かつて存在していた季節の一つ。 この季節の空の色は移ろいやすく、人の精神状態も不安定だった。 神隠しが多く起こり 数日経つと 辺りに真っ赤な血を噴き出した死体となって姿を現した。 人はそれらを「コウヨウガリ」と呼んで悼んだ。 昨日まで遊んでいた人間が フッ と消えるんです…。
魂が抜けた肉体は 腐り落ちて土へ還るまで 生前行っていた動作を 繰り返し続けます
幽霊は その場所に染み付いた記憶、 あの人の残り滓 あの人はもういない
人生は物語ではないので
教会の中はやわらかい光で満ちている。 アーチ形をした高い天井を見上げて、清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。 正面に鎮座する〇〇様の像は今日も慈しみにあふれた表情をたたえる。 私の魂は彼女の思し召しにより、浄化され、救われる。 視界が紫がかって、足元が覚束なくなる。 その場に嘔吐する。
排水溝に髪の毛が溜まる 皮脂や石鹸や塵 もろもろの滓と合わさって 少しずつ溶けて 流れてゆく かつて私だった物の水葬です それらはいつか 誰かになる
サッシにこびりついた茶色い垢は 幾億年もの人類の汚さを表します ねばついて 変な臭いがします 壁には かつて住んでいた人たちが 染み込んでいます
すごく赤い空でした
僕の体にはシロアリが住んでいます 僕の体をすこしずつすこしずつ蝕みます かゆいです 駆除業者は呼んでも来ません かゆいです
「いってらっしゃい。おつりは好きに使っていいわよ」 はじめてのインターネット、僕は元気に家をとびだす 目的地までは13クリック ひとりで行くのは初めてだけど 一度はみたことある場所なんだ 知らないリンクも増えたけど きっとパンくずたどっていける あった やっぱり この道だ いつもと形がちがうけど きっとこれが いつものリンク 【ようこそ みんなの苦しみを吐き出しましょう】 213:僕はもう帰りたくありません