2人展「ふたりの庭」を振り返る
前回、展示ができるまでの過程、準備について書きました。
さていよいよ展示。
今日は、展示中のこと、展示を終えての振り返りを書いていきます。
さあ搬入。
会場で、作品を壁に設置して家具を配置して、コーヒー豆をカリカリ挽いて、仕込みしました。
……搬入を終えても、準備は終わりません!
会場の設営が終わったらすぐに家に帰り、ステートメント、プロフィール、芳名帳、記入シート、ポストカードの裏面、グッズを入れる袋など、夜通しプリンターで印刷物を刷りまくりました。
それまでは作品の加筆に徹していたので、この辺りを後回しにしてしまっていました。
私はパソコンで印刷物を作るのが好きなので、「印刷物はまかせて!!」と自信満々に言ったのに、結局このドタバタ具合。
キャプションもこの夜に作り、徹夜で初日。まあまあ、これはいつものこと!
どうしてこうも自分は計画性がないのか。
さらにあろうことか、額装する鉛筆画の額を、一つ買い忘れていたのです。それを買いに行く時間もないまま搬入を迎えてしまっていたのでした。
うわ、間に合うかな。
焦るととんでもないことをすっぽかすものです。
初日の朝、新宿の世界堂で開店を待ち、急いで額を買い、会場に着いたら大急ぎでキャプションの貼り付けと額装とライティングをしました。なんとか……間に合った!!
初日は、今まで来てくださっていたお客様が来てくださいました。
話をしたり、ポートフォリオをご覧になりながら、コーヒーや紅茶を飲みながら、ゆっくりくつろいでいただけてとても嬉しかったです。
遠くからお越しくださったお客様も。
お忙しい中展示に足を運んでくださった皆様、本当に、ありがとうございました。
初日が終わった夜なんて「まだ初日なんだ!!」と思ったくらい、充実していて学びがとてもとても多かったのです。
たくさんの方に、励みになる言葉をかけていただき、6日間、毎晩胸がいっぱいでした。
同級生も来てくれて、ゆっくりおしゃべりしながら鑑賞してくれて、なんともアットホームな雰囲気に。
テーブルの周りの壁面には茨木さんのお花の作品がぐるっと並び、本当に庭でお茶をしているような気持ちになりました。
私たち2人がまさにやりたい、と思っていた展示の空気感が毎日実現していきました。
そして、私と茨木さんをそれぞれイメージして、中島優さんが作ってくださったカップ&ソーサー。
届けていただいて2人で箱を開けた時の感動といったら……!!
あたたかみがあり、ずっと見つめていたくなるような優しい色合いとかたち。
この展示に、ぴったりです。
会場には中島さんもご来場くださり、このカップの制作のことについて興味深いお話を沢山伺いました。
陶器を作るときに使う顔料や土は日本画の絵具と共通しているものが多くあると分かりました。
なるほど、だからこんなにも日本画の展示会場にぴったりな感じがしたのか!
ろくろは使わず手で成形し、色がついている部分には顔料が練り込んであるそう。
ソーサーの模様も描いているのではなく、金太郎飴みたいに切ったら模様が出てくるように作ったんだそう!!
お忙しい中制作いただき、もう感謝でいっぱいです……。
展示が終わった後もずっと宝物。大切に使わせていただきます。
本当に、ありがとうございました!!
それから、この「吉祥寺」という街。
窓から井の頭公園の木々が見える、緑に囲まれた空間で。
展示中にこの記事にも書いていますが、私の理念のようなものに、「生活の中に在りたい」ということがあります。
敷居の高い、一部の人のものにはなりたくない。
生活の中に溶け込むように、そばに寄り添うように、作品を届けていきたいと思ってやみません。
近くにお住まいの方が、パン屋さんに寄った帰り、スーパーに寄った帰り、お仕事帰り、お散歩のついでに。
ふらっと立ち寄り、「ふたりの庭」でのひとときを過ごしてくださいました。
パンやキャベツの入った袋を下げていらっしゃるのを見て、
「ああ……まさにこれだ……!!」
と思ったのでした。
生活の中に寄り添うように芸術を届けていくこと。私がやりたいと思い続けていたことが、目の前で実現していることを感じました。
それから、自分の作品についても。
今回は自分が本当に心地よいと思える画面、自分の中にある世界を純度高く再現することに最も重きを置いて制作していきました。
そんな、「自分らしさが出せた」と感じる絵たちをこうして並べ、見ていただき、嬉しいご感想をいただけるのは、喜びも一入でした。
「自分の感性を信じる」ということなのか。
「自分でも微妙だと思うものは他の人から見てもきっと微妙で、
自分でも好きだと思えるものは、きっと他にも好きだと言ってくれる人がいるはず
そう信じて制作すること」
それを学びました。作り手として、一生大切にしたい気づきでした。
一度ご来場いただいて、別の日にもう一度来てくださった方も何人かいらっしゃって、胸が熱くなってしまいました。
藝祭で知ってくださった方も、沢山ご来場いただきました。
そして吉祥寺、近くにお住まいの方々も。
たくさんの新しい出会いがありました。
たくさんの新しい発見がありました。
完全な自主企画、1から企画し、運営も発送もすべて自分たちで行った展示は、私は初めてでした。
すべてが、勉強になりました。
今までの、半企画やギャラリー様の企画での展示では気づけなかったことが沢山ありました。
1から作ってきた自主企画の展示に、こうしてたくさんの方にご来場いただいたこと。感謝の気持ちでいっぱいです。
6日間は、あっという間。
終わってしまうのが寂しくて、寂しくて仕方なかった最終日の夜。
「ああ、もうあと15分で終わるんだね……」と。
時間が来たら、また急いで搬出・原状回復です。出なきゃいけない時間が決まっているので、大急ぎで片付け。この日のうちに発送しなくてはいけない絵もあったので、これも大急ぎで、でも丁寧にお手紙を書いて包みます。
日本画など絵画作品は基本的に1点もの。
「作品を送り出すときは、寂しくないんですか」と聞かれたことがあります。
寂しいです。
でも、それが仕事なので「いってらっしゃい」と送り出します。
いつも寂しいですが、今回は特に寂しく感じました。
じっくりと時間をかけて、自分の表現と向き合うことで、「絵」と「自分自身」が限りなく一致したからなのかもしれません。
自分でも気に入っている絵たちにもう会えないことを思うと、やはり寂しくはなります。
でもそれは、夢が叶ったことでもあります。
今後はしばらく、私は展示の予定がほとんどありません。
大学での制作や自分の勉強に専念したいと考えています。この展示は私にとって大学生活の中で一番大きな展示で、一つの区切りでもありました。
この6日間は、一生忘れることはありません。
そして吉祥寺は、私にとって大切な思い出の街になりました。
展示は、作品を作って飾るだけでは全く成立しないものです。
「空間」を、さらには「ひととき」をつくることは、
作り手だけでできることではありません。
この展示を作ることに関わってくださったすべての方に。
この展示にお時間を割いて足を運んでくださったすべての方に。
温かな空間を貸していただいたキチジョウジギャラリー様に。
素敵な器を作ってくださった中島優さんに。
一緒に展示をつくってきた茨木希美さんに。
心から、ありがとうございました。
そしてこの記事を読んでくださっている皆さまにも。
展示に来れなかった方にも、遠くの方にも、これからインスタなどに投稿してまいります展示作品の写真を通して、温かな「物語のひととき」を届けることができましたら、この上ない喜びです。
それではまた。今夜は満月です。
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