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中学受験、入塾テストは実際どの程度の難しさ?

はじめまして、杉浦由美子と申します。教育を中心に取材をしている若くない記者です。塾選びの季節ですので、入塾テストについて書いていきたいと思います。

私の実家は2代にわたって塾を経営しています。塾は生徒さんやその保護者さんを支えるのが仕事だと思っています。それなのに塾選びを失敗して、苦戦をするご家庭も多いです。それはあってはいけないことだと思うため、正しい塾選びの参考になる情報をお伝えしようと思ってnoteを始めました。
今回は中学受験塾の入塾テストについてお伝えします。

 秋から1月にかけては本格的な塾選びの季節になります。3年生の2月から中学受験の塾通いが始まるからです。そこで気になるのが「入塾テストって難しいの?」ということではないでしょうか。
 そこで入塾テストのハードルについてご説明をします。

 「SAPIXは入室テストでセレクションをしているから合格実績がいい」「SAPIXの入室テストは難しいから、個別指導塾に通って準備している家庭もあるそう」こんな噂話をよく耳にしますね、
 しかし、実際、SAPIXの入室テストはどのような難易度なのでしょうか。拙著『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)の中で、SAPIXの広野雅明教育事業本部長はこうコメントしています。「8割、9割は合格します」

 基本的な日本語の読み書きや四則計算ができれば合格できるテストなのです。
 ただ、慣れないテストを受けるので調子が出なくて不合格になってしまうケースは多々あります。開成に合格した子も実は一回目の入室テストは残念だったという話もあるぐらいです。
 また、何度も入室テストを受験しても合格しないのは、海外在住歴が長いなどの理由で日本語の基礎的な読み書きの習得が遅れている場合なので、まずは公文式などで基礎を固めた方がいいでしょう。
 
 そうなんです。SAPIXの入室テスト自体は難しくないのです。
 SAPIXの2023年の合格実績を見ても、6436名のうち、男子御三家合格者は開成(偏差値71)262名、麻布(66)が182名、武蔵(65)が59名。女子御三家は桜蔭(71)が189名、雙葉(67)が45名、女子学院(69)が131名。合計868名です。つまり御三家に合格するのは全体の13%程度なのです(もちろん、それも素晴らしいことですが)。ほかのある大手塾はSAPIXより生徒数はずっと多いのに桜蔭の合格が2名ですからね。

 一方、SAPIXは中堅校の合格数も多く、男子校の東京都市大学付属(54)は333名。女子校の普連土(50)は118名。中堅校を目指す生徒もたくさん通っていて、幅広い学力層がいます。
※偏差値はすべて四谷大塚の偏差値(2024年10月・Aライン80偏差値 2月1日受験)

 さて、ほかの四大塾の入塾テストについても触れていきましょう。大手塾でもっとも入塾テストのハードルが高いのは四谷大塚です。全国統一小学生テストが入塾テストの代わりにもなりますが、このテストで偏差値50以上が目安とされています。
 理由としては、四谷大塚のテキスト「予習シリーズ」は偏差値50前後の中堅校以上を狙う層を対象にしていると推測されるからです。一定以上の学力がないとこのテキストを使いこなせないから、ハードルを設けます。

 ですが、入塾テストに不合格でも、希望すれば四谷大塚は合格するまでフォローしてくれます。面談の時に「どこがウィークポイントなのか」をアドバイスしてくれたり、課題プリントを渡してくれたりします。
 ちなみに全国統一小学生テストを受けないで、塾で入塾テストを受ける場合、早稲田アカデミーは入塾のハードルは緩やかになるようです。
 基本的に大手塾は幅広い学力層を受け入れるので、入塾テストのハードルはそうは高くありません。

 反対に入塾のハードルが高いのは私が知るかぎりは以下です。
 フォトン算数クラブ。2年生から中学受験の算数を学ぶ塾です。定員の4倍ぐらいの応募があるため、そうなっていきます。厳選した講師が少数制で授業をするので受かったら通ってみたい塾です。

 4教科の塾では栄光ゼミナールが運営する難関校対策の塾です。
 筑駒・御三家・駒東対策の塾、Z会エクタス。桜蔭・女子学院対策の栄光ゼミナール中野校・最難関女子中学受験専門館。これらの塾の授業も見学しましたが、非常にレベルが高く、学力が高くないとついていけないため、入塾のハードルは高くなります。

 最難関女子中学受験専門館は栄光ゼミナール内の優秀な女性講師が集められていて、女子が安心して桜蔭や女子学院を目指せる環境です。
 ちなみに4年生から5年生にあがるのに進級テストがありそれに合格しないと進級できません。2割ぐらいが残念ながら進級できないようです。これらの塾の授業を見学しましたが、「ええっ?!これが3年生の授業?!」と驚くぐらいレベルが高かったです。一般的な塾だと3年生で時計の読み方を勉強しているのに、これらの難関校対策の塾では場合の数を学んでいることも。
 また、早稲田アカデミーの思考力特化の塾、SPICAは自由が丘にあり、難関校対策が中心なのでやはり入塾はハードルが難しいです。SPICAはほかの塾と併行して通う生徒も多いです。難関校を狙う生徒たちが思考力を鍛えにくるわけです。
 
 つまり、一部の難関校特化塾でない限りはそうはハードルは高くありません。
 反対にいうと、塾側が選抜をしないので、保護者が自分たち家庭やお子さんに合う塾を見極める必要があります。次回以降に具体的に「どの学校を受けるならどの塾がいいか」といった「相場観」についても説明していきますね。それでは入塾テストを受験する生徒さんは頑張ってください!

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