柳田知雪『明日、誰かに言いたくなるような食べ物の話 ~ぶどう~ 』
隆宏はうだるような熱さの中を歩いていた。
行く先が陽炎に揺らいで見える。
こめかみに垂れる汗を拭けば、場所が悪く腕時計が擦れて痛かった。
クールビズとは言うものの、これだけ暑ければシャツは汗で張り付いて不快だし、ネクタイひとつでそう体感温度は変わらない。
目的地までの距離を頭の中で計算しつつ、隆宏は手の中にある段ボール箱へと視線を落とした。
岡山県産という文字の横に描かれた、ぶどうの絵。
絵の通り、箱の中にはパンパンに張った実の連なるぶどうも入っているのだが、今年はなんとマ