【学園パロ】生き抜け! アエテルヌム学園!🌠

※何でも許せる方向け。キャラ崩壊注意。

さくらいうみべ(@umibe_ghost)さまのうちのこたちのパロディです。本編とはなんら関係ありません。神に誓って。

※本家様は素晴らしいので是非……。

🌼 🌼 🌼

 キーンコーンカーンコーン……今日も学校の始まりを告げるチャイムが響く。
「おーいお前ら、さっさと席につけー」
 からからと扉が開いて、全面にハートと蛇の絵柄が入ったシャツをまとう男が入ってきた。とても教師とは思えない出で立ちながらも、彼はさも当然のように教卓へ向かう。
「出席とるぞー」
 無精髭を手持ち無沙汰に撫でながら、淡々と名簿を読み上げる。
「ハル」
「はい」
「エデン」
「はーい」
「モニカ」
「はい!」
「ジュード……は、また休みか。モニカ、放課後とか様子見てきてくれ。生徒会長の仕事だ」
「ツルギ先生、それは生徒会ではなく担任教師の仕事だと思います」
「そうか。じゃあクラス委員長」
「先生、それも私です。仕事をしてください」
 はきはきと返すモニカに、へいへい、といかにもやる気のない声で返事をする彼の姿は、もはやどちらが生徒なのかわからない。彼は誤魔化すように目を伏せ、続きの名前を読み上げていく。
「あーと、イエナ」
「はい」
 途端に、せんせー! とどこかから声が上がる。
「またイエナちゃんが男子を椅子にしてます!」
「ええ、してるわね」
 ダメ? とイエナが声の主を見つめる。すると椅子になっていた生徒も、うるさいぞ! イエナ様に口答えするな! と彼女の下でヤジを飛ばした。
「……あら? どうして椅子が喋るのかしら」
「あ……」
 イエナは細く綺麗な指先で下唇をなぞり、艶っぽく首を傾げた。それからつと立ち上がり、来て、と椅子になっていた男子、そして文句を言った男子を引き連れて教室を出ていく。
 ピシャ、とドアの閉まる音がして、隣の空き教室から苦しげな、切なげな声と、ガタガタと机や椅子が揺れる音が壁越しに聞こえてきた。
 数分も経たない内に音は止み、再び3人が教室へ戻ってきた。男子生徒たちはぼんやりと生気のない表情で、しかし顔は恍惚に上気している。
 イエナは制服の乱れを直そうともせず、つかつかと自席ーーもとい、人間椅子に座って足を組んだ。今度はフットレストつきの。
「チッ、クソビ〇チが」
「エデン、何か言った?」
「ううん、何でもないの! ハルはエデンのことだけ見ててね」
 視界が汚れるから、と隣の彼に聞こえないぎりぎりの声でエデンが呟く。ツルギは今日何度目かの見ないふりと聞こえないふりをし、くるりと黒板を向いた。
 白いチョークを小気味良く鳴らし、自、習、と大きく書いていく。
「今日は自習。ただ、午後の授業は教頭先生が見に来るらしいから、絶対に真面目に受けるように」
 じゃあ解散、と人数分のプリントを教壇に置き、最前列のハルに配るよう指示した。そのままズボンのポケットから煙草を取り出し、教室を出ようとする。
「先生、ちゃんと授業してください! あと校内は禁煙です!」
 ツルギは立ち上がったモニカを一瞥し、にっこりと微笑んだ。と同時に、逃げるように教室を飛び出していく。
「ちょっ、先生! ツルギ先生! 教頭先生に言いつけますから! あと廊下は走らないでください!」
 そう叫びながら、モニカも後を追いかけていく。ハルはその様子にどぎまぎしながらも、各列ごとにプリントを回していった。ようやく席に着くと、隣からエデンがつんつんと肩をつついてきた。
「ハル、見て。ハルを描いたの」
「え、僕? ありがとう」
 ノートの隅のらくがきを見やり、ハルはうれしそうに微笑み返す。それから鉛筆を持ってプリントに取りかかると、とんとん、と今度は机を指先で叩かれた。
「ハル、見て。今朝かわいい花を見つけたの」
 押し花にしようと思って、と教科書にはさんだ黄色い花びらを見せる。綺麗だね、でも教科書しばらく使えないね、とやさしく返し、ハルは再び鉛筆を握る。
 するとエデンは彼の机の前にしゃがみこみ、ねえ、ハル、と喜々として話しかける。
「花と一緒にね、ダンゴムシも見つけたから連れてきたの。ほら!」
 そう言って白く小さな手のひらを開くと、豆粒より小さな虫がくるりと丸まっていた。
「……エデン、僕勉強を……」
「うっせんだよ、さっきから!」
 ガン、と机を蹴る音がして振り返ると、赤髪の目立つ小柄な少年が2人を睨みつけていた。口には何かの雑草をくわえ、小さな鼻の上に絆創膏を貼っている。彼は組んだ足を机に乗せ、ふんぞり返るようにどっかと座っていた。
「コークくん……」
「さっきから見てたけどさあ、お前ら馬鹿なの?」
 ふん、と鼻を鳴らしてコークは続ける。彼を慕う男子数人がいつの間にかそばに集まり、にやにやと薄ら笑いを浮かべていた。
「ハルが勉強したがってるんだから、放っといてやれや!」
「こ、コークくん……!」
 堂々と言い放つ彼に、エデンが何か言い返そうとするので、あわてて両手で口を塞いだ。それから耳打ちをするように、そっと囁く。
「放課後、一緒に虫取りにいこう。だから今は自習してようね」
 これが終わらないと行けないよ、と諭すように伝えると、エデンはようやく口をつぐんだ。
 ハルは後ろを振り返り、ありがとう、と口パクでコークへ伝える。コークは気恥ずかしそうに口を尖らせ、ふいっとそっぽを向いた。

🌼 🌼 🌼

「あ……またやられた……」
 その頃ジュードは、暗い自室でテレビ画面を見つめていた。繋げたゲーム機のコントローラーを手に、ぶつぶつと独り言を言いながらプレイする。
 本来なら協力プレイを前提としている局面なのだから、ひとりでクリアするには無理がある。そんなことはわかっているがしかし、彼には友人がいなかった。
 ピコン、とスマホが鳴って、彼はゲームを一時停止し素早く画面を開いた。
「広告か……」
 ぼそっと呟いても、ひとりきりの部屋では何も返ってこない。
 ため息をつき、再びコントローラーを手に持つ。するとまたピコン、と音がして、期待を持たずにしぶしぶ画面を覗いた。
「あ……!」
 待ち望んだコークからのメッセージに、思わずにやけ顔を見せた。
 ーー焼きそばパン、買ってこいよ。
 部屋着のまま財布をひっつかみ、すぐさま部屋を出ようとするが、ピコン、と再びメッセージが届いたので足を止める。
 ーー屋上まで持ってこい。怪しまれないよう制服で来いよ。
 仕方なくだるだるのスウェットを脱ぎ、若干埃のかぶったスラックスと、学校指定のワイシャツを身につける。
 外は眩しく、ひきこもっている身が焦がされるようだった。日中に出るのは久しぶりだ。ジュードは意気揚々とコンビニへ走った。
「すみません、焼きそばパンください!」
 彼の青春は、いま、始まったばかり。

🌼 🌼 🌼

ツルギ:クラス担任。校長と教頭先生を恐れている。授業中に抜け出して、しばしば体育館裏で喫煙している。服がダサすぎて、同僚からはこっそり変なあだ名をつけられている。
モニカ:生徒会長兼クラス委員長。真面目。しっかりしすぎていて、なんならほぼ担任教師みたいなところもある。
イエナ:クラスのマドンナ(?)。オタクに厳しいギャル。公式ファンクラブがある。
ハル:優等生。クラスの数少ない常識人。
エデン:問題児。授業中はずっとらくがきをし、校庭に犬がいると真っ先に窓から飛び出し走っていく。テストは堂々とカンニングしているが、ツルギが黙認する(面倒くさいから)ので成績は良い。
コーク:番長。本人は不良のつもりだが、周りはみんな彼をかわいいなあと思って見守っている。
ジュード:不登校。ひきこもり。暗闇でゲームをするので目が悪い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?