中古のRPGを作るゲームを買ったら中身が昔自分が作ったゲームだった
昔RPGを自分で作るというゲームがあった、もちろん一からではないのだが小学生でも自分で考えたストーリーを表現できるという素晴らしいゲームだ。
そして僕はそのゲームを中古で大量に買い、売った人が作ったであろうRPGをプレイするのが趣味なのだ。
しかしなにぶん大昔のゲーム、データが残っていることは余りなく殆どが初期化、または電池切れで死んでいるというありさまだ。
だからこそ生存が確認できた時の高揚感は凄まじいものがある、僕はその瞬間が好きだった。
ある日の事、僕は先日買い漁ったRPG製作ゲームの生存チェックをしていた。
一本目……死んでいる。二本目……死んでいる。三本目……生きてはいたが何も作られていない。四本目……生きていたが海のど真ん中に立っていて動けない。五本目……死んでいる。六本目……イベントもなく敵もいない草原をただ歩けるだけ。七本目………。
……一本一本ラベルを貼りながら地道に確認していく、僕はいったい何をやっているんだと賢者タイムに陥ることもあるが気にしてはいけない。
……結局何も当たりがないまま僕は最後のソフトに手を伸ばしていた。
頼む!なにか、なにか創られていてくれ!僕はそう願いながらソフトを本体に入れスイッチを入れた。
……タイトルが表示され生存確認は出来た、しかしなにか創られていなければ意味はない。
僕はドキドキしながらゲームスタートのボタンを押した、すると、
〝わたる伝説〟
というタイトル名が表示されたのだ。
これは創られている、僕の第六感がそう告げていた。
「勇者わたるよ、茂原に住む魔王を倒してくれ」
台詞が表示されゲームが始まる、OPが作られているということはきっと当たりだ、僕は謎の達成感を感じながらゲームを続けた。
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数分後、僕はこのゲームに違和感を感じ始めていた。
まず初めに感じた違和感は主人公の名前が僕と一緒だったということだ、まぁ〝わたる〟という名前は別に珍しくもないのだが。しかし僕は妙にそのことが引っかかっていた。
二つ目は建物や地名が僕の地元の名称と同じだった事だ。○○小学校など地元の人しか分からないようなネタだらけ、更には人物名も僕の記憶の中にある名前だらけだったのだ。
ゲームが進むにつれ僕の記憶の片隅にある黒歴史が目を覚まし始めていた。
確実に僕はこのゲームを知っている、いや、知っている所ではない。
……これを作ったのは僕だ。
遠い昔、まだ小五くらいの頃に僕が買ってもらったゲームなんだ。
しかしなぜ僕のゲームが中古屋に……僕はゲームを売ったことはないはずだ。
……思い出せ、確か僕はこれを作り終わった後、他の人にプレイしてもらおうと思い誰かに渡したはずだ。
そしてしばらくリレー状態で感想を聞いて……そうだ、どこかで途切れたんだ、確か途切れさしたのは……誰だっただろう、思い出せないがまぁいいか。
もう当時遊んでいた連中とほぼ付き合いはないのだが、こうして自作ゲームをやっていると楽しかったあの頃を思い出して泣きそうになる。
あの時はどうだったこうだったと独り呟きながらゲームを進めると、ついにラストらしきところまでやってきた、そしてラスボスは僕の一番の友人の〝あっちゃん〟だった。
彼とは今でも付き合いがある、というより今一緒に住んでいる仲だ。
東京に芸人になるため越してきたが金がないという理由で一時的に僕の家に転がり込んできたのだが、もう一緒に住んで二年になる。
彼にこのゲームを見せたらどんなリアクションをするだろう、僕はそんなことを考えながらゲームをやっていた。
……バランスが悪く無駄に難易度が高かったため何度か死んでしまったが、ついに僕はラスボスを倒すことができた。後は寒いネタだらけのエンディングが始まり、これを見終えればスタッフロールが始まるはず……なのだがスタッフロールは始まらなかった。
僕の記憶が確かならば間違いなくここまでしか僕は作っていなかった、しかし他の人が改変したのか続きがつくられていたのだ。
といっても追加された部分はストーリーとは無関係でそれはまるで交換日記のような内容だった、殆どがどうでもいいような会話でしかなかったのだが僕は最後の方の台詞が気になっていた。
『わたるの好きな人は二組の相沢』
『え、そうなの?俺は同じクラスの佐藤だって聞いたことあるけど』
『違うよ、わたるの好きな人はあっちゃんだよ』
『あっちゃんは男だろ』
『わたるってホモらしいよ』
『わたるがホモって本当?だったら嬉しいんだけど』
……この台詞を最後にようやくゲームは終わった。
どうやら友人たちは僕の知らないところで好き勝手書いて遊んでいたようだった、道理でゲームが僕に帰ってこないわけだ。
そういえば今思い返すと、あの頃なぜか急にホモ扱いされたことがあった、きっとこれが原因だったのだろう、まぁその後すぐ僕は同じクラスの子と交際し、その疑惑は晴れたのだが。
そんなことより僕が一番気になったのは最後の台詞だった、〝ホモだったら嬉しい〟とはどういう意味なんだろうか。
そのまま受け取るならばこれを書いた人物が同性愛者で僕の事が好きだったって事なのだろうが……。
僕は必死に記憶を蘇らせリレーを途切れさした人物を思い出した。
そうだ……勝俣だ。間違いない。
あいつ確か受け取った後ゲームを失くしたとか言っていたのに、問い詰めたら本当は中古屋に売ったってゲロったんだ、なぜ忘れていたのだろう。
ということは勝俣は同性愛者だったのか?でもあいつ今は普通に結婚して子供もいると聞いたことがあるのだが……バイだったってことなんだろうか。
……その時、玄関の方でガチャガチャ鍵を開ける音が聞こえ始めた、どうやらあっちゃんがバイトから帰って来たらしい。
あっちゃん…………。その瞬間一つの考えが僕の頭をよぎった。
勝俣はこのゲームを〝売った〟んだ。売るのに台詞の追加なんてするだろうか?いや、しないはずだ。
となると最後の台詞を追加したのはその前の人物ということになる、それは……、それは……。
「お、お前、またゲーム買いあさって来たのか。好きだねホント」
そう言いあっちゃんはベッドの上に荷物を放り投げトイレに向かう。
僕は身を震わせながらゲームを隠すと普段どんな表情で彼と接していたか必死に思い出していた。
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