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【ショートショート】良いお姫様

あなたは、ある国のお姫様でした。


 ある朝、あなたはとても退屈していたので、お城の一番上の窓からガラスの靴を投げました。するとそれが庭師の後頭部にあたって、庭師の頭は砕けてしまいました。庭師の妻がそれを知って嘆き悲しみました。一日が終わり、次の日の夜がきてもまだずっと泣き叫んでいました。

 あなたは「そんなに二人でいたいならいさせてあげよう」と言って、庭師の妻の頭をハンマーで砕いて、二人を一緒にぐるぐる巻きにして、大変広い庭の端へ、一緒に埋めました。


「いいことをしたわ」

 あなたはスッキリして眠りにつきました。


 召使の中に、お腹が痛いと泣く者がいました。

 それなら原因を取り除けばいい。あなたは召使のお腹を縦に裂いて胃袋と腸を取り出しました。

 召使がすっかり静かになったので、あなたは「いいことをしたわ」と言って微笑みました。


 あなたは隣の国の王子様と結婚する予定でしたが、年頃になった王子様はあなたとだけは結婚したくないと言いました。


 そこであなたは国1番の美しい娘を用意させました。王子様は一眼見た瞬間娘に恋をして、娘も王子に恋をしました。

 あなたは両想いになった二人を、国の処刑人に命じて殺させました。処刑人に二人の骨を取り出させて、王の間に飾りました。二人の骨を一つ残らず使って、組み立てたオブジェです。台座の大理石には、石工に命じて「末長くお幸せに」と彫らせました。

「とってもいいことをしたわ」

 あなたは満足げに微笑みました。


 あなたはお城の塀の上がさびしい気がしたので、家来の首を二十個、等間隔に並べてオブジェにすることにしました。反対する者や抵抗する者が多かったので、最終的に百七つの首が並ぶことになりました。


 数々の振る舞いに耐えかねた国民がとうとうクーデターを起こしました。あなたは元家来に取り押さえられて、処刑されることになりました。


 処刑人は喜んで、お姫様の首を切り落としました。処刑台から広場に転がり落ちた首には、みながつばを吐きかけました。

 首だけになったお姫様は、「いいことをしたのに」

という口の形を作って、死にました。


 残った国民は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし。



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