減速する。ただ100%精度ではないので、危ないと思ったら、自分でハンドルする。気づかなかったが、これがすべてデータとして取られていたということになる
AIが実現する価値
AIが発揮している価値は、5つのパターンに集約できる
①売上増大:Amazonにおけるおすすめ商品
②コスト削減:AIによる作業自動化
③リスク・損失予測;異常発生を事前に検知
④UX向上:よりよい顧客体験の提供によりユーザー離脱を防ぐ
⑤R&D加速:老舗の企業で実験。
①売上増大の事例ゴングによるセールスコール効率向上
セールストークを分析して、売れるトーク、売れないトークを解析。
この人のセールストークは、この部分に問題があるなどのフィードバックが可能になる。
売れるトーク、売れないトークのデータがたまっていく、顧客に合わせた営業トークのスクリプトがどんどん緻密になり、ゴングの提案応力もさらに向上する
②コスト削減の事例
法律事務所や会計事務所の仕事のうち、データを収集・整理するタイプの仕事は、長い目で見ればAIに取って代わられる。それによってコストダウンが実現し、価格が下がっていく。
利用者増えれば、レビュー件数たまっていくるので、AIができる仕事の幅が広がっていくというループができる
自社のUnique Value Propoistion (UVP)を作る
・自分たちが戦っているドメインが手厚いフォローアップのJob matchingサイトならば、手厚さについては市場でNo1にならなければいけない、それが勝つということである
ユーザーに選ばれなければトップになれない
・「顧客に対してどのような価値を提供するのか」という視点を抜きに戦略は語れない
・他社にはない唯一無二の価値を提供するという意味で、これがUnique Value Propoistion となる
自社でループ構造を築かなければ、データはプラットフォーム企業に利用されるだけであり、ここができないからグローバル企業にずるずるやられてしまうのが今の日本かもしれない
勝ち続けるループを作っていく
・データがリアルタイムで入ってくる体制をいかに築くか、が大事であり、ループ構造をつくって、はじめてAI戦略は機能する
・普段のオペレーションの中で半ば自動的にデータを蓄積し、それによってAIをどんどん賢く育てていく必要がある
・どういうデータが必要か逆算して、最初からループありきで考えてオペレーションを作ることが有用である
・現在のAIに向いているのは、構造化データではなく、非構造化データ
・Deep Learningの発達により、とりあえずテキストデータを全部残したり、現場の様子をまるごと録画、録音し、そこから何を抽出するかは運用しながら考えればいい、状況に応じてどんどん変えていけばいいという発想が当たり前になっていく
おわりに
日本の産業はハーベストループで生まれ変わる
著者である尾原さんと堀田さんは、ここで今、AIをうまく利用できれば、日本の産業は大きく国際競争力を伸ばせる確信している。
日本がインターネット後進国へ転落していったが、AIには日本の既存産業を国際競争力へ転換するほどのポテンシャルが眠っていると考えている。
競争優位性を高め、ユーザーにとって、顧客にとって、なくてはならない存在になる。
そのために日々のオペレーションからどういう風にデータを溜め続け、プロセス改善を考え続けることをし、自社におけるハーベストループを作っていくことをやっていきたい