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数学って一体

数学というのは、道具なのか、それとも世界なのか?

どうも私、数学が苦手なのは昔からとしても、「数学を好き」という状態になれないのである。

だって数学が好きって、一体どこを好きなのかわからないからである。できるから好き?前習ったことと今習ったことが繋がったり、同じ公式に対して違う証明ができる考え方を知ると嬉しいから?だって、3次関数のグラフってなんかいい感じだから?純粋数学の世界で、自分の気持ちを数式にのせるのが好きだから?

みんな、違うことをいう。


私は理系なので……いや、理系文系という言葉は好かないのだが……うーん。とにかく、数学としっかり付き合ってかなきゃならない人生を選ぼうとしている。
で、私は、自分のやることは好きになりたいし、愛したい性分である。数学については普通にやっても好きになれずにいたので、好きになりたくて色々調べたりなんだりしてきた。

はや2年。

まだわからない。
青チャートの最初のページとか、旺文社「記述式答案の書き方」とか、数研出版の教科書の冒頭とか、Newtonとかを読んで、作者に見えている世界を知ろうとした。
とあるフォーラムで、数学科の准教授の話を聞きに行ったりもした。なにかヒントが得られるのではないかと思って。

得たことは多かった。色々な見方が……
……でも、私が数学を愛せるようになっていない点においては、これらの試みはすべて、現状、失敗である。勿論、いずれ好きになれそうになった時、この辺の言葉を思い出せば上手く好きになれるかもしれないが、今のところは、失敗。


私にとって、数学は、
数Ⅲ極限でコッホ雪片をやっていた時は(フラクタル図形のなかでコッホ雪片が1番かわいらしくて好きだ)、周の長さが無限になるという無邪気な発想に親近感を覚え、化学ならば原子の大きさが…などと言って打ち切るところで無限を許してくれる、どこか子供の時に描いた空想に通ずる懐かしさを感じるものだったが、
その他諸科学を勉強しているときは、自然と関わらない完全な人工物に思えて味気なさを感じたし、
物理を学んだら道具にしか見えなくなったし、
今は、わからないことを解体し、知っていることを使って解決し、解決した欠片を積み重ねて答えを生み出す、問題解決の手段に思える。


要するに数学は手段だ、と思うのである。
手段に面白いも何もない。英語だって、個々の発音や語源など、"学問世界"に食い込む話ならば面白い。だが、英語を学んで、英語が読めるようになって楽しい!とかいうのは、出来るようになっている自分が楽しいだけで、或いは英語を使う行為が楽しいだけで、英語そのものに楽しみを見いだしているとは思わない。同様、数学は手段とすれば、数学の問題を解くのが楽しい!だから数学が好きである。というのは、なんとなく疑問なのである。数学的思考を使えて楽しいというのは、数学的思考を使って目の前の問題が解ける快感であり、達成感であり、それは要するに自分の問題になる。数学そのものが…好きだというのには、なにかまだ物足りない。だからやはり、数学の"学問世界"に、私は足を踏み入れねばならんのだろうか。


数学の学問世界を教えてくれる教員はいなかった。
数学に愛のある、というか、いわゆる数学オタクのような、教員でも、身近な大人でも、そういう人にひとりも巡り合わなかった。みんな、みんな手段を教えている。解き方を。考え方を。こうすると上手くいくよ、と。こういう発想で、解けるようになるんだよと。


私はもう少し、違うことを知りたい。
手段ではない数学が、だってどこかにあるはずなのだ。あってほしい。ただの手段、人間が生み出した道具なのに、あんなにも活発な議論が巻き起こり、シンプルな数式に感嘆し、証明を見つけようと人生を捧げる人間がこんなにいるなんて、私は信じられない。
どうして数学が好きになったのか。数学の学問世界のどんなところが貴方を魅了したのか。そういうことを話してくれればいいのに、引かれると思っているのか、こんな生徒にわからんだろうから話すまいという矜恃があるのか、数学科教員は一向に自発的に話そうとしないのである。寂しい限り。だからって、数学できないし好きでもない私が聞きに行くのは気が引けるし。

そうやって知らないまま、だけど数学を愛している自分になりたいという気持ちも失わないまま、こんな年になっている。
二次関数の曲線を見て、「素敵じゃない?」と呟くクラスメイトに、泣きそうになるほど羨望の念を抱いた。整数問題に「ゾクゾクしてきませんか!?」と目を輝かせる解説者と対照的に、私は何も心が動かなくて、強烈な孤独感を感じた。難しい問題に唸っていたら「こういう問題面白くない?」と前から話しかけてきてくれる数学得意な人に、物凄く申し訳ない気持ちがしてまた泣きそうになった。

もう全部全部、置いていかれる。
数学が好きになれないまま、置いていかれる。
私はどうすれば数学を好きになれる?
何が面白いの?

できるようになれば、面白くなるかもしれない。
面白さがわかるようになるかもしれない。

そう信じて、今は、でもどこが面白いかなんてやっぱり考えつつ、日々数学の勉強を続けている。


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