2024ファジアーノ岡山にフォーカス15『 ≫≫強さを示した引き分け~首尾(守備)~≪≪ 』J2 第7節(A)vs大分トリニータ
1、連戦の戦い方~伸張(慎重)~
両チームとも連戦を意識したメンバーを起用してきた。特に岡山は、8番 ガブリエル・シャビエル 選手のスタメンでの抜擢を見送った上で、少しでも違和感があれば、大胆にメンバーを代えるが、ベースの部分に大きな変更がないのが岡山である。
連戦の始めということで、連戦終わりの前節での変更点には深く言及はしないが、25番 吉尾 虹樹 選手と16番 河野 諒祐 選手が、同時にリザーブ入りしていたが、これは恐らくこの試合の交代を見ても25番 吉尾 虹樹 選手の左WBでの起用にGOサインが出たことによる部分と、この試合で組む上でのギリギリのラインなんだと感じました。
少し離脱者の影がチラつくメンバーであったので、正直に言えば少し気がかりであったが、8番 ガブリエル・シャビエル 選手が控えているのでなんとかなるだろうと楽観的に捉えていたが、現実は厳しく難しいゲームになってしまった。
一方で、大分もまた29番 宇津元 伸弥 選手の変更に留めた感じで、いつも通りのメンバーで、岡山を迎え撃つ。ただ、展開しているサッカーは、岡山対策をしっかりしていたことを感じられたので、そこに関しては、後述予定である。
岡山のメンバーにアクシデントがあっとは思うが、岡山の首位を維持して、リードを広げるという「伸張」を狙う「頂」へ目指す(全部勝つという強い)覚悟を感じられるが、大きくならず、「慎重」に期したメンバーでもあった。
その両チームの試合を振り返っていく。
2、岡山のプレスへの大分の解答~大言(体現)~
岡山は、やはり大分のポゼッションを制限するために、ハイプレスをしっかりかけていくということを準備していた。8番 ガブリエル・シャビエル 選手のスタメン起用ではなく、10番 田中 雄大 選手と27番 木村 太哉 選手を起用したのではないかと思うが、その言葉通りしっかりプレスをかけていく。
立ち上がりの時間が落ち着くと流石に繋いで来ると思っていたが、大分は、それでも長めのパスを選択することに躊躇いはなかった。しかもサイドチェンジをメインとしたロングパスで、岡山の圧縮して奪いにいくという守り方に対して、逆サイドを徹底して狙ってきていた。
いわきFC戦でも、そこに走りこんで来る選手を1対1で抑えることが必要となっていたが、そうしたシーンがこの試合でも多く見られた。ポゼッションサッカーができるだけのチームにこれをされるといわきFCとは違った対応の難しさが迫られる。
それでも今季の岡山の左右のCB対人守備の強さが目立つ。この試合の左CBは15番 本山 遥 選手だが、レフティーではないもののビルドアップでも安定感があり、守備でも43番 鈴木 喜丈 選手と同じようにしっかり対応することができていた。4番 阿部 海大 選手のプレーはやはり頼もしかったですし、今季の岡山において、左右のCBでしっかり守ることができるかどうかは、ハイラインと圧縮の裏を守る上で、必要不可欠であると改めて感じられる。
この試合でも再三にわたって、大分の左右のサイドからサイドチェンジを交えて攻撃が見られたが、左右のWBと連動して守ることができたので、崩されるまで至らなかった。また、大分が2トップということで、18番 田上 大地 選手の前にスペースがあったことで、持ち上がることができた。
少し怖い面こそあったが、そこでプレスを引き付けて、空いたスペースを使うことで、自分たちの時間をしっかりつくることができた。こういった自由な動きを見せたのは、18番 田上 大地 選手だけではなく、44番 仙波 大志 選手も最終ラインに降りての高質のフィードを放っ多と思えば、中盤でゲームメークしたり、前線のフォローに顔を出すこともあった。更にCKでアシストこそできなかったが、惜しいシーンは作ることができた。
ただ、流れの中で大分が譲らない戦いができていた大きな理由として、93番 長沢 駿 選手が、ピッチを攻守で縦横自在にプレーできていたからだ。得点を決めるというよりは、ポストプレーで形を作ることが主な役割だが、サイドチェンジに対応するために適切なポジショニングを取ることで、多くのシーンでその役割ができた。
そのため、岡山が、クリアしてセカンドボールを回収してという得意な形を作れず、その後の形を作られるということで、バイタルエリアでのファールもいつもと比べて多かった。岡山としては、そこで抑えてしまいたい所ではあるが、なかなか難しく、岡山が流れの中で攻めるという時間への影響はあったことは間違いない。
岡山の99番 ルカオ 選手も左右のスペースの突破を図るもやはり受けるという面では物足りない側面がある。同じように動くとしても93番 長沢 駿 選手のように背負って形を作ることで、しっかり自分たちの形や時間を作る。攻撃は失敗しても岡山がボールを持ちたい時にファーストディフェンスを仕掛ける。93番 長沢 駿 選手が、何人いるのか?と、感じるぐらいの存在感であった。
こうしたポイントがあった前半であったが、繋いで運ぶということに大分が固執しなかったことで、大分もしっかり守備ブロックを構築して攻めるという慎重な戦い方を採用していたのも岡山のここまでの失点が2失点であるということも関係していることは間違いないですし、その2失点の内容を考えても、水戸や群馬のようにGKを変更してまで、自分達の時間を確保する術を確保して、1点差勝負を理解した戦い方を採用している。
そうした試合でも勝利して来た岡山の木山 隆之 監督は、試合後に公式コメントでは、省略されていたが、ダゾーンのインタビューで、「11人であれば勝てる自信がある」という一見「大言」と聞こえる内容を語っていたが、5勝2分という2分は、退場者が出た試合であり、内容でも結果でもその強さを「体現」できている。
次節にホームで迎える岡山が、それを内容と結果で「体現」できるのか。「大言」ではないことを問われることとなるだろう。さて、後半を語る前に退場者が出た事を流れの中で語ったが、その後半について語っていこうと思う。
3、際立ったメンタリティ~浮動(不動)~
後半開始早々に、88番 柳 貴博 選手が、DOGSO(*1)で、退場となったが、88番 柳 育崇 選手は、動じる様子もなく、静かにピッチを後にした。チームとしても状況が状況なので、過度に抗議することもなく、他の選手も非常に冷静であった。いわきFC戦の時は、本人を含めて、浮き足だった様子もあったが、あれから実に5試合目の試合。あの経験とその後の成績から岡山に焦りはなかった。
実際に、その後の内容を見てもボール保持ができる大分に対して、5連勝への未練を感じさせない戦い方ができていた。引き分けでも問題ないという意識を共有できていた。木山 隆之 監督の試合後のDAZNのコメントでも語っていたが、「点を狙えるなら狙ってという感じで、守備をまずはしっかりしよう」という趣旨のコメントを語っていた。
理想はやはり2トップだけで攻めるという形が理想ではあったが、実質1トップの形になっていた。右WBに控えに入っていた16番 河野 諒祐 選手を入れて、5バック気味にした上で、中盤の人数を確保するために、8番 ガブリエル・シャビエル 選手を右SH(WB・CH)な感じのポジショニングをすることで、サイドからクロスを入れさせないという事を徹底していた。
チャンスがあればという話ではあったが、実質99番 ルカオ 選手が、フィジカルで形を作って、単騎突破で形を作るという狙いではあったと思うが、9番 グレイソン 選手がプレーしていた時と比べて、後方の上がりを待つようなプレーは得意ではないので、ボールに触れそうな、突破できそうなといった形こそ作ることこそできていたが、チームとしての形はほぼ作れなかった。
この辺り1人少ない時のチームデザインとして、99番 ルカオ 選手が、単騎突破に成功して、形が作れたとして中に高さがないという状況が散見された。中に飛び込んだ選手が、25番 吉尾 虹樹 選手や8番 ガブリエル・シャビエル 選手、44番 仙波 大志 選手では、流石にクロスに合わせることは難しい。
攻撃に少し期待していた部分があったが、1人少ない状態で、シュートをほぼ打てない状況に追い込まれていたが、99番 ルカオ 選手への警戒はかなり強く、99番 ルカオ 選手が、4選手に囲まれるような状況もあった。チームとして攻撃は形として成り立っていなかったが、大分の攻勢を抑える効果は、それなりにあったと言えそうだ。
一方で、守備は大分の横の揺さぶりに対して粘り強く対応できていた。一度だけ剥がされて崩されたが、16番 河野 諒祐 選手が、体を投げ出してブロックして防ぐことができた。ある程度、個で対応できていたので、大分としては形を作る必要があったが、最後の攻めてを見つけることができなかった。
岡山は、守れてはいたが、守備に奔走することとなってしまい勝ち点1を手にすることこそできたが、1人少ない時間が長かったことで、選手の疲労のダメージは残る可能性が高い。その辺り、どうコンディションを整えることができるかが、重要になりそうだ。
また、この試合の大分のように、サイドを大きく変える展開で、斜めに裏を突くような攻撃の形で、岡山の守備がそこで対応を誤ることが多く、セットプレーの流れからとはいえ、チームとしてのハイラインの裏や圧縮スペースした逆サイドのスペースというのは、今後も狙われることになるのではないかと思う。
ただ、チームとしてファーストディフェンスが間に合っているうえに、中央から繋がれてスルーパスという形で崩されたこともないので、完全にフリーとなるケースは少なく、完全にフリーになったシーンも2度とも退場していることからも近くに岡山の選手がいる状況である。この試合でも1人多い大分が攻めあぐねた理由としても、繰り返しになるが、中央がしっかりした上で、左右のCBが強く守れているだけではなく、左右のWBの守備もしっかり効いていたからで、今季の岡山の守備は、とても信頼できると感じた。
それでも88番 柳 貴博 選手が、退場することとなった。大分の選手のカウンターは見事であったが、岡山もまた慌てることなく、引き分けでも止む無しという戦い方をしっかり共有して戦えた事は、守備により手応えを感じた試合となったはずである。
いわきFC戦では、「浮動」とも言える状態に陥った岡山であったが、「不動」という戦い方である「不動如岡山:動かざること岡山の如し」ができたんじゃないかと思います。
4、磨いてきたスタイル~研鑽(県産)~
大分が、岡山対策として、サイドチェンジの意識がより高くなったことに関して、岡山のプレスで厳しく来るという判断のもとで、岡山対策でなく、普段のスタイルの系譜の1つといえるかもしれない。
いわきFC戦では、岡山の堅守の綻びに強風の影響があったとはいえ、圧倒的スピードによって突かれて、大分戦では、正確な裏へのパスを通されてしまったことで、一気に抜かれた。そこを狙う意識とそこに出せる技術。これは、やはり大分の強さである。
運が悪く岡山に退場者が出たのではなく、大分が強いからこそ、岡山に退場者が出たことに変わりない。結果的には、スコアレスドローという事で、岡山にとっては、最高の結果ではないですし、ダメージの残る勝ち点1になってしまった事で痛い引き分けでった。それでも大分にとっても勝ちたかった試合であったことは間違いない。
試合後に、片野坂 知宏 監督も試合後に「岡山さんの守備が堅かった」と語っており、勝ち点3に出来なかった悔しさを感じられた。ただ、岡山は、この試合を含めた7試合で、2失点と抜群の安定感を誇っており、そこに対して、1人退場者を出させて、勝ち点3を取りに行くというサッカーがやり切れなかったものの、次節以降に繋がるという手応えを感じたじゃないかと思います。
岡山が1人少なくなってからは、しっかりパスを繋いで、サイドチェンジを交えつつ、岡山の綻びを探るという強かなサッカーができる大分の我慢強い攻めというのは、強いチームのサッカーであるが、最後の所は、現状1位である岡山が、そこだけは許さなかったという試合であったと言えると思います。
大分県を代表するクラブとして自分達のスタイルを確立できていてそこを「研鑽」してきた大分と、岡山を代表するクラブとして自分達のスタイルを構築する「県産」といえる岡山県のスタイルを確立できる段階である。
昨シーズンは、岡山スタイルとあれだけ話題となったシーズンであったが、今季は、ここまで全くそういった声が聞こえてこない。ファジアーノ岡山スタイルは、「県産」としてしっかりブランディングできて、「研鑽」できている状態であると言えるのかもしれない。
岡山が、「頂」に到達した時に、岡山のスタンダードが、大分が「ポゼッション」であれば、やはり岡山は、「堅守」であることを宣言できるかもしれない。昨シーズンの王者の町田が、J1で、旋風を起こしている。そう考えると、岡山もこのサッカーでやれる。そういった強さを目指して、残り試合を戦ってほしい。
本日の試合は、伝統と歴史のある大分の地に乗り込んで難しい試合にこそなったが、岡山の守備の堅さも出せた試合であるとも思いますので、負けなかった事を誇りに、次節のホーム横浜FC戦を戦ってほしい。
「首尾(守備)」良く戦えるのが内容で圧倒できる可能性を秘めたスタイルなんだという事を心の拠り所として、厳しい状況でも信じて応援したい。
文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino
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