退屈さが及ぼす学習への影響
「退屈」という感情について考えたことはありますか?誰しもが一度は学校生活において講義を退屈だと感じたことはあるのではないでしょうか。瞼が重く、先生の声がはるか遠くから聞こえる。何度時計を確認しても一向に進んでいない気がする・・・。勉強そのものが退屈だ、と言い張る生徒も少なくはないと思いますが、実際に退屈という感情は何が原因で引き起こされ、学習にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
キーテーマ
退屈・学習・授業
結論
学習に対する自己制御感・自律感と、退屈感の間には負の相関性が見られる。
⇒生徒が自身の学習をコントロールできているという感覚が高いほど、退屈だと感じにくい。
生徒が学習に対して感じる価値と、退屈感の間には負の相関性が見られる。
⇒生徒が勉強している内容に対して価値を感じているほど、退屈だと感じにくい。
退屈感とモチベーションの間には負の相関性が見られる。
⇒退屈感を感じている生徒は、モチベーションが下がっていると予想される。
退屈感と学習パフォーマンスの間には負の相関性が見られる。
実験デザイン
読みやすさのために、実験内容を要約しています。
とある心理学の授業を受講する、カナダの大学1年生287人を対象に8カ月(2学期間)にわたって以下の項目の調査を行った。
①生徒が授業内の学習に対して自律感を感じる程度:アンケートにより調査。授業が始まって1カ月が経過したタイミングで測定された。
質問例:「授業に向けて勉強するにあたって自分でゴールを設定できていると感じる」「勉強の進捗を自分で管理できていると感じる」等。
②生徒が授業内容に関して感じている価値の程度:アンケートにより調査。授業が始まって1カ月が経過したタイミングで測定された。
質問例:「この授業で良い成績を取ることは私にとって大切だ」「授業で扱っている内容に個人的に関心がある」等。
③生徒が授業に対して感じる退屈感の程度:アンケートにより調査。授業が始まって4カ月(1学期終了時点)のタイミングで測定された。
質問例:「授業内容がつまらないと感じる」「扱っている教材の内容に関心を持てない」等。
④学習成果:調査期間終了時点における授業の成績により測定。
結果、③(退屈感)は①(自律感)・②(価値)・④(成績)の三項目すべてと負の相関性が見られた。
この実験を含め、合計5つの実験が本論文では紹介されており、いずれも同様の傾向が見られた。
留意点
相関性を示した研究であり、退屈感⇒学習効果低下の厳密な因果関係を証明するものではありません。
成績を除いた項目はすべてアンケートによる調査だったので、生徒の主観の影響を受けた可能性があります。
エビデンスレベル:観察研究
まとめ
生徒が授業に価値を見出し、自律感を持てていると退屈に感じにくいと予想される。
生徒の退屈感と学習効果は負の相関関係にある。
編集後記
生徒の自律感を高めることと、授業内容に関して価値を感じることの必要性がわかる研究ですね。
文責:山根 寛
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過去記事のまとめはこちら
Pekrun, R., Goetz, T., Daniels, L. M., Stupnisky, R. H., & Perry, R. P. (2010). Boredom in achievement settings: Exploring control–value antecedents and performance outcomes of a neglected emotion. Journal of Educational Psychology, 102(3), 531–549. https://doi.org/10.1037/a0019243
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