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希望を持って応援し続けたい:今年のフロンターレのビルドアップ分析

 3/17から海外出張のため、その日に開催されたアウェイ鹿島戦は全くみられてないのですが(DAZNは海外から見られないので)、Xを見る限りつらい試合だったようですね。

 そんなときではありますが、先日の京都サンガ戦でのビルドアップを細かく見てみようと思います。今年のフロンターレは見ていて楽しいと思える理由が凝縮されているので。

4-1-2-3→3-2-5可変フォーメーションを試みている今年のフロンターレ

 フロンターレ、ここ何試合かの特徴は、4-1-2-3を基本フォーメーションとしつつ、ビルドアップ時には右サイドバックが中に絞ってボランチポジションを取り、3-2-5の形でパスをつないでいくことです。
 当初は右サイドバックには佐々木が入ってましたが、サンガ戦からは橘田が入っています。

 私は、この形で行く限り、右サイドバックは橘田の方がいいという印象を持ちました。ボランチポジションでのボールさばきはさすがの本職ですし、ボールロストした直後のネガティブトランジションの局面でもボール奪取能力の高さが効いてます。
 ただ、サイドバックとしての対人能力にはやや不安があるのか、センターバックがサイドにつり出される局面もありますが、これはトレードオフですね。

サンガ戦16分、ゴールキックから

 さて、本題のビルドアップです。

 まずはサンガ戦の16分、ゴールキックからのビルドアップです。
 このとき、フロンターレは両センターバックがゴールエリア付近でキーパーを挟み込むように立ってました。下の図は、このときに通常の4-1-2-3だった場合のポジショニングのイメージです。サンガも4-3-3ですからキーパーと二人のセンターバックに一人ずつマークが付きます。

通常の4-1-2-3でのビルドアップのイメージ

 この場合、中央で最終ラインからのパスを受けられるのはアンカーの山本だけ。なのでサンガは、山本へのパスコースをセンターフォワードが塞ぎながら、かつサイドバックへのパスコースを両ウイングが牽制するいわゆる外切りプレスをかけることで、フロンターレはパスコースがなくなってロングキックを蹴るしかなくなってしまいます。

 ところが、この16分の場面では橘田はサイドバックのポジションではなく、中に絞ってボランチポジションに立ちました。

橘田が中に絞って3-2-5に

 こうなると、丸山のパスを受けた上福元には、山本と橘田の2つのパスコースが生まれます。そのため、サンガのセンターフォワードは一人ではパスコースを消しきれません。パスコースが2つあるからです。そして実際、上福元は橘田にパスを通しました。

プレスを引きつけて上福元は橘田にパス

 これによってフロンターレはサンガの1列目のプレスをかわしました。そしてサンガは、2列目の二人が橘田へのプレスに向かいます。この瞬間、フロンターレから見た左のサイドに大きなスペースが生まれます。

橘田かボランチに入ったことで中盤にスペース

 そこで橘田は山なりのパスを左サイドバックの三浦に通そうとしました。これは三浦に通っていたら、広いスペースでの一対一になっていました。三浦のドリブル能力を考えると大きなチャンスにつながっていた可能性は高いです。
 残念ながらパスが長すぎてタッチラインを割ってしまいましたが、3-2-5可変の可能性を感じる試みではありました。

残念ながらパスが長すぎたが

24分、山本をフリーにして

 次は24分です。
 流れの中でキーパーの上福元にボールを戻したところから。
 この時の配置が↓です。丸山に豊川がマークに付き、平賀は橘田へのパスコースをケアしながら上福元にプレスに行っている状況。この時、山本と大南がフリーです。山本は橘田のおかげでフリーになってます。

24分のビルドアップの初期配置

 そこで上福元は山本にパス。後ろ向きですが、周りにはスペースがありました。

上福元から山本へのパス

 山本はパスではなく素早くターンして前向きに。ドリブルでボールを運びます。サンガは金子が山本を止めに上がってきます。

 実はサンガの金子の背後には左インサイドハーフの瀬古が付いてきてました。山本は瀬古とパス交換、金子の足を止め、上がってきた左サイドバックの三浦にパスします。
 この瞬間、三浦の前は無人。ドリブルでそのまま攻めこんでフロンターレのチャンスになりました。

山本と瀬古のパス交換から三浦へ(ボールが変なところに書いてありますが間違いです。無視してください)


ビルドアップは良い。攻撃全体のデザインの中で生かし切れているかが論点

 このように、サンガ戦の前半では、3-2-5への変化をうまく使ってチャンスを作り出せていました。この意味で、右サイドバックに橘田を起用したのは有効だったと言えます。
 また、上の図でも明らかな通り、ビルドアップ時にダブルボランチになっていることで、瀬古と脇坂という二人のインサイドハーフが高いポジションを取れていることもメリットです。

 変化しない去年の4-1-2-3では、インサイドハーフがボランチポジションに下がってしまうことで、前線に人数が足りない現象が起こっていたことを考えれば、今年の方が攻撃に希望が持てるとさえ言えます。

 問題はインサイドハーフが高い位置にいることを生かし切れているかということでしょうか。
 押し込んでからショートパスで崩していくのがフロンターレのスタイルですが、各チームとも有効な対抗策を見いだしているように思えます。
 特にゴールエリアの幅に人数を集め、その脇のポケットを突かれたときは中を締めて外にボールホルダーを押し出していくという対応が定式化しているようで、ベルマーレ戦でもサンガ戦でもこの形のディフェンスが散見されました。ここがポゼッション率の割にシュート数が少ない今年の傾向の原因になっているように感じます。

 フロンターレはあまり使いませんが、3-2-5で前線に人数を多めに置くなら、アーリークロスでキーパーと最終ラインの間を狙う試みをもっと増やしてもいいのではないでしょうか。

 いずれにせよ、去年とは違うことを試みている今年のサッカー。私は支持します。勇気を持って続けていってほしいと思います。



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