将来の暮らしを真剣に考えて見る ⑦
首長による行財政改革の肝
前回の本投稿(番外)島根県海士町の地域再生に見るように、首長のリーダーシップという行財政改革の一つの形が見えて来ました。
今回は、そうした形が成功した事例の中で、ワタスが肝(ポイント)だと考える2つの事例をご紹介します。
10数年で合計特殊出生率が急増し全国トップクラスになった岡山県奈義町
(行政と議会の身を切る改革で市民がついてきた)
人口5700人余りの奈義町は、2005年に1.41だった合計特殊出生率が2019年に2.29まで回復し、少子化対策の『奇跡のまち』と言われています。
(合計特殊出生率)
1人の女性が生涯で何人の子供を出産するかの数
奈義町は、平成の大合併が進む中、住民投票で『単独町制』を選んだ事で、行政・議会・住民が本気で三位一体の行財政改革に取り組みました。
行政は職員の定数と給与を見直し、議会は定数と報酬を見直しました。(定数14→10)
住民投票の結果はあったにしても、まず行政と議会が本気の姿を見せたからこそ、住民も持続可能な社会づくりの為に痛みを伴う行財政改革を受け入れんだと思います。
この奈義町の改革を行政側から進めたのは、元役場職員から町長に当選した方であり、他の自治体の改革が改革派の首長が自治体の外からやって来る事が多いのに対して、議会対応に長く関わり議会との(議員個々とも)関係性ができていたのも、改革がスムーズに進んだ要因ではないかと思います。
https://www.town.nagi.okayama.jp/gyousei/chousei/houshin/keikaku/goukaku.html
政令指定都市で人口増加率トップの福岡県福岡市
(バラマキ型の無駄遣いに命懸けで切り込んだ)
2010年に元アナウンサーで36歳という若さで福岡市長に初当選した高島市長は、登庁すると『若造のくせに』と拡声器で罵倒される日が続いたそうです。
当然、行政の素人だった高島市長は、外部の有識者を入れた専門家会議を9回行い『行財政改革プラン』を策定しました。
主なものに
⚫︎補助金の見直し
⚫︎「随意契約(総額147億円)」を「競争入札」へ
⚫︎外郭団体との契約(総額46億円)を見直し「競争入札」へ
・・・等があります。
改革の途中で関係者から告発されたり、車でつけ狙われたり、殺害予告まで受けて警察の警護を受けた事まであったそうですが、結局この『行財政改革プラン』で、450億円の財源不足に対して490億円の財源を確保しました。
https://diamond.jp/articles/-/187289
すぎちゃん的考察
選挙になると聞こえのいい事を言う候補者は沢山います。
でも、公約を実行するには財源が必要です。
その財源をどう捻出するかに言及する人は、殆どいません。
その理由は2つあると思います。
①予算の編成・執行権が首長にあるから
②首長が改善しようとしても、従来通りにやろうとする議会(多数派)が反対するから
・・・その結果、政治家は『お金がない』で終わらせてしまいます。
今回の2つの事例は・・・
①お金がないなら身を切ろう
②既得権益のアンタッチャブルな部分に、身の危険を顧みず手をつけよう
を果断に実行して地域の再生に繋げた事例です!
また、福岡の高島市長は『意思決定の層に若者がいない事が問題だ』と言っています。
島根県海士町の地域再生の成功事例と合わせて、将来の暮らしを真剣に考えた時に、一つの道は示されているような気がします。