ペンネーム:ゴッツァンデスメタル

『本能があれば』

既に仲間とははぐれ、私は体力の限界でした。何のために飛び立ったのか。寒い冬から逃れるためたったのか。どうだったのかもはや私は覚えていません。それでも旅を続けなければと思うのは渡り鳥の習性なのでしょうか。はなからあたたかい地へ行きたいとも、飛びきってやるという覚悟もなかった気がします。ただただ己の中にある何かに流されるように私はここまで飛んできたのです。

もうここらでいいのではないか。ふと、そう思いました。終いにするには充分な疲れがあります。私は羽ばたくのをやめてみました。すーっと空を滑空していきます。

「なんか違うんだよなぁ」

何故かすごく虚しくなりました。何故かすごく悲しくて、何故かすごく悔しい気持ちになりました。泣けるような笑えるような。でもとても不愉快な気持ちだと言うのは分かりました。結局私は羽ばたくのを我慢できなかったのです。見えない風を読み、根拠もないのに正しいと思う謎の方角に向かって羽を動かします。

まだ旅は続くのです。

私は小さく鳴きました

「くそったれ」


【出題されたなかで使用した題材】
①人間以外の視点で描写する



『家族ごっこ』

多分、あの人だった気がする。なんとなく残る面影というか、雰囲気だろうか。私はたまたま名前と顔が一致した目の前の人との会話は上の空に、チラチラとその人のことを目で追ってしまっていた。


「お父さん役は戸塚くんだよね」

クラスの時間終わりの休み時間、ある1人の女子が話しかけてきた。

「お母さん役は川窪さんだっけ」

「そうだよ、夫婦役お互い頑張っていこう!」

えらくご機嫌な川窪さんにちょっと圧されてしまう

「そんなこと言っても僕らチョイ役だよ?主人公の両親ってだけで特に見せ場もセリフもないじゃん。」

「いやいや重要だよ?セリフは少ないかもだけど、舞台上には結構居るし。重役だよ、うんうん」

なぜかやる気満々だ。

「とりあえず今日の放課後時間ある?さっそく練習会しよー!」

「ん?」


なんやかんや勢いに流され放課後教室に残らされてしまった。

練習と言ってもほんとに出番もセリフも少ししかないからすぐにやることは終わってしまった。なのに川窪さんは

「よし、もういっかいいこう!」

「はぁ!?」

何回か繰り返したあと、やっと満足したのか休憩になった。

「今日は付き合ってくれてありがとね」

「いやいや別にいいよ」

ほんとは全然良くなかった。というか川窪さんは気にならないのだろうか。そろそろ僕達は思春期っていうのに入るわけで。なのになんでこうもちょっと心穏やかで居られないことをするのか。

「戸塚くんてさ思春期入ってる?」

心臓が跳ね上がるかと思いました。

「いや、別に?」

極めて冷静に受け答えができたと思います。

「私もう思春期入ったのかもしれない。最近家族のことがね、なんというかモヤモヤするんだ。」

「ほう」

「ずっとずっと好きだったんだけどね、最近ふたり仲悪くて。そういうのすっごくやだなって思ってたから。今日はなんかすっきりした気がする。」

なんとなく、本当になんとなくだけど言わんとしてることがわかった気がする。自分の思ってた家族をもう一度見たかったのかもしれない。なんかそういう気がした。ちょっとこの役に乗り気になろうか。

「じゃあまたなんかモヤモヤした時は父さんに言ってよ。」

我ながら気持ちの悪いことを言った気がする。

「ははは何それ!」

案の定な反応だった。

「あ、戸塚くんだから“とーさん”か。というか私も川窪だから“かーさん”じゃん。」

「そ、そうだよ!」

「なんかちょっと妙な気がするけど…、いいかもね。」

「ほんと?」

「うん、よろしくとーさん」

「うん、かーさん」


その後彼女は転校してしまったのだった。家庭の事情なのだ。そういう話は川窪さんからよく聞いていたから驚かなかったけど、ただ寂しい感じがした。もう10年以上前のことになるから、あの人は川窪さんでは無いのかもしれない。そもそも地元で行われる同窓会に来るだろうか。

「じゃあまた」

「お、おう」

別の人と話していたのを忘れてしまった。

僕は意を決してその川窪さんらしき人に話しかけようと決めました。

「あの…」

そこで言葉が詰まりました。

その人の薬指には指輪があったのです。


【出題されたなかで使用した題材】
②時間軸の中を1回以上移動する文章
(舞台となる時間が2つ以上出てくる文章)にする
(例:語り手が現在から過去を振り返る、など)



『✨綺麗な国✨』

私の住んでいる国はとっても綺麗なんです!うーんとそうですね、周りを見てみてください。どうです?すごいでしょ!ガラスのお城がたくさんあります。空にはお星様がいつもニコニコ輝いているの。木々もとても青青としていて、葉っぱはまるでステンドグラスみたい。光を通すとキラキラ輝いていてすごい素敵なんです。私のお気に入りポイントです!ほら、ちょうちょさんも楽しそうに羽をヒラヒラ。虹色の鱗粉をまきながら空を舞っています。道の横には沢山のメリーゴーランド!びゅんびゅんびゅーんってすごい速いの。今日も私はテンションあげあげ。気分るんるんです。

そうして綺麗綺麗な繁華街を歩いていると…。あれ?目の前からゾンビさんたちが来ました。夢の国にそんな人達はいちゃいけません。めっ!です。私はキャンディケーンをぶんぶんってしてゾンビさんたちを追い払います。やった!倒しました!他の何匹かは逃げちゃったけどまぁOK。よしよし、今日もこの国は綺麗で平和!楽しいなぁ〜

あれ?今度は前から馬車がやって来ました。赤い宝石がキラキラしています。ということは…騎士団の皆さんです。この国を邪悪な輩から守ってくれてるかっこいい人たちです!手を振ったら振り返してくれるかな…。うん、振ってみよう!

「おーーーい!こんにちはー!」

すると信じられないことに、騎士さんは私のことを押し倒そうとしてくるじゃないですか!いやです。怖いです。 キャンディケーンで抵抗しようとしても2,3人係で抑えてきます。何!何ですか!この状況は!やめろやこの野郎!汚ぇんだよゴミ共が!あ?痛てぇつってんだろが!

あ!私のキャンディケーン!取り上げて手の届かないところに投げられてしまいました。カーンと金属音が響きます。騎士団の1人が魔法を唱えます。

「ゲンコウハン!テジョウカケロ!」

あなた方はいつから魔術師にジョブチェンジしたんですか!もう世界観がぐちゃぐちゃです。気分が悪くなってきました。あぁ、嫌です!戻りたくありません。さっき見てた綺麗な景色が溶けていきます。お気に入りの葉っぱが!枯れちゃダメですよ!もう怖い、やだ足りないんです。なんじゃこの国は早く薬物合法化しろやクソが!ブルブル、震えちゃうじゃないですか☆


【出題されたなかで使用した題材】
③「信頼できない語り手」の視点で書いてみる
(語り手が嘘つき、無知、世間知らず、強がっている etc.)

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