#無冠短歌評100 全首一覧
1.
草原が香り立つよう 換毛の猫をとくとき私は庭師/内田
2022年07月05日『庭』
2.
残業をしつつ子を持つ父同士話すことあり互ひの育児/高橋良
2022年03月17日『残業』
3.
雨、元気だつたか、おまへに食はれるのならば左の耳朶がいい/ほのふわり
2022年05月10日 『 自由詠 』
4.
日蝕の空を仰ぎて叫ぶとき隧道となるキリンの喉(のみど)/茂泉朋子
2022年05月21日『隧道』
5.
夢だって気付いてすぐに抱きしめる 目が覚めるまであたたかい犬/睦月雪花
2022年05月04日『夢』
6.
俺はもっとでっかくなって銀河ごと抱きしめてやる星のなきがら/音忘信
2022年06月06日『出題遅れも厭わずに大らかに詠む』
7.
水色が水色と名付けられたころ 水道もダムも知らなくて、水/南にそびえるやたら高い柳
2022年06月16日『水色』
8.
心にはかさぶたがなくなまきずがなまきずのままただ老いていく/吉田岬
2022年06月05日 『 老 』
9.
久しぶり!伸びたね、髪。の倒置法 僕は動詞に置いていかれて/流れ星
2022年06月24日『久』
10.
ご心配おかけしました息子には狐がついていただけでした/浜辺の釣り人
2022年06月07日『つき』
11.
六の段ろくろくさんじゅうろくだけを楽しみにして口を動かす/椋鳥
2022年06月06日『六』
12.
あの人を呼ぶためだけに新しい二人称が要るから作らなきゃ/瀧口美和
2022年05月05日『二人』
13.
おやすみ、ぼくの右脳の七頭の知覚過敏のコビトカバたち/あらいぐま
2022年04月05日『敏』
14.
新聞の田植えの話題を目にすると呼ばれたような気になる水田/水田早霧
2022年06月01日『水』
15.
ぼくの名は検索結果にないことばこの世にいないひとみたいだね/高田月光
2022年04月11日『インターネット』
16.
紅茶へと浸していったマドレーヌきみの話は全部聞きたい/紫央
2022年06月03日『ーヌ』
17.
タンポポの「ポポ」の部分の唇のように僕たち二回キスした/三月三日
2022年04月22日『タンポポ』
18.
「まめかね」と手紙がとどき「元気だよ」と返す 出雲(いずも)は晴れていますか/逢
2015年02月03日『まめ』
19.
洗濯機鼻歌みたいンー(わしゃー)ンー(わしゃー)って にちようびだね/水沢穂波
2022年04月28日『洗濯』
20.
またいつか海を見に行く約束が今日もわたしを生かしつづける/川下知世
2022年07月20日『見』
21.
君が砂浜に書いたあの子の名前だけさらってくれよ白波/昧
2022年07月19日『砂』
22.
乳牛にサイバーパンクな搾乳機 血、乳、わたしの消化器、また血/野川
2022年07月23日『乳』
23.
仕方ないこともたくさんあるじゃない イレギュラーでもエラーになるし/あつこ
2022年07月17日『じゃない』
24.
なんとかの森までバスで退屈でエッチの後で32℃で/のの
2015年07月09日『森』
25.
冷血漢みたいに癖のない文字で愛してる、とか書くなよ窓に/西鎮
2022年04月18日『漢』
26.
本名を知らずにポッポと呼ぶ虫を吾子もポッポと呼ぶようになり/酒庭かや
2022年06月04日『虫』
27.
寒いからくっついて寝るひらがなの「ん」のかたちに「ん」で重なる/寿々多実果
2022年01月10日『自由詠』
28.
離れても聞こえる花火誤字のある手紙は今も覚えています/鈴木ベルキ
2022年07月23日『離』
29.
水田は空を映して蛙子を抱いた夏に涸れるとしても/桃園ユキチ
2022年05月01日『映』
30.
雨降りの古書店、湿気た本の群れ、束の間、僕はフィクションになる/酒匂ささ
2021年05月22日『湿』
31.
恋ですらなかった多分 でも私あなたの事しか歌にできない/マイメロ4771
2022年05月05日『あなた』
32.
諦めたら終了ですよの言霊に殺され続けて夜が明けない/T・G・ヤンデルセン
2022年02月07日『諦』
33.
夏風が正面から来て「ゆううつ」の「う」と「つ」が空へ飛ばされていく/北谷雪
2022年05月28日『憂鬱』
34.
梅雨は夜なのだと思う日没を待たずに灯る明かりが増えて/飛和
2022年05月26日『日没』
35.
校庭に響く月光この人は今本当に腹を立ててゐる/斎藤君
2022年04月27日『本』
36.
「大好きよ」祈りよ響け 子がいつか自分自身を救えるように/さとあ
2022年06月23日『救』
37.
ちょうどこの薔薇一本の重さらしい三月九日(みつきここのか)頃の、あなたへ/ミドリムシのミドリム
2022年03月09日『3月9日』
38.
同義語を調べるたびにわたくしの中にある眼差しのつめたさ/古川柊
2022年05月24日『同』
39.
多分今わたしがわたしを休んでも世界は回る飛び乗る電車/417
2022年06月23日『休』
40.
論理的整合性の彼方から好きと言えれば世界は月だ/みってる
2021年08月05日『論』
41.
さみしさもひかりもうたにするというおりこうさんはおばけになあれ/つきひざ
2022年06月26日『利』
42.
豊穣の祈りを込めて装われ祭りの果てに焚かれる案山子/月硝子
2022年07月10日『自由詠』
43.
訳ありで休んだ日だけ訳ありで安かったって母が買う花/はつきむ
2022年06月23日『休』
44.
水面に村の名残が浮かぶ夏 四季を覚えていますか、いいえ/長野あずさ
2022年07月29日『夏』
45.
すべて焼き殺す顔して本名は葉月だなんてずるいよな、夏。/常井かきくけこ
2022年08月11日『葉月』
46.
紙オムツの予備と予々備と予々々備を入れて膨らむマザーズバッグ/梅鶏
2022年06月02日『ムツ』
47.
追伸の代わりにへんな鳥を描く こいつで笑い転げた日々よ/おおとり璃句
2021年08月06日『追』
48.
ばらいろのあすがおとずれますように 12-5にとまどうきみに/佐藤硲
2022年06月16日『薔薇色』
49.
不発弾処理するように試着したオメガのムーンウォッチを外す/秋野茜
2022年05月04日『不』
50.
白息(しらいき)がまた藍色に染まるのを見ながら始発を待つ明け方/柳川晃平
2022年07月16日『藍』
51.
弊社には時空の歪みがございます。おそらくですが、可能です、はい。/橘 亜季
2022年05月14日『一週間に十日来い』
52.
大歓声は祈りにも似て 守護神と呼ばれた男のさいごの一球/虫追篤
2022年06月02日『護』
53.
アボカドを森のバターと言う人が美味そうに飲む牧場の牡蠣/哲々
2022年08月06日『牡蠣』
54.
あのひとに頭を撫でてほしかった 枝垂れ桜の木陰に入る/好乃智紀
2021年11月08日『撫』
55.
窓際の葦簀に空いた穴からは遠くの町の夏の夕暮れ/葵七宝
2022年07月20日『葦簀』
56.
歩いても歩き続けても母の影から出られぬ我のちいささ/ダイモンジ
2022年07月27日『影』
57.
両の手で耳を塞ぐと波の音 僕の中にも海がいるかな/星野あおい
2022年07月18日『海』
58.
七色に光の波を分けていく水蒸気ってロマンチストだ/はるのかおり
2021年03月31日『七』
59.
ゼロカロリーコーラを思い切り振ってただ人波に逆らっている/竹上言ふと
2022年07月03日『波』
60.
はじまってないしおわらせらんないし まだ好きだって 言ってもないし/後藤
2022年05月17日『まだ』
61.
満ち足りて白川夜船 父と子は大きい小さい同じ寝相で/守宮やもり
2020年01月28日『そっくり』
62.
なにごとも無かつたやうに新しき王子を待てり砂漠も星も/清
2022年09月08日『砂』
63.
しょくぱんまんみたいなことは言えなくてアンパンマンは欠片を渡す/髙木一由
2022年01月24日『欠』
64.
さまざな兵器がぜんぶ猫ならばチュールひとつで平和になれる/春ひより
2022年08月06日『戦争を止める方法』
65.
パチパチと焚き火の爆ぜる音を聴く知らないYouTuberの動画で/あるこじ
2022年08月08日『パチパチ』
66.
焦点が君だけに合ってしまうから街はひかりの水玉になる/インアン
2022年06月01日『水』
67.
君が昨日だれと何していたかなど 言わないで今ここにいるなら/梓川葉
2022年06月30日『ここ』
68.
抱くほどに抱かれてしまう あなたへと注ぐ河川のひとつになって/カラスノ
2022年08月05日『抱』
69.
文字通り検索しててもだめなんだ。歴史や、世界を、自分で問うこと。/ぼくの
2022年08月06日『戦争を止める方法』
70.
冷えた水 飲み込む 嘘は発声の前に生まれているのだけれど/早月くら
2022年11月06日『飲』
71.
君の言う誰でもいいになれなくて目を閉じて押すジュースのボタン/森居サユマ
2022年02月20日『誰』
72.
さよならをちゃんと言えない人を待つ庭の紫陽花焚きつけながら/花井かだ
2022年07月05日『庭』
73.
但し書きばかりの問いで考慮されないまま消えたひかりの温度/三田村諒子
2022年11月15日『但し』
74.
土砂降りに祈りをささげ晴れさせたあの子の光るうぶ毛をみていた/海恵ふきる
2016年04月02日『晴れ』
75.
明日からここで生きるよ 飛行機の下は雪舞う白地図の町/毛糸
2022年10月28日『地図』
76.
この国の雨の名前は多すぎて いつも後から知るものがたり/夢路ミナ
2022年06月01日『多』
77.
ほんとうは少ししんどいこの宙(そら)にきたない星が見つからなくて/ぷくぷく
2022年10月09日『から』
78.
シーグラスのように短歌を紡ぐから早月くらとは海だとおもう/小泉キオ
2022年11月11日『うたの日の誰かへ相聞歌』
79.
山羊座だと言われても「へ〜」しか言えず続かない会話ビールは冷たい/古都 梨衣子
2022年08月29日『山羊』
80.
割って良い食器をもらい割って良い場所を探した真夜中の川/浅葱ムスカリ
2021年08月26日『器』
81.
この森を抜け出したならもうきみの水平線の終はらない海/紫月海
2022年11月08日『水平線』
82.
めでたしを拒否するように僕はまだ君が生きてるところで止まる/浪市
2022年10月21日『否』
83.
お詫びなら私が選びたかったなチョコファッションはもそもそ甘い/美好ゆか
2022年04月12日『ドーナツ』
84.
婆様の笹の願いの代筆は日本語能力N4グェンさん/ヒプノ寿司マイク
2022年07月07日 『 七夕 』
85.
堕天使になりきることができなくて実家にカニを送ったりする/澪那本気子
2022年10月13日『天』
86.
カウンター席が好きだな。笑うとき、きみのおでこが近寄ってくる/アライアヤ
2022年10月10日『自由詠』
87.
職場では他人でいろと云う彼のランチのサンドに私情を挟む/唐草もみじ
2022年02月08日『情』
88.
降りますの手をとめる風 優柔不断って春の季語でしたっけ?/真崎あや
2022年03月14日『?』
89.
春休みエントランスはSwitchに夢中になる子で賑わっている/ゆりこ
2022年04月03日『夢』
90.
一仕事終へていつもの半地下のカフェの窓より行く脚をみる/藤哲也
2022年09月24日『カフェ』
91.
百万再生(ミリオン)の曲を聴くとき浮かび上がるイワシの魚群みたいな気持ち/乙村藍里
2022年07月04日『聴』
92.
じょうろからこぼれた水に溺れゆく虫を見ながら「咲いたよ」と言う/鳥原さみ
2022年11月13日『溺』
93.
文明の終わりの頃にやりそうなイベントだよね世界遺産は/炭火
2022年08月10日『自由詠』
94.
僕たちのAnusどうしを結ぶ隧道(トンネル)を開通させる接吻/月城かいん
2022年04月22日 『 隧道 』
95.
ディストピア 描かれているだけなので辿り着かないバーチャルの街/天谷有志
2022年05月23日 『 ぴあ 』
96.
学校でやった指揮者の感覚で 職場で訳も分からず働く/ねくび
2022年12月06日『指揮』
97.
本棚と本棚の間に本が収まっている 収まってない/青山祐己
2022年12月13日『間』
98.
ガソスタの匂いなら好きだよ 俺ら分かり合えなきゃだめだったかな/藤井
2022年11月07日 『 合 』
99.
鏡には髪を切られて若返るわたしと左に回る秒針/RUKA
2022年10月08日『回』
100.
国葬の日は祭日にしませんか、祝日と言うと語弊があるので/深山睦美
2022年08月20日『祭』
101.
葬式でなぜ泣かないと叱られた 寝顔は花より白い わかんない/瑞野透
2023年02月07日『自由詠』
0.
春風(しゅんぷう)の半濁音のひと息で散ってしまえる花になりたい/茅野