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【オススメ本】清水義次監修『まんが あなたもできる公民連携のまちづくり』よしもとブックス、2021

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公民連携の成功事例(モデル)としておそらく最も取り上げられる岩手県紫波町のオガール(プロジェクト)。この事例を取り上げた書は多いが、まんがとして取り上げたのは本書が初めてではなかっただろうか。

具体的には、キーパーソンである株式会社オガール代表取締役の岡崎正信さんや岡崎さんと一緒に大学院で学んだ紫波町企画課長の鎌田千市さん、藤原孝元町長などがまんがで登場する。この分かりやすさが本書の最大の武器があろう。

しかし、実際は章ごとにまんがだけでなく、解説が数ページずつあるので「ハイブリット」な仕上がりとなっており、この辺りが読みごたえに繋がっている。

本書の最大のメッセージは「パブリック・マインド」にあると思われるが、筆者としては、以下の3点にエッセンスは集約されていると感じた次第である。

・志ある人が土地にいて、その志を実行に移す機運が高まれば、ものごとは動き出します。あとはそうした人や行動をきっかけとして、よりよい地域を自分たちで作り営もうという公共の精神、パブリック・マインドをどれだけ広められるかどうか。それで全てが決まります(p.88-89)

・まちづくりには、次のような順序が大切です。まず理想とする暮らしの姿を描くこと。それから、その暮らしを支えるための暮らしを支えるのためのソフトたる、持続性のある町のあり方を計画する。そのうえで、必要十分なハード、施設を作る。この順番を徹底して守らないといけません。さらには、まちづくりを事業として見た場合、土地の価値を高めることが重要なのは言うまでもない。そのためには、そこで展開される人の暮らしが生き生きしていることが必須です(p.119-120)。

・パブリック・マインドを持った住民が地域を作ってきた例は、歴史を遡れば、日本に古くからいくらでもあリます(p.123-124)。

つまりは、ビスマルクの言葉ではないが「賢者は歴史に学ぶ」を徹底し、公民問わず、いや、むしろ公民それぞれから志やパブリック・マインドを持った人を集め、信じ、任せる。これが公民連携のまちづくりの要諦と言えそうである。

そして、本書を読むと監修にも関わっておられる東洋大学の清水義次先生のような「学」との存在も本事例には必要不可欠なピースであることを思い知らされる。

その意味では、本書のタイトルは「公民連携」となっているが、実際あるいは本質は「公民学連携」というのが正確な表現だと感じる、そんな一冊(事例)であった。

(参考1)目次

・第一章 東北に現れた「オガールという桃源郷」
・第二章 公民連携のモデルケースはこうして動き出した
・第三章 オガールはなぜ公民連携の「鑑」としてなり得たか
・第四章 公民連携を支えるパブリック・マインドとは
・第五章 あなたもできる 公民連携の第一歩

(参考2)出版サイト

https://books.yoshimoto.co.jp/new/post-126.html

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