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捏造される食の歴史 ビーフストロガノフはロシア料理じゃない?
●伝統的なロシア料理ではないビーフストロガノフ
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ロシア料理の代表格として知られるビーフストロガノフ(бефстроганов、実際の発音は「ビフストローガナフ」のような感じ)。細切りにした牛肉とタマネギをトマトソースと「スメタナ」と呼ばれるサワークリームの一種で煮込んだものだが、その歴史は実は新しい。
「世界の食文化(19)ロシア」によればビーフストロガノフが考案されたのはせいぜい19世紀後半で、広く普及したのは20世紀、ソビエト時代になってかららしい。ロシアの名門ストロガノフ家のアレクサンドル・グリゴリエヴィチ伯爵が退職後、オデッサの自宅に市民たちを招いてご馳走したときにコックに作らせたフランス=ロシアのハイブリッド風創作料理がとても美味しかったので、彼にちなんで「ストロガノフ」という名がついたという説が有力とされている。
ちなみにウクライナ料理として知られる「チキンキエフ(котлета по-київськи)」もそもそもフランス料理の鶏肉のカツレツに由来するようで、結局伝統的な料理というよりは日本でいう洋食や中華料理のようなフュージョン料理といった方が実情に合っているようだ。