うちのワガママなカメ
獣は怖い
小さい頃からハムスターとか犬とかいった類の毛の生えた動物がぼくはどうも苦手だ。吠えるし、なんか本気出したら強そうだし、逃げたら追っかけてきそうだ。多分ちゃんと付き合っていけば、それはそれは可愛いく思うのかもしれないが、怖いもんは怖いのだ。
小学二年生のときなどはひどかった。チワワを飼っている友人の家に遊びに行って、ぼくは面食らってしまった。まーとにかく小さい癖によく吠える。キャンキャン吠える。歯なんかもう剥き出しだ。そして奴は僕を見つけるなり飛びついてきた。もちろん僕は逃げる。案の定追っかけてくる。また逃げる。追っかけてくる。早い。食われる!!と、こんなことをしていると流石に見兼ねた友人がチワワをゲージの中に入れてくれた。杉浦少年、チワワに完全敗北である。
と、こんな風な有様であったから、ぼくは獣類よりはカエルやカメやサカナなどの水棲生物のほうが断然好きであった。あまり感情表現をしてくることはないが、見てて癒される。その中でもカメは格別のお気に入りだ。
ころころとした甲羅の中からひょっこり顔を出してはのんきに日向ぼっこなんかをしていたり、ゆらりゆらりと水の中を泳いでいたり、かれらはとにかくマイペースだ。急がず騒がず慌てず、常にマイペースだ。あまり干渉せずともなんとなく共存している。それがいい。
カメは結構賢い
ぼくは長年、色々なカメを飼ってきた。川で出会った子やペットショップで遭遇したクビナガくん、それにとある島にある秘密のイシガメの里から連れて帰ってきた子。みんなみんな可愛いくて、それに餌を人間から貰うことをちゃんとわかっていて、餌の時間に水槽に近づくとぴょこぴょこ寄ってくる賢い子達だった。そしてなんでもよく食べた。文句の一つも言わなかった。だからぼくはカメはなんでもよく食べる生き物だと思っていた。素直な生き物だと思っていた。
去年のことだ、先述したイシガメ達が7個卵を産んだ。実はイシガメに産卵してもらうまでいろんな紆余曲折があり、この出来事は杉浦家の10年越しの快挙なのだった。家族一同大喜びして、大切に大切に卵を守った。結果、3匹も卵から孵化してきた。(4個はダメになってしまったのだが、カメという生物はダメになる事前提で卵をたくさん産む。)
1匹は親戚に譲り、もう2匹は我が家で飼っている。タイトルの写真の子たちだ。カメ経験は多数の杉浦家といえども卵から孵化させて一から育てるのは流石に初めてで、その溺愛っぷりといったらなかった。特に親父なんか酷い。間違いなく息子である兄と自分よりも可愛がっている。我々兄弟はカメに負けたのだ。まあカメは自分も可愛いと思うからよしとしよう。
そんなこんなで、杉浦家のカメに対する意識は格段に向上した。今までのカメたちにあげていたのはせいぜい乾燥したカメフードぐらいだったが、カメベイビーに色めきだった我が家は乾燥エビや冷凍赤虫の購入を即決した。もちろん通常のカメフードも高級なものを揃えた。超ランクアップである。 だがこれがいけなかった。甘やかしすぎてしまった。甘やかしてしまったばっかりにカメベイビーは付け上がり始めた。
いつものように餌をやろうとすると2匹とも寄ってくる。あー可愛いねぇご飯あげようねぇ!とばかりにニヤニヤしながら乾燥エビをあげた。するとどうだろう。カメベイビー達は手で押しのけて食べようとしないのだ。あれ、お腹空いていなかったのかな?と思い観察してみると、やはり餌は欲しいようだ。すこし嫌な予感を抱きつつ今度はカメフード(高級)を与えてみた。
まー、パクパクパクパクよく食べる。エビには見向きもしなかったくせに…。エビが嫌いなのかもしれないなぁと思い、今度からカメフードをあげることにした。
ところが3日も経つとカメベイビー達はまたストライキし始めた。そのくせにエビを上げると例のごとくパクパクパクパクよく食べる。
その時確信した。コイツらその日の気分で選り好みしてやがる…!!と。
人間のぼくでさえ出されたものは残さず食べる。それなのにこのカメどもときたら…!!
甘やかしすぎた結果、うちの2匹のカメベイビーはワガママな奴らに育ってしまった。
これからどうしよう…。
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