習近平、トランプの保護主義を牽制。中国の「多国間主義」にどう対抗するか
APEC(アジア太平洋経済協力会議)では石破首相が記念撮影にいないことが話題となってしまった。
事故渋滞が原因だとか。
トランプ次期大統領にも会えず、仕方ないと言えば仕方ないが、人事などを見ても石破内閣は長くない気がする。
参院選前に交代する確率、75%ぐらいかな。
それはさておき、気になったのは中国。
習近平が
「世界は新たな混乱と変化の時代に突入した。一国主義と保護主義が広がり、世界経済の分断が激化している」「さまざまな口実によって経済協力を妨げ、相互依存の世界を孤立させることに固執すれば、 歴史の流れを逆転させる」
なんて言ったそうだ。
次のG20では「多国間主義の守護者」と強調したとか。
これを受けて日本では
「トランプの保護主義のせいでグローバルサウスが中国に持っていかれる!」
なんて言われそうだ。
理解はできるのだが、私はあまり心配していない。
中国は今、不況である。
経済の落ち込みから社会不安が広がり、通り魔的事件が多発している。
市場としては依然として大きいが、経済成長にブレーキがかかり、中国も国内産業を守らなければならないはずだ。
中国がトランプの「保護主義」を牽制するのは、いわゆるグローバルサウス、自由と民主主義陣営、覇権主義陣営、どちらにも属さない「第三極」を取り込みたいからだろう。
中国はずいぶん前から「多国間主義」を掲げている。
「アメリカ帝国主義に反対し、中国は多国間主義を推進し、守護するのだ」
という感じのことをよく言っている。
アメリカは確かに独善的なところがあるが、帝国主義ではない。
これは国内向けの中国共産党の正当化プロパガンダと、グローバルサウス(第三極)へのアプローチである。
中国共産党の機関紙、人民日報(電子版の人民網)などを見ると、グローバルサウス(第三極)の国々の首脳と会っている写真や記事がデカデカと載っている。
このあたりからもグローバルサウスの取り込みを重視していることがわかる。
中国はアメリカのようになりたい。
かつてシナの王朝は東アジアの雄であった。
近隣国に朝貢させ「俺様が一番だ」と満足をしていた。
しかし、白人国家が世界を牛耳るようになり、シナは覇権国の地位を失った。
領地は西欧列強の食い物にされ、格下だったはずの日本にも負けた。
第二次世界大戦後、国共内戦を経て、中華人民共和国ができ、闘争に加え、社会主義の統制経済であるがゆえに経済は伸びずしばらく貧しいままだったが、鄧小平が改革開放路線に方向転換し、急激に伸びた。
中国は覇権国でありたいのだ。
それにはアメリカが邪魔であり、アメリカを弱らせるか、潰したい。
しかしまだアメリカに勝つほどの力はない。
ゆえにグローバルサウス(第三極)に目をつけ、外側からじわじわと中国の味方を増やし、勢力圏を広げたいのだ。
まだ先だが、最終的にはアメリカを押し潰したいはずだ。
ゆえにアメリカを批判するのがまずひとつ。
そして、中国の一番の貿易相手国はアメリカである。
アメリカは邪魔だが、経済的にはアメリカがないと困るのだ。
ゆえに、関税を上げるというトランプ次期大統領を牽制したのだろう。
トランプの保護主義は批判的に言われることが多いが、一番困るのは中国なのだ。
トランプの姿勢は保護主義的ではあるが、自由貿易を否定はしていない。
「自国の製造業を守る」と言っているだけで、鎖国するわけではない。
基本は自由貿易であるべきだと思うが、すべて自由にすれば良いというものではない。
途上国から安価なものを入れれば、国内産業は駆逐される。
安値競争はデフレスパイラル、負の循環となる。
これが日本がこの30年ほど、経済的に停滞した理由のひとつでもある。
人件費の安い外国から安易に物を入れ過ぎたのだ。
個人の話になってしまうが、私は製造業に従事していたことがあり、製造業は10年以上前から安価な外国メーカーとの価格競争に苦しんでいた。
業績は厳しく、当然、待遇も良くならない。
最近、激安のファストファッションを販売するシーイン、テムなどが話題となっているが、私は対策を打つべきだと思う。
消費者が安いものに飛びつくのは仕方のないことだが、長期的には国内メーカーが廃れ、日本経済にはマイナスであることは知っておいたほうが良い。
ちょっと逸れた。
中国の「多国間主義」にどう対抗するか。
日本には、安倍晋三さんが遺した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想」がある。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page25_001766.html
簡単に言えば「インド太平洋の自由と秩序を守りましょう」というもの。
誰だって戦争は起きてほしくない。独裁体制のもと、抑圧されるのも嫌だろう。
「自由と民主を重んじる国々で協力してやっていきましょうね」というような理念である。
ただお金をまくのはあまり賛成しないが、技術やノウハウなどで関係を深められそうだ。
特に技術は相手を依存させる、ではなく、発展に貢献することができる。
日本にとって重要なのは石油の供給路である中東から南アジア、東南アジア、台湾。
そして日米豪の間に点在する太平洋の島嶼国である。
これらの国々が中国に飲み込まれぬよう、米欧豪台などと協力し、味方までいかずとも、敵国が増えないようにする必要がある。
中国は間の抜けたところもあるが、したたかである。
現状勝てないことをわかったうえで、長期的な戦略を立てる。
過度に心配する必要はないと思うが、油断ならない相手である。
今は経済が悪く、外に割ける力は限られているはずだ。
こちらも力を蓄え、いつか来るかもしれない争乱に備えよう。