かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(3)
(マガジン『ギャグ説のロック史』)
「TVK」が『Billboard Top40』やりだした当時、テレビで洋楽チャートを本格的にやっていたところはなかった。ラジオはあったが、プロモーションビデオが主流になってくると、音だけではもの足りなくなった。
今思うと、よく弱小UHF局がbillboardを流せたものだ。まぁ裏事情など知らないが、とにかく、視覚から入るチャートがお茶の間に届いた。
メインのテレビ局(地上波)で、他にチャートものをやっている番組がなかった。
唯一、テレビ朝日で、『ベストヒットUSA』をやっていて、全米CashBoxのトップ20を伝えていた。
放送局からいって、それが当時、プロモーションビデオを流す洋楽チャートの、最も知られた番組だっただろう。
『ベストヒットUSA』は司会が小林克也さんで、なにより発音はすばらしいし、また、洋楽への愛を感じられ、声も話のテンポも聴きやすかった。
しかし残念ながら、番組がダメだった。放送時間が短く、45分。
そこにチャートだけでなく、ニューリリースや話題の曲、さらには来
日アーティストのインタビューまで詰め込む。はては、往年のヒット曲まで。
当然チャートは押され、20位から。また許せないのが、紹介する曲を端折るのだ。2番を抜かしたりする。物語風のプロモーションビデオなんかは、意味が分からなくなってしまう。
土曜の夜の放送とはいえ、深夜帯で、スポンサーも天下のブリヂストン。好景気時の車関係の会社。枠でも広げられなかったものか。
それと比べると、「TVK」さんはすごい! なんと夜のゴールデンタイムに1時間使って放送。たしか、最初は7時~8時だったと思う。
しかも、週中の4日間を使って。40位から21位までの日と、20位から1位までの日。そしてそれを再放送。それで4日間。
たしか火曜から金曜だったと記憶している。金曜など、そのあと深夜にぶっとおしでプロモーションビデオを流すのだ。空がうっすら明るくなる5時くらい、Orchestral Manoeuvres in the Dark のエンディング曲が流れるまで。
それにしても、こんなゴールデン枠に再放送番組を流す局もないものだ!
『Billboard Top40』ではインタビューはなしで、チャートだけに専念。来日アーティストのインタビューは、別枠で夕方の番組などでやるから大丈夫なのだ。
その当時、『ベストヒットUSA』が、チャチくてセコく感じたものだ。
テレビ局もスポンサーも大手で、動きが取れなかったのだろう。
弱小も貧乏も、ときには大きな武器になるものだ。
(つづく)