超短編小説「非道な世界」
お菓子に付いているオマケは、必要のない人にとってはゴミだ。
この世界に生きている僕も、必要がないのならゴミなのだろう。
歳も40に近くなると仕事がなくなる。
フリーターならアルバイトすらなくなる。
その崖すれすれの今際の際を歩いているのが僕だ。
若者たちがどんどんアルバイトで入ってくる。
シフトにはもちろん限りがあるから、削られていくのはおじさんの僕。
「この世界は非道だ。優しさなんてこれっぽっちもない」
来週のシフトを見て絶望する。
食っていけない。アルバイトだけで生計を立てているのだから。
コンビニで取ってきた求人情報誌を広げる。
だけど、40近いおじさんが働ける職場なんてない。
優生の原理。どれだけ否定しても、この世は優生の原理が働いている。
ついに崖から転げ落ちる時が来たな。
でも、その前に夜風を浴びに行こう。
僕はそう思って、アパートの自室から跳び出した。
奇跡なんて起きない。
救いもない。
ほかに稼ぐ口もない。
次に車が向かってきたら飛び出して死のうか。
そう思っていたら車が走ってくる。
そして、僕の横を通り過ぎた。
結局、死ぬこともできない。
コンビニでコーヒーを買って夜風を顔に感じながら帰路につく。
「なんとか、なるだろ」
奇跡も救いもない非道なこの世界。
でも、死ねないのだから生きるしかない。
僕は、狭いアパートの部屋で求人アプリをタップした。
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