the chef cooks meの「1人だけどバンド」という在り方
the chef cooks meの最新作「Feeling」
この1ヶ月でよく聴いたアルバムの1つだ。
音数もミニマムでドラムも打ち込みっぽくてリズムの低音が心地よく響く、ヒップホップ的なアプローチもあって今の空気をとても感じる。
そんなカッコ良い音に突き抜けていく開放感溢れる歌。耳から全身への馴染みがとても良い。朗らかなんだけど批評混じりで印象に残るフレーズもある。
そんな曲たちが自分のフィーリングにとてもフィットした。
上のトラックリストを見れば分かるように、このアルバムには10曲中半分の5曲にゲストミュージシャンが参加している。
それ自体はこの時代そんなに珍しいことではないけど、the chef cooks meというバンドには沢山のアーティストと一緒に曲を作る必然的な理由がある。
シェフは確かにバンドなんだけど、現状メンバーは下村亮介(シモリョー)さん1人しかいないのだ。
それでも、誰とでも自由に鳴らし合ったらバンドになることをこのアルバムで証明しているように感じる。そんな身軽さも今作に惹かれた大きなポイントになっている。
We are all alone
We are not the same
- the chef cooks me「Now's the time」
みんな1人で、みんな違う。
1人の方が身も心も軽いんだけど、1人じゃないことを成し遂げる喜びに勝るものはない。だから今もバンドとして活動を続けているのだろう。
そんな、"1人のバンド"に様々な仲間が参加して出来たアルバムを象徴しているのが、最後の「踵で愛を打ち鳴らせ」という曲。
原曲はASIAN KUNG-FU GENERATIONが2012年にリリースしたシングル曲。シモリョーさんはアジカンのサポートで鍵盤を弾いていて、特にゴッチさんとは切っても切れない関係なのだ。
2017年に出たアジカンのトリビュートアルバムにもシェフverが収録されていて、そのカバーも多幸感に溢れていてとても良かったのだけど、今作でより多くの仲間が参加し、アレンジも更に加わり、なんなら作ったゴッチさん本人がゲストボーカルで参加してるっていう。笑
原曲を少しでも聴いたことある人は是非とも聴いてみて欲しい。
他のゲストアーティストもゴッチさん周りで名前を知った方々ばかりで、仲間内で出たり入ったりしてバンドの作品を作り上げてるのが凄く良いなと感じている。
自分で作った曲を活かすために、曲毎に適したゲストを呼んだり、逆にコラボするアーティストの良さを活かすために曲を作る。
1つの屋根の下にその時々でいろんな人が出入りして、その時々で集まった人たちで音を鳴らす、そんな風通しの良さが今の自分には特に魅力的に映る。
自分も普段は1人で過ごしたり、1人でこうして文章を書いてみたり、大人数よりは圧倒的に1人の方が好きなんだけど、最近はなんだか1人じゃ出来ないことに憧れを持つようになった。
そしてそれはきっと、自分が"バンド"という集合体が好きだからだと思うのだ。