2023年2月の良かった音楽作品5選
あくまで自分の備忘録としてですが、1月度に続いて2月も良かった音楽作品に一言コメントを書き記そうと思います。2月はあまり音楽を聴くまとまった時間が無かったので、数は少ないですがアルバム5タイトルをピックアップしました。
2023年2月の良かった音楽作品5選
NITRODAY「I’ll Never Cry (from tomorrow)」
10代の頃からインディーズシーンではネクストブレイクを期待されてきたニトロデイの5年ぶり2ndアルバム。横浜B.B STREETでライブ録音された音源ということで、ライブハウスのスピーカーから聴こえるような荒々しいバンドサウンドと、ライブ然とした曲間の繋ぎが堪らない。90年代のオルタナ/パワーポップ直系の楽曲と、小室ぺいの良い意味で青臭い言葉使いには今も心躍るし、ここが自分の故郷だと思わせてくれる1枚。自分はリアルタイムで目撃していないが、デビュー直前〜直後のアジカンやベースボールベアーの姿も重ねたくなる。
Paramore「This is Why」
2020年代初頭のエモ/ポップパンクリバイバルのほとぼりが冷めてきたタイミングで、かつてこの手のジャンルを鳴らしてきたバンドが約6年ぶりにアルバムをリリース。ポストパンク的なタイトで手数の多いバンドアンサンブルと、ヘイリー・ウィリアムスのクールな語り口の相性が抜群に良く、そこに従来のパラモアの旨味が随所に滲んでいて程よくポップで程よくエモい。タイプは違うがここ数作のアークティックモンキーズ的な成熟を感じた。一方でロックバンドならではの生々しさと熱量が確実にパッケージされている、バランス感がとにかく絶妙で素晴らしい1枚。
Caroline Polachek「Desire, I Want To Turn Into You」
実験的なエレクトロ/アンビエントポップを奏でる女性アーティストというイメージだったが、昨年のコーチェラでのパフォーマンスと先行シングル「Bellions」の妖艶で優美なパフォーマンスに虜になった。そこから1年弱を経てリリースされた待望のアルバムはエレガントさを保ったまま、よりポップにダンサブルな仕上がりに。枚通して様々なリズムを乗りこなした先でラストを締めくくる「Bellions」は圧巻。今作のタイミングでの来日に期待。
Various Artist「25 -A Tribute To Dragon Ash-」
バンドシーンが下火になっていたこの数年間で国内外のラッパーがロックのテイストを取り入れたり、ドラムンベースやハイパーポップが一部で盛り上がったりしているが、Dragon Ashのディスコグラフィを辿るとそういった近年のムーブメントをかなり昔から先取っていたようにも思えてならない。トリビュートアルバムをちゃんと聴いた訳ではないしこの作品が先述の内容に直接関係があるかは分からないが、今こそDragon Ashのミクスチャーロック道を振り返るべきタイミングなんじゃないかということでピックアップ。トリビュートアルバムからは同じく25年バンドを続けた先でトップチャートに上り詰めた10-FEETによる「百合の咲く場所で」のカバーが激アツだった。
GEZAN with Million Wish Collective「あのち」
前作を聴いた時にも思ったが、リリースされて1ヶ月で語れるようなアルバムではないなと思いつつ、2023年の重要作になることは間違いないなと。個人的なファーストインプレッションは、攻撃的なアジテーションよりも優しさのような部分に心を動かされる作品だなということ。人の数だけ多様な価値観をもった集合体として、複雑なままどう生きていくか。それは昨年の日比谷野音で観た彼らのライブで特に感じたことだった。2021年のフジロック以降、GEZAN with Million Wish Collectiveとして活動する中で生まれた問いがシームレスに降り注ぐ13曲44分。歌って踊ることで1つの共同体として結束する、あるいは歌って踊ることでバラバラの個としての自由を獲得する。そのどちらも諦めずに命を燃やしていきたい。