漫画『氷の城壁』が、こんなにも私達の心に響く理由(少しネタバレあり)
何人もの友人に数年に渡ってオススメされていたけど読んでなかった漫画、阿賀沢紅茶さんの『氷の城壁』。
公式サイトによれば、累計160万部を超える大ヒット作品らしい。(2024年9月時点)
最初の数話と無料部分は以前からネットでちょこちょこ読んでたけど、全体の把握は全然できていなかった。
それが……
子どもが先日ハマった関係で、この夏に単行本を全部購入。
これは単なる恋愛ものの少女漫画じゃない。めちゃくちゃ素晴らしい内容!
でも、なんでこんなに「素晴らしい」と思ったんだろう?
同じ作者さんの人気漫画『正反対な君と僕』以上に、ガツンと来て自分事に思えたのはなぜだろう?
簡単に考察してみる。(少しネタバレあり)
シンプルで論点が絞られているから
まずはこれ!
主題がハッキリしていて心に届きやすい。
もともとはLINEマンガで連載されたwebtoon作品だったらしく、紙媒体の漫画よりも圧倒的に情報量(文字や絵など)が少ない。
そのぶん会話1つ1つが考えられていてメッセージ性があり、心に響く。
主要キャラの存在感もすごく大きくて、必要以上に登場人物が出てこない。ゴチャゴチャしておらず非常にわかりやすい。
オールカラーで連載されていたため単行本でもカラーで、値段は張るけれど感情移入もしやすい。
大事な人と一緒に読んでアレコレ語りたくなる漫画。
『正反対な君と僕』も大好きだけど、個人的には『氷の城壁』のほうがグッと来た。
キャラクターの挫折体験に共感するから
実は出てくる主要な登場人物が皆、色々やらかしている。大失敗・拗らせ・大きな誤解など。
家庭環境・クラスメイトからの扱われ方や何やらが原因で、自然と屈折してしまっているからだと思う。
私自身かなり「やらかし」を経験しているから、すごく共感した。
親が毒親ほどじゃなくても、悲惨ないじめに遭っていなくても、意外と人格への影響は出てくるもので……
(環境のせいだけじゃないかもしれないけど)
残念ながら対人トラブルはネタが尽きないくらいあって、
「できたらその瞬間に戻ってやり直したい」
と思うことも。
自分の選択や進路というより、人への接し方において。
……でも、よく考えてみたら皆も結構そうじゃないかな?
程度の差こそあれ、失敗してない人なんていないはず。
だからこの漫画に多くの人が惹きつけられるんだと思う。
*
ちなみに1番好きなのは雨宮 湊くん。
(3巻の表紙になってる子)
最初は単に軽薄なタイプの人間だったけれど、人間関係で自信をなくしてから取り戻すまでの経緯が素敵。
娘は、こゆん(氷川 小雪)とヨータ(日野 陽太)が好きらしい。
(7巻の表紙の2人)
愛の本質が描いてあるから
この漫画の本質は、事細かに表現された感情の機微にある。
特に恋愛や友愛についての解像度ががとても高く、普通の人がスルーしてしまうような部分も表情やモノローグで見せてくれる。
「もし好きの質が違ったら?」
「好きの量が違ったら?」
「好きになろうとするのは良いこと?悪いこと?」
など、すごく考えさせられる。
正義をふりかざす行為、我が身かわいさゆえの行動、からかい、いじり、同調圧力……
こういうことって学校や集団ではありがちだと思う。
どこまでなら許されるのか?
そもそも本来どうすべきなのか?
正解はないから、自分なりに模索して「ちょうどいい塩梅」を見つけることが必要なんだろうな。
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重要なのは、飾らない自分を受け入れてもらえる経験。
愛をもらうと他人に与えられるようになるから。
そういう部分に関する、小雪(主人公)の変化がすごい。
1つずつ学んで糧にしていく過程が素晴らしい!
ここまで若い頃に悟れるかは別として、大事なことだ。
「自他境界線」とか「課題の分離」的な話も書いてあって深い。
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「みんな憎めない」
というのも現実社会と一致する。そのせいか、すごくリアリティがある。
ストーリーからあまり「創作です」という雰囲気が漂って来ず、現実と地続きなのだ。
もし多感な学生時代に読めていたら、日々の人間関係に生かせたかもしれない。愛について考えを深めることに興味が湧いたかも。
もちろん、この歳だから分かる話もあるとは思うけれど。
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小学生から読めるので、大人にも子どもにもオススメ。
気になったら、デジタルでもアナログでも是非!
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