見出し画像

赤ちゃんがなぜ泣いているのかAIは見抜けるか?

生まれたての赤ちゃんは本当にふわふわして小さくて可愛いですよね。ただ同時に、触ると壊れてしまいそう、ちょっとでも目を離したら死んでしまいそうな恐ろしさがあります。特に初めて子どものお世話をする保護者は昼も夜も戦闘モード。出産した女性や積極的に新生児のお世話をしている保護者は脳が変性することがわかっています。(参考:父親がどれだけ育児に参加しているかは脳をスキャンすればわかる)脳が変性した保護者にとって赤ちゃんの泣き声はサイレンのようなもの。なんとかしてあげなくちゃと強く感じるわけですが、赤ちゃんは喋れないのでなぜ泣いているのかを見抜くのは大変です。多くの人はまずオムツをチェックしてミルクをあげてみてと診断的に処置をすると思いますが、この時「なぜ泣いているのか」が見抜けたらすごく楽になると思いませんか?今回は赤ちゃんの泣き声に関する研究のご紹介です。

結論

・新生児の泣き声を読み解こうとする研究は1960年代頃から始まった(Wasz–Hockert研究グループがベテラン看護師に赤ちゃんの泣き声を4つに分類させた)

・新生児の泣き声は人種や言語に関わらず、一定のパターンがあるという仮説が存在する

例:Dunstan Baby Language

ねぇ〜 =  おなかすいたよー
えぇ〜 =  ゲップがしたいよー
えぁ〜 =  おならかうんちがしたいよー
へぇ〜 =  体が不快(暑い、寒い、濡れている)だよー
おぁ〜 =  ねむたいよー

・医学的な正確性については2021年時点でまだ研究段階だが、赤ちゃんの泣き声データをAIを使って分類する研究が進んでいる

・ある実験では、赤ちゃんの泣き声の分類トレーニングを受けた人間の正解率は33.09%だったが、AIは80.56%だった

エビデンスレベル:文献レビュー

編集後記

どうやら赤ちゃんの泣き声にはパターンがあり、それは人種や言語は関係ないというのは非常に興味深いですね。後天的に習うわけではなく人間の本能としての言葉が存在する訳です。言われてみれば笑顔や泣き顔など表情も全世界共通ですし、私が思っているよりも人間の非言語の感情表現は雄弁なのかもしれません。

ところで今回の論文は、教育系ではなく、信号処理学会誌に掲載された論文です。新生児の泣き声研究は50年以上前から存在するのにデータの取得や分類に手間がかかるためか、まだ化学的に堅牢な「赤ちゃんの泣き声判定機」はできていないようです。音声データの分類は機械学習の得意とするところ。音声データさえあればプロトタイプは簡単に作れますし、助かる保護者がたくさんいると思うので研究が早く進むといいですね。

追記

論文に赤ちゃんの鳴き声のデータベースのリンクがあったので試しに私も簡易的な「赤ちゃんが泣いているのを見抜くAI」を作ってみました。テスト用に学習させずに取っておいたデータで試したところ、結果の揺れ動きが激しいのでまだまだ実践に使えそうにはありませんが、データの質が上がればもっと精度が上がるかもしれません。下記のリンクから使えるので興味のある方はよかったら試してみてください。
(リンクを開いてマイク入力をオンにして赤ちゃんの泣き声(録音やYouTubeなどでもOK)を聞かせてみてください)
https://teachablemachine.withgoogle.com/models/kAEe7CkMu/

参考文献

Ji, C., Mudiyanselage, T. B., Gao, Y., & Pan, Y. (2021). A review of infant cry analysis and classification. EURASIP Journal on Audio, Speech, and Music Processing, 2021

文責 識名由佳

いいなと思ったら応援しよう!