Hákarlは「ハカール」ではなく「ハウカルトゥル」
言語に関する話題。
アイスランド語を勉強したことがなかったので正確な読み方が分かっていなかったのだが、アイスランドのサメを使って作った発酵食品「hákarl」をWiktionaryで引くとIPA(国際音声字母)で/hauː.kartl/らしい。(hárというのは「サメ」の意味)
アイスランド語の正書法でáというのは「ア」ではなく「auː アウ、アウー」で、-rlという子音の並びには間に-t-が挿入されるようで、無理やりカタカナで転写すると「ハウカルトゥル」と言った感じか(Wikipediaを見ると「ハウカットル」という表記もある)。tlという二重子音、ロシア語なんかにもあるようだが、正直日本語母語話者にはかなり発音しづらい上に、そこにrまでくっついてる(苦笑)
アイスランド語はゲルマン語派の中でもノルウェー語やスウェーデン語、デンマーク語と同じ北ゲルマン語群に属し、英語とは一応遠い親戚である(英語は西ゲルマン語群)。「おはよう」はGóðan daginnで、まぁ要するにGood dayであり、英語との共通点も少し見てとれる。
このエッセイでは世界中の様々な食品を紹介してきたが、言語好きの人間としてこれからはこの辺についてももっと触れようかと思う。
★おまけ「マムトム(mắm tôm ベトナムのエビの塩漬け発酵食品)」の意味と発音
mắmは漢字では「𩻐」と書き、発酵させた魚の塩漬け、tômは「エビ」の意味のようで割とそのままの意味のようだ。
だがそれよりもずっと気になっていたのがmắm tômの正確な発音である。
IPA転写は[mam˧˦ tom˧˧]、カタカナで書くなら「マムトム」で一応正しいが、日本語は末子音の-mに母音を付け足して「ム」にしてしまっている上に声調が書けないため、たぶん「マムトム」という発音だとベトナム人には通じない可能性が高い。
mắmは(私のパソコンのIMEだとバグってしまって正しく表示されないが、ちゃんと見えますか?)ắの上に第三声調を表すアキュート・アクセントの記号がついている。ăはaの短母音を表し、単独では現れず必ず後ろに何らかの末子音を伴う。つまりカタカナ転写としては「マム」でとりあえずOKだが、実際には「-m」なので-muと言わないように。
そして先ほどのアイスランド語でも登場したáは当然それとは全く違う発音で北部(ハノイの方)と南部(ホーチミンの方)どちらでも急激に上昇する声調を表すらしい。mắmは「マム⤴︎」という感じ?
次にtômだが、この「ô」はIPAではo(円唇後舌半狭母音)、韓国語などにある「狭いオ」である。こちらには声調を表す記号はついておらず、そうすると自動的に第一声調(真ん中ぐらいで平らに)ということになる。よってtômは「トム→」という感じになる。