超短編小説「僕が出した答え」
死んでも喜ばれるだけで、誰も悲しまない。
だから、僕は生きている節がある。
僕の不幸は中学時代からだ。そして、その不幸が37歳になっても続いている。
病気、貧困、差別、いじめ。
これくらいの不幸が、ざっと20年間続いている。
僕は今、浴槽の中でシャワーを浴びながらリスカ直前なのだが、刃が錆びていることに気付いて、カッターを放り投げ、いつものように思う。
「生かすか殺すか、どっちなんだよ」
生かさず殺さずの苦しさを20年間受けているのだが、その意味はなんなのだろうか。そう自分に問うと、返ってくる答えはいつも一緒。
「意味などないんだろうな。ただの遊び」
どういった存在の遊びなのかという疑問は放っておいて、身体も拭かずに部屋に入り、僕はベッドの上にあぐらを掻いた。
そして、アパートの部屋で独り、涙を流すことなどなく、狂ったように叫び倒す。
近所の人は、
「いつもの始まったよ」
と思う程度だろう、たぶん。
鼻水が垂れてくる頃に、やっと正気に戻って、僕はパラレルワールドの自分の人生を想像する。
その人生は狂ったように笑い倒し、幸せだけの生涯。
休日の唯一の楽しみが、こうやって夢想すること。
突然、チャイムが鳴って、イライラしながらドアスコープから確認する。
あれ、可愛い女の子じゃん。
でも、真っ裸だからドア越しに対応するしかない。
「どちら様ですか?」
僕が訊くと、
「うるさいので静かにしてもらえますか。警察に通報しますよ」
なんてことを可愛い顔で言いやがる。
「分かりました。すいません」
少しばかり期待した僕が馬鹿だった。
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