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壁面本棚②
前回の記事の続き(本棚作りの記録)
壁面本棚は、下の写真のこの壁一面に、展開するつもりだ。
銀行時代からあったと思われる掲示板が金属製の枠で縁取られて残っている。このデザインが、絶妙に昭和なのだけれど、私が目指している空間には、かなりミスマッチ。
だから、この掲示板が全て隠れるように本棚が配置される予定だ。
左の壁は、2016年に祖父や祖母と共に建てた壁で、2メートルの高さもない。
設置予定の本棚は、2メートル50センチになる。
右には、2階建ての鉄筋コンクリートの銀行を支える柱の一つが聳え立っている。厄介なことに、その側にブレーカーがあり、電気がまだ生きている。ブレーカーボックスは、手前に姿鏡を置いて隠してあるが、本棚設置時には、このブレーカーの処理もしなくてはならない。
この建物の中のあらゆる配線は入り組んでいて、誰一人、容易には、把握することができないのではないかと思われる。
2021年2月
打ち合わせの様子。
左にいるのは、私が打ち合わせに巻き込んだお客さんだ。
うちでは、偶然その場に居合わせただけで、巻き込まれることがある。
吉川さんが持ってきてくれたモールディングのカタログ。
3回目の打ち合わせの時には、工作員のTさんに同席してもらった。
この時、Tさんは、「ほぼ、この通りにさせていただきます。」と、設計士の吉川さんに、断言していた。
思わず、私の耳もダンボになる。
「ほぼ、この通りになるはずなどない」という私の予感は外れないのだ。
3月16日までには、
本棚の骨格が、だいたい見えてきた。
カタログを開いて、サイズがピッタリのモールディングを選ぶのに、かなりの月日を要した気がする。
縦横厚みの3方向のバランスを想像の中で組み立てなければならず、モールディングの方は既製品とあって、選択の段階で酷くエネルギーを消耗した。
慣れない作業を理解しながら進めるのに、新しい分野のお勉強をしているかのような気分に。
ようやく選んだものの、見積もりでは、総額約7万円になるということが分かった。
最初の吉川さんの話では、業者に交渉すれば、安く手に入るのではないかというものだったが、そういうものでも無かったらしい。
心が折れそうになり、一気に製作のペースが落ちる。
正直言って、売上から7万円を貯めるためには、あと半年ぐらい寝かしておきたかった。
工作員のTさんは、「モールディング?そんなの作れますよ。」と簡単に言う。
その言葉を私は信じなかったが、私がなかなか動かないでいる間に、Tさんは彫刻刀を新調し、コツコツとモールディングを彫り進めていた。
見せた方が早いと言わんばかりに、Tさんは、自分で彫ったモールディングを持って店に現れた。
時間をかけて彫られた手彫りのモールディングには、いろいろな意味で、迫力があった。それでも私は、大きな本棚に必要なモールディングの長さを考えると、手彫りは無理だという考えを簡単には捨てきれず、憂鬱なままだった。
Tさんに促されて、なんとか店に行って作業をしようとするものの、身体が重い。
そんなに必要に迫られているわけでもないし、しばらくこの計画は、寝かせておいてもいいのではないか。実は、やる気を失っていたが、これだけ、色々な人に手伝ってもらっていながら、やる気を失っているとは、誰にも言えなかった。
4月、設計図にはなかった、背板がつく。
背板がつけば、増えた木材の材料費分、費用がかさむので、当初の設計図にはなかった。背板があった方が見た目がいいよね、という理由で、背板をつけることになった。
この頃、モールディングを購入するよりも、モールディングを作るためのルーターやビットを購入した方が良いという結論に至る。
自分たちで調べたり、メーカーや店舗に問い合わせたり、購入に至るまでに時間がかかる。無い知恵を絞って、悩んで、頭はオーバーヒート気味。
ルーターを購入したのは良いが、回転数を調節することができない機種だったらしく、強すぎる馬力で板がえぐれてしまい、恐怖で1メートル後ろに飛んだ。
以来、自分でスイッチを入れていない。
本当に、このルーターが使い物になるのか、不安でしかない。
どちらにせよ、単調な模様を彫ることができても、凝った装飾はできないので、モールディング問題は、完全に解決したわけではなかった。
5月 安い装飾パーツを少しづつ購入し始める。
海外から届くので、やたらと時間がかかる。
背板を貼り終え、大胆に塗り始める8月。
無計画に塗り始め、激しい色むら。やけっぱち感が、作業にも現れる。
8月には、山倉建設のどろんこ亭で開催されている木工教室に顔を出し、家具職人のアンドレアさんにルーターの使い方について聞いた。
もう少し大きく、作業に適した、ルーター台が必要だということがわかる。
夏の暑さが厳しく、もともと無い体力に、気力まで失った私と、気力体力に溢れ、やりかけたことをどんどん前に進めたいTさんのエネルギーバランスが、不均衡になっていた。
なかなか動こうとしない亀のような私のことを、Tさんも焦ったく感じただろうと思う。
それでも、辛抱強く作業を引っ張ってくれた。
この頃になると、Tさんは、モールディングの彫刻を全て仕上げてしまった。
夕方になると、Tさんが、自作のモールディングを抱えてお店に来店される日々が続いた。進捗状況を見せるためだ。
丁度、このタイミングに遭遇されるお客様は、Tさんの偉業に、驚いていた。
「大体のことはできると思ってるんで。」とTさんが、いつものセリフを言えば、お客さんの女の子が、すっかり感動してしまう。
何人ものお客さんに絶賛されて、Tさんは、「自分としては普通のことしかしてないんですけどね」と言っていたが、相当な時間をかけて作られた彫刻は、実際、とても美しかった。
9月、モール以外の装飾パーツについて、私は、Tさんに、ゴシック調のデザインを提案した。
おおよそのデザインは、Tさんが考えた。
完成形
細かな縁も手持ちルーターで角を取ってあり、彫刻刀で溝が掘られている。
続く色塗り・・・
パフ袖での作業は絶対にやめましょう。
私はというと、ジグソー作業で、一気に元気を取り戻し、自称ジグソー職人に。
穴あけ作業に夢中になってしまい、なかなかやめられない。
見ていて危なすぎると言われ、休憩を促されるまで、ジグソーを手離さない。
私の好きな工具No.1かもしれない。
秋以降からは、他に作らなくてはならないものが出てきて、優先順位が変わったため、本棚制作は少しお休みになった。
Tさんの手彫りの彫刻と比べると、既製品の装飾パーツは、安っぽく見えるようになってしまった。
しかも、ゴシック調にしちゃったけど、その前に輸入していたパーツは、ゴシックに合わない。
その辺りは、どうなるのか・・・。
行き当たりばったりな本棚づくりは、来年に続く。