かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(5)
(マガジン『ギャグ説のロック史』)
ここまでTVKをべた褒めで書いてきたが、モノゴトはなんにしろ長所と短所がある。
弱小で小回りが利くということが武器の、TVKのいい点を採りあげていっていたが、それゆえに「劣っているなぁ」、「困ったなぁ」という部分だっていくつかあった。特に感じた2つを書いてみる。
まず、台風に弱かった。
これはテレビ神奈川だけでなく、UHF全般のことだから仕方ないが、とにかく天候によって画像が乱れた。台風だけでなく、雪でも。
こちらの建物のアンテナの設置具合かもしれないから、テレビ神奈川に劣っているというのは筋違いかもしれない。
それでも、一般のチャンネルは普通に映っているのにテレビ神奈川だけザアーッと乱れていると、「オンボロだなぁ」と、どうしても思ってしまう。
こちらは毎週観ているので、ビデオクリップは観られなくても構わない。チャートアクションだけが分かればいいのだ。
それで乱れた画面に張り付いて観るのだが、それを家族が許さない。「そんなもの観てると目が悪くなる」と言って消されてしまうのだ。
正論だ。しかし、ぼくの好きなアーティストはとにかく上位までいかない連中ばかりだったので、来週には圏外に消え去ってしまうかもしれないのだ。
熱心に観ている頃は、天候が荒れると、なにより、まずこのことを心配した。
あと、コマーシャル。
弱小ならではで、地元の企業の安っぽい作りのものだった。それも、何度も繰り返したりする。……いや、これはウソ。さすがに、大昔のテレビ東京みたいなことまではしなかった。
しかし、観ていてちょっと恥ずかしくなるような、内輪向けっぽいものはあった。自虐を突き詰めて、話題にさせようとしたのだろうか。
なんにせよ、カッコいいプロモーションビデオのあとにはまったく合わない。
時間を贅沢に使うといっても、到底全部の曲を流すわけにはいかない。自分の好きな曲がかかる率は、とても少ない(ように感じる)。それがようやくかかって、よろこびながらじっくり視聴する。大抵は曲が終わるとCMで、余韻に耽っていると、へんなコマーシャルが気分をぶち壊しにしてくれる。
そこにいくと『ベストヒットUSA』はブリヂストンのコマーシャルが洒落ていて、番組に沿ったものを流してくれる。コマーシャルにかかるBGMもそう。
アラン・パーソンズ・プロジェクトがBGMのものは、それ自体がプロモーションビデオかのような出来栄えだった。
アランパーソンズプロジェクトは凝ったプロモーションビデオを作りだすアーティストだが、そのお株を奪うような作品。曲に合っていて、美しく、CMなのにトイレに立つのがもったいなく感じて見入ってしまう。
大手スポンサーだから、できたことだろう。
以上、当時のTVKの短所を書いたが、しかし全体的には長所が短所を上回っていた。やっぱり長い時間をとれるということが、最も評価の高いところだ。
(つづく)