【全文無料】エッセイ『クリスマスにライクがほしい』ふくだりょうこ
今月のオンライン文芸誌「Sugomori」は特別号です。書き下ろしされたどの作品も無料で読むことができます。書き手はふくだりょうこさんです。クリスマスにまつわる、季節のエッセイをお届けします。
スケジュール帳を開いたら、クリスマスイブは関ジャニ∞のライブの予定が入っていたけど、クリスマスは空白だった。たぶん何かしら仕事が入るだろう、と思ってそのまま閉じた。今年の25日は土曜日。2022年の〆切ラッシュは24日になるのか、27日になるのか。……27日がいいなあ。
クリスマスの思い出。何かあるかな、とうんうん唸ってみる。
妹の話。サンタさんにシルバニアファミリーのおうちをお願いしたのに、マラカスが届いたので泣きながらマラカス鳴らしていたこととか。シャンシャンシャン。
クリスマスプレゼントが届かなかった年に祖母から「あんたが悪い子だからサンタさん来なかったんよ」と言われて、「そうか。悪い子なのか」と思ったりだとか。その年以降もサンタさんは一度も来ていないので、私はずっと悪い子のようだ。
以前付き合っていた人が友だちとディズニークリスマスを満喫していたこととか。お土産がクランチチョコだったとか。私の存在の薄さよ。おいしいけど、クランチチョコ。
さすがに夫とは何か思い出があるだろう、と振り返ってみたけれど、販売業だからクリスマスは仕事だった。だいたい26日の閉店間際のケーキ屋さんで値下げになったクリスマスケーキでもなんでもないケーキを食べるぐらい。あとチキンは食べてるな。
たぶん、これまでは女友達と過ごしていることのほうが圧倒的に多くて、終電まで飲んだくれていたのが楽しかった気がする。
今はそんなこともなかなかできないので、家でひとり飲むしかないのだけど。
クリスマスに大事な人と過ごさなきゃいけないって誰が決めたんだか。やれやれ。
唯一の楽しみと言えば、自分のへのクリスマスプレゼントを選ぶことだ。年末だし、1年がんばったご褒美にちょっとだけ奮発する。
今年は楽天で買おうかなって思ってる。こまごまとしたものをいろいろ。小さな段ボールがたくさん届いて、それを開けずに積み上げて。クリスマスに開けたらちょっと気分も盛り上がりそう。
年齢を重ねるにつれてそのうち物欲も消えゆくだろうから、これもいつまで続けられるか分からないけれど。
子どものころは生きているだけで楽しいことがたくさんあった。同じぐらい怖いことも、悲しいこともたくさんあった。
大人になると、怖いことは少し減って、悲しいことはたくさん増えて、楽しいことは消えていく。ライクは探しにいかないと手元にやってこない。
……ということに最近気がついたので、来年のクリスマスまではたくさんのライクを見つけよう。
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