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六花詠う空へ

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和風ファンタジー小説。 純愛。 好きだけど共に生きて行けない理由があった。 更新していきます。
桜舞うシリーズ③過去編
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#桜舞うその前に

六花の舞う空に①

六花の舞う空に①

 ときは遡り、雪が深々と積もる。
 雪乃は土地神の衰えを心配していた。
 集落に降り積もる雪は、美しいものの……実際は危機的な状況に陥っている。
 土地神が健在なときは、こんなことはなかった。
**
「雪乃、お前に頼みがある」
「仰せのままに」
 頭を深く下げて、雪乃は答える。
「お前も察している通り、私の力は消えつつある」
「…………」
「もともと強い力はなかったからな。さて、雪乃にこの手紙を隣

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その前に

その前に

「となり里から参りました、雪乃(ゆきの)でございます」
 凛としたあたりに響く声。女性は巫女の服装をし、湖の淵に立っていた。
「里神からの手紙を預かってまいりました」
 これが雪乃との最初の出会いだった。
***
 近くにある里の神は、何度もこちらにお願いをしに来ていた。
『もう自分には里を守る力はない。存在自体が尽きる寸前だ。たのむ、後任を……』
 何度も断っているのに、今回は巫女とはいえ……人

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